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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第24章 生命の果て、夢の終わり
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第1502話 緑の粒子と高機動

 ”星殺閃光(バスタードノヴァ)”でロストエデンを消し飛ばそうとしていた日向だったが、それよりも先に急接近してきたロストエデンに殴り飛ばされてしまった。


 先ほどまでロストエデンの足止めを担当していた日影、本堂、シャオランの三人は、日向が殴り飛ばされたのを見て頭を抱える。


「あの馬鹿! やられやがった!」


一概(いちがい)に日向を責められんだろう。先程(さきほど)の高機動、ロストエデンの新しい能力か」


「ロストエデンがこっち見てる! また攻撃してくるよ!」


 シャオランの言うとおり、ロストエデンが三人に攻撃を仕掛けてきた。日向との間合いを詰めた時のように、両肩甲から緑の粒子をジェット噴射させて急速前進。さらに両手から緑の光弾を発射しつつ、日影たちに接近してくる。


 日影と本堂は緑の光弾を回避しつつ、ロストエデンを迎え撃ちに行く。

 シャオランは風の練気法”衝波”を使って、光弾を誘爆させる。


 日影はロストエデンに向かって走りながら”オーバーヒート”を使用。引き(しぼ)り放たれた矢のように、まっすぐロストエデンめがけて飛んでいく。


「るぁぁぁッ!!」


 しかし、ロストエデンは再び緑の粒子を噴出。

 素早く右へ動いて、日影の突撃を回避した。


 そのロストエデンの回避先に、本堂が回り込んでいた。

 彼の右腕に生やした刃に、暴風と雷が渦巻いている。


「電撃単体で駄目ならば、これはどうだ。名付けて”風雷斬”……!」


 ロストエデンの足を斬りつけるべく、飛び掛かる本堂。

 だが、ロストエデンはこれもジェット移動で回避してしまった。


 ……と思われたが、本堂は飛び掛かるタイミングを一拍ずらし、ロストエデンが動いたのを見てから接近。後出しじゃんけんのように、ロストエデンの右足に攻撃を命中させた。彼の反射神経だからできた戦略だ。


 ”風雷斬”と名付けられたその技は、嵐そのものを叩きつけるような斬撃。

 暴風でロストエデンの体表を(えぐ)り、その傷口を電撃で焼いた。


「良し。風のパワーで威力を底上げすれば、鋼線のように硬くなったツタも破壊できるな。電撃の効き目については、ちょっとやそっとでは(ひる)みもしなくなったようだが」


 攻撃成果を分析しつつ、第二撃を仕掛けにいく本堂。

 日影とシャオランもロストエデンに追いつき、それぞれ攻撃態勢。


 対するロストエデンは、三人が攻撃を仕掛けるために接近してきた瞬間を見計らって大ジャンプ。真下にいる日影たち三人に、緑の光弾を雨のように連続で降らせてきた。


 日影と本堂はすぐさまその場から退避。

 シャオランだけはその場に残り、”空の気質”をさらに展開。


 それからシャオランは両拳でラッシュを繰り出し、”空の気質”の領域に入ってきた光弾を距離無関係の打撃で次々と誘爆させた。


「はぁぁぁぁッ!!」


 全ての光弾を片付けた。

 シャオランは自身の真上にいるロストエデンに向かって、蒼白い気質の奔流を発射。


「火の練気法”炎龍”ッ!!」


 しかし、これはロストエデンに避けられる。

 空中で緑の粒子をジェット噴射し、横に移動しながら素早く落下した。


 シャオランは諦めない。

 撃ち出した”炎龍”を、今度はロストエデンめがけて叩きつける。


 しかし、これも高速移動で回避された。

 叩きつけられた蒼白い気質の奔流が、ツタで(おお)われた道路を無残に粉砕する。


「ああもう! 避けられた! でも、あのロストエデンの緑の粒子のジェットは、前後左右に高速移動はできるけど、飛行することはできないみたいだ」


 ……と、ここで三体の人獣型ヴェルデュが乱入。

 シャオランに飛び掛かり、彼を喰らいにかかる。


「シャアアアアッ!!」


「シギャアアア!!」


 だが、シャオランはまだ”空の気質”を展開中だ。

 蒼白い気質の領域内に入った瞬間、三体の人獣型ヴェルデュはシャオランの拳の衝撃によって頭を吹き飛ばされた。


「そういえば、ヴェルデュもいるんだったね……! でも、すごい数のヴェルデュがこっちに集まってるって話だったけど、その割にはヴェルデュの数が少ないような?」


「それは、エヴァが頑張ってくれてるからみたいだ」


 シャオランの疑問にそう答えたのは、日向だ。

 どうやらロストエデンに殴り飛ばされたダメージから復帰できたらしい。


「ヒューガ! 戻ってきたんだね!」


「ああ、さっきはごめん、まんまとやられちゃって。続きだけど、ヴェルデュたちは、今はエヴァが抑えてくれている。この周囲に”バアルの慈雨”でレーザーみたいな雨を降らせて、ヴェルデュたちが入って来れないようにしてくれているんだ。それでも突破してきた奴は、北園さんと一緒に氷漬けにしてる」


「そうか、今のヴェルデュは冷気に耐性があるけれど、ガッチリと氷で固めてしまえば、死にはしなくても動けなくはなるってことか! 雨のレーザーを突破してきたってことは、身体も濡れてるだろうから凍りやすいだろうし!」


「そういうこと。俺たちをロストエデンに集中させるため、そしてユピテルを守るため、その両方を両立する方法を考えてくれたんだ。後は、ロストエデンをやるだけ……!」


 日向は、今度こそという意気込みが感じられる視線をロストエデンへ向ける。


 現在、ロストエデンは、日影と本堂の二人と交戦中だ。

 日影が”オーバーヒート”でロストエデンに突進。


「おるぁぁぁぁッ!!」


 ロストエデンのみぞおちに日影が激突。

 押し込まれたロストエデンが、背後のビルに背中から叩きつけられた。

 衝撃音が鳴り響き、ビルの窓ガラスが派手に、そして一斉に割れる。


 ロストエデンを押し付けているビルごとぶち抜くつもりで”オーバーヒート”の火力を上げていく日影。


「中にいる本体ごと貫いてやるぁぁぁッ……!!」


 しかしロストエデンも黙ってやられてはいない。両手で緑の光弾を作り出し、それを自爆も(いと)わず、己のみぞおちに食い込んでいる日影に叩きつけた。


「ぐぅッ!?」


 爆発に巻き込まれ、日影が落下。

 今度は本堂が、右腕の刃に”嵐”のエネルギーを(まと)わせながら飛び掛かる。


「再び喰らえ、”風雷斬”……!」


 するとロストエデンは、右手首から長いツタを出現させる。

 さらに、そのツタの先端に、緑の光弾と同じエネルギーを集中。

 そして、それを(むち)のように振るって、本堂の”風雷斬”と激突させた。


 押し合う両者。

 青と緑のスパークがまき散らされる。

 やがて、激突面で爆発が起きた。


 打ち勝ったのはロストエデン。

 本堂は爆風に巻き込まれ、吹き飛ばされた。

 だが、あまり大きなダメージは負っておらず、受け身を取って着地した。


「純粋な力勝負では、もう押し負けるか……!」


 ここでロストエデンは、またも肩から緑の粒子をジェット噴射。

 日影と本堂をその場に置いて、前方に向かって猛スピードで進む。


「ちぃッ! またどっか行きやがった!」


「しかし、この緑の粒子、いったい何の成分なのだろうな。何度か呼吸によって吸い込んでしまっているが、此方(こちら)の身体に害あるものでなければいいが」


 ロストエデンが向かう先にいるのは日向とシャオラン。

 恐らくは日向が”星殺閃光(バスタードノヴァ)”を使う前に、また彼を始末するつもりなのだろう。


 ロストエデンを日向に近づけさせないため、そして日向が放つであろう熱波に巻き込まれないようにするため、シャオランが前へ飛び出てロストエデンに挑みかかる。


「足止めさせてもらうよ! ”無間(むげん)鉄山靠(てつざんこう)ッ!!」


 ”空”の領域を展開し、その中にロストエデンが侵入した瞬間に、シャオランがその場で踏ん張りながら前方へ背面を突き出す。すると、ロストエデンとはまだ距離が開いているにもかかわらず、ロストエデンの全身に巨大な壁が激突してきたような衝撃が走った。


 その威力、人間を超えた破壊力。

 五メートルを超すロストエデンが吹っ飛ばされる……かと思われた。


 ロストエデンは左肩を突き出し、シャオランの鉄山靠の衝撃に真っ向から激突するような形で、彼の攻撃の威力に耐えていた。少し止まったものの、吹っ飛ばされることはなく、再びジェット噴射でその場から急発進。


 シャオランはロストエデンを止められなかった。

 高速で迫ってくるロストエデンに巻き込まれないよう、その場から飛び退いて道を譲るしかない。


「ゴメン、ヒューガ! そっちにロストエデンが行くよ!」


 シャオランがそう声をかけた時には、ロストエデンはもう日向の目の前までやって来て、彼を蹴り飛ばす体勢に入っていた。


 一方の日向も、ロストエデンを迎え撃つべく『太陽の牙』を構えている。


「今度こそ、復活させずに終わらせてやる……!」


 果たして次の瞬間、生きてこの場に立っているのはどちらか。

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