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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第24章 生命の果て、夢の終わり
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第1474話 新種のヴェルデュ

 リオデジャネイロの街で、日向たちは新種のヴェルデュと遭遇した。


 この筋肉質なヴェルデュは、力強い跳躍で日向たちに飛び掛かり、落下の勢いも合わせて両腕を叩きつけてきた。


 今までのヴェルデュとは比較にならないほどの瞬発力だったが、まだこのヴェルデュとの距離が開いていたため、見てからでも回避できる余裕は十分にある。

 日向たちはすぐさまその場を離れて、飛び掛かってきたヴェルデュを避ける。救助したエドゥアルド・ファミリーの若者は、シャオランが抱えて逃がした。


 ヴェルデュが着地した場所は、派手に砕け散っていた。

 舗装されたアスファルトの道路が、いともたやすく破壊されたのである。


 攻撃力もまた、驚異的な向上を見せている。

 だが、着地した直後なので、今は隙だらけだ。


「えいっ! ”発火能力(パイロキネシス)”!」


 北園が右手から炎を発射。

 彼女の背丈よりも大きい火球が、新種ヴェルデュに叩きつけられた。


「オアアアアッ!?」


 悲鳴を上げるヴェルデュ。

 全身にツタが巻き付いているこの怪物は、火をつければよく燃える。


 ……と、思いきや。

 ヴェルデュはあっという間に炎を振り払って、火炎の中から北園めがけて突撃してきた。


「ルオオオオッ!!」


「え、ええっ!? 炎が効かない!?」


 だが、その北園を守るように、本堂が彼女の前へ。

 ヴェルデュの突進を受け止めて、互いに押し合う体勢に。


「ルオオオッ!! グオオオオッ!!」


「中々の怪力だが、まだ俺の方が(いく)らか強いな……!」


 本堂はヴェルデュの身体を掴みなおし、そのまま持ち上げて背中から叩きつけた。


 叩きつけられたヴェルデュが怯んでいる隙に、本堂は右腕に刃を生やして一閃。ヴェルデュの首を斬り飛ばした。


「これで終わり……とはいかんか」


 本堂がつぶやく。

 周りを見回せば、今の新種のヴェルデュと同種のヴェルデュが彼らを取り囲んでいた。数は、軽く数えても十体以上。


「ウオオオオッ!!」


「グアオオッ!!」


 発見されるや否や、ヴェルデュたちは一斉に日向たちめがけて襲い掛かってきた。十体以上の新種ヴェルデュの群れが、猛スピードで突っ込んでくる。


「か、各自! 迎撃用意!」


 日向が皆に声をかける。

 彼に言われずとも、皆すでに戦闘態勢だ。


 そして、日向たちとヴェルデュの群れが激突。


 まずは日影が”オーバードライヴ”でヴェルデュに攻撃。

 ヴェルデュが接近してくるのを待たず、自分から飛び蹴りを喰らわせにいった。


「おるぁッ!」


「グオアッ!?」


 燃え盛る蹴り上げを顎下(あごした)に入れられ、ヴェルデュが大きく(ひる)む。

 その隙に日影は着地し、右手で逆手に持つ『太陽の牙』を素早く二回振るい、ヴェルデュを三枚に下ろした。


 その日影の横から、別のヴェルデュが殴りかかってきた。


「グオオオオッ!!」


 このヴェルデュの右ストレートに合わせて、日影はそれを回避しつつ左ストレートでカウンター。


「おるぁぁッ!!」


 これが見事に決まり、日影の燃え盛る拳がヴェルデュの顔面に突き刺さった。


「グウアッ!?」


 このヴェルデュもまた(ひる)み、続けて日影が『太陽の牙』を縦に振り下ろす。

 振り下ろされた『太陽の牙』はヴェルデュの脳天に食い込み、そのまま真っ二つに焼き斬った。


「見た目が普通の人間っぽくなったから、前のゾンビみてぇな時より戦いやすいな、オレとしてはな」



 次に日向が、向かってきたヴェルデュを”点火(イグニッション)”で一刀両断。

 さらに突撃してきたもう一体を、同じ調子で斬って捨てる。


 パワーもスピードも大きく向上した新種のヴェルデュだが、とにかくこちらへ接近して攻撃するというスタンスは従来のヴェルデュと変わらない。敵の攻撃を待ち構えて対処するのが得意な日向としては、冷静に迎撃すれば、恐れるほどの相手ではなかった。


「とはいえ、油断はできないな。あいつらのパワーは本当に殺人級だ。首から上を一発殴られるだけでも命にかかわるぞ……」



 一方、こちらはシャオランの様子。

 八極拳の強烈な肘、拳、掌底(しょうてい)を、ヴェルデュの頭部や心臓へ的確に打ち込み、次々とヴェルデュをダウンさせている。


「えいッ! やぁッ!」


「グオアア……!?」


「オオオオッ!?」


 あっという間に四体のヴェルデュを倒したシャオラン。

 そんな彼の首筋に噛みつこうと、五体目が背後から飛び掛かる。


「ガオオオオッ!!」


「水の練気法”流転”ッ!!」


 シャオランは背後から飛び掛かってきたヴェルデュを受け流し、その飛び掛かりの勢いを利用して、まったく別方向へと投げ飛ばした。


 そのシャオランが投げ飛ばしたヴェルデュを、本堂が右腕の刃でぶった斬る。


「ふん……!」


「ゴアアアアア……」


 胴体を横に両断されたヴェルデュは、しばらく上半身と下半身がそれぞれ独立してバタバタと暴れていたが、やがて動かなくなった。


「ホンドー、ナイスとどめ!」


其方(そちら)も、見事な健闘だシャオラン。それにしても、このヴェルデュ、叩き斬った時の手応えが、従来のヴェルデュと比べてかなり硬かったな。巻き付いているツタも頑丈になっているのか」


 動かなくなったヴェルデュを見て、本堂がつぶやいた。



 そしてこちらは北園とエヴァ。

 北園が一体のヴェルデュに炎をぶつけるが、やはりヴェルデュはすぐに振り払ってしまった。


「オオオオオッ!!」


「こいつらやっぱり、火に強いみたい……!」


「ならば、火以外で対処するだけです。凍えてしまえ……”フィンブルの冬”!」


 エヴァが杖を振りかざすと、前方の四体のヴェルデュめがけて、強烈な吹雪が襲い掛かる。


 この超低温の突風に巻き込まれたヴェルデュたちは、死体に絡みついたツタも、そのツタの下の死体も、芯まで凍り付いて動かなくなった。


 これで残るヴェルデュは、あと一体。

 この個体を、飛空艇周辺を守っていたコーネリアスが狙撃。

 頭が吹き飛ばされて、最後のヴェルデュも絶命した。


 いったん状況は落ち着いたが、まだ日向たちは警戒を解いていない。

 シャオランとエヴァが、それぞれつぶやく。


「風の練気法の”風見鶏”を使ってるけど、まだこの近くで、猛スピードで動くヤツらがいるよ。この勢いはたぶん、いま倒した新種ヴェルデュかも……」


「ここだけでなく、この街全体で、まだ騒ぎが起きている気配を感じます。あの新種のヴェルデュが生存者たちを襲い、パニックになっているのでしょう」


 ここに留まるのは、得策ではなさそうだ。

 一息入れるにせよ、他の生存者を救助しに行くにせよ、ひとまず飛空艇の中へ移動した方がよさそうである。


 日向たちは、唯一助けることができたエドゥアルド・ファミリーの若者を連れて、飛空艇へと乗り込んだ。

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