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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第24章 生命の果て、夢の終わり
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第1470話 ブラジリア到着

 リオデジャネイロを()って、一時間と少し。

 日向たちはブラジリアに到着した。


 ブラジリアは「ブラジル内陸部の地域振興を通じた、国土全体の均衡ある発展を図ること」を目的として、1960年という最近になって新設された都市である。完成後、それまでブラジルの首都だったリオデジャネイロから首都機能を移転され、ブラジルの新首都となった。


 飛空艇内から地上を見下ろすと、やはりこの街も緑化現象の影響を受けているようだ。街全体が植物に包まれている。街の西側は特に木々が密集しており、まるでジャングルだ。


 ここでいったん、飛空艇は着陸。

 街で何か情報を手に入れるため、日向たちは飛空艇を降りて地上へ。


 すると、あちこちの建物の陰などから、日向たちの様子を見ている複数の人間たちを発見した。リオデジャネイロだけでなく、この街にも人間の生き残りは多いようだ。


 レイカや本堂、そしてテオ少年など、ブラジルの言葉に精通するメンバーが生存者たちに声をかけて情報収集を行なう。スピカもポルトガル語が話せるが、幽霊である彼女が何の事情も知らない人々の前に姿を出すと、ひと騒ぎ起きそうなので大人しくしてもらった。


 三人の情報収集の結果、この街の現状は、リオデジャネイロとあまり変わらないようだ。


 生存者たちはヴェルデュを避けつつ、街を包み込んだ植物に(みの)る果実や木の実を食べて生活している。明確に違うのは、この街ではエドゥアルド・ファミリーなどの「街を牛耳る集団」がおらず、貧民だった者も上流階級だった者も、身を寄せ合って生きているという点だ。


 また三人は、この街にヴェルデュ以外の恐るべき怪物……つまりロストエデンがいるかどうかについても質問してみたが、これについて生存者たちは口をそろえて「心当たりがない」と答えたという。


 こうなってくると、ロストエデンが本当にこの街にいるのか怪しくなってきた。


 なにしろロストエデンは『星殺し』だ。今まで日向たちが戦ってきた『星殺し』は、六体全員が広範囲破壊、大量虐殺に特化した能力を持っていた。

 ロストエデンも『星殺し』として、そのような能力を持っていると考えるのが自然だ。であれば、いまだに生存者が多く残っているこの街に、ロストエデンはいないのではないだろうか。


 しかし三人は、少し気になる情報も入手してくれた。

 それは、この街の西にある国立公園についてだ。


 ブラジリアの西側には、豊かな自然が自慢の国立公園がある。

 この国立公園も緑化現象の影響を受けて、本来よりも木々が鬱蒼(うっそう)()(しげ)る樹海と化してしまった。


 国立公園の敷地面積は極めて広く、その全土が樹海になっている。そのため、たとえこの公園に慣れ親しんだ地元住民でも、今では下手に入ると道に迷って出られなくなるかもしれない。そう思い、生存者たちはこの国立公園にほとんど近寄らないのだという。


 つまり今の国立公園は、この街の生存者たちにとっても未開の地。そこになら、自分たちが見たこともない怪物……つまりロストエデンも、もしかしたら存在するかもしれない、とのことだった。


 相変わらずエヴァの”気配感知”でもロストエデンは見つけられない。こうなると、もはやロストエデンの居場所をピンポイントで見つけるのは諦めて、ブラジル国内で怪しそうな場所を手当たり次第に探してみるしかないだろう。日向のタイムリミットが許す限り。


 であれば、手始めにこの国立公園を探索してみるのも有効な選択肢となる。


 日向たちは短い話し合いの末、このブラジリアの国立公園内を探索することに決定した。


 探索メンバーは日向たち予知夢の六人と、ARMOUREDの三人。一緒に来てくれた金色の大鷲のマモノのユピテルも、空から怪しそうなポイントを探し回ってくれる。

 今までガイド役として同行してくれたテオ少年は、さすがにブラジリアへの土地勘はないので、今回はお留守番である。


 テオとスピカ、そしてミオンが手を振って、国立公園へと向かう日向たちを見送った。


「みんな、気を付けて、ね」


「本当にロストエデンがいるのなら、つまり最後の『星殺し』との決戦になる。危険を感じたら、無理せずに戻ってくるんだよー」


「飛空艇の防衛は、引き続き私に任せてね~。もっとも、ここの人たちはリオの時と違って大人しいみたいだから、あんな襲撃はないと思うけどね」


「見送りありがとう、テオくん。スピカさんとミオンさんも、それじゃあ、行ってきます」


 日向たちも三人の見送りに返事をして、樹海の中へと入っていった。


 分かっていたことだったが、樹海内部は木々の(しげ)り方が凄まじい。数メートル先すらも木と草に視界を(はば)まれて見通せない。


「これは探すのに苦労しそうだなぁ……」


 げんなりした表情で日向がつぶやいた。

 日影とコーネリアスも、それぞれ言葉を発する。


「これだけ草や木が多いと、ヴェルデュも良い感じに擬態しそうだぜ。不意打ちには気を付けねぇとな」


「公園の面積は423キロ平方メートルもあるらしイ。東京ドームおよそ九千個分だナ」


「たった九人で隅々まで見て回るのは限界がありますね……。チームを分けますか?」


「危険もあるガ、効率を上げるならそれが良いだろうナ。俺たちARMOUREDは、そのまま三人で行動することにすル。いつものメンバーの方が、連携も取りやすい」


 そう言って、コーネリアスはジャックとレイカを(ともな)って、樹海の奥へと進んでいった。


 日向たち六人も、三人と三人で分かれなければならない。

 さっそくチームの人員を決め始める日向。

 その中で、北園が日向に期待の眼差しを送っていた。


「じー……」


「北園さんが、仲間になりたそうにこちらを見ている……。そりゃあ俺だって北園さんと同じチームがいいけど……ここはロストエデンの本拠地である可能性も高いんだ。こういう時こそ、気を引き締めないと……」


 そういうわけで、北園の期待も(むな)しく、彼女と日向はまた別行動をとることになった。


 その結果、日向はエヴァとシャオラン。

 北園は日影と本堂。

 このような割り振りでチームが決まった。


「日影。ロストエデンが見つからないからって、いきなりこの森を燃やしたりするなよ。一緒に森に入ってる俺たちまで危なくなるからな」


「けッ。テメェこそ、ヴェルデュ相手に過剰火力ぶつけて、その辺の木まで巻き込んで森林火災を起こさねぇように気をつけやがれ」


「割と普通にありえそうで、身に()みる忠告なのが余計に腹立つ」


 チームの割り振りも決まったところで、日向たちと北園たちは背中合わせでそれぞれ左右に進み、国立公園の調査を開始した。

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