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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第24章 生命の果て、夢の終わり
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第1455話 最後の星殺しの居場所

 六体目の『星殺し』グラウンド・ゼロをどうにか討伐できた日向たちは、皆で飛空艇に乗り込み、合衆国機密兵器開発所へと帰還した。


 途方もないほどの量の攻撃を超震動エネルギーにぶつけ、何度も「もう駄目だ」と思わされ、肉体的にも精神的にも疲弊しきった日向たちは、機密兵器開発所に到着するなり、無気力の底へ沈むような勢いで休息を取った。


 そして、夜が明ける。

 日向の存在のタイムリミットは、残り八日。


 アメリカチームは、しばらくはこの機密兵器開発所を拠点として使うつもりらしい。ここは独自の発電設備により電気も通っていて、農作物が育てられるプランターなども完備している。施設を警備してくれる無人兵器もある。空母よりは快適に過ごせるはずだ。いずれニューヨークの空母で待つ大統領たちも、この施設へ移動させる予定だそうだ。


 そして日向たちも、最後の『星殺し』を討伐するために、今日にでもここを出立するつもりである。もう少しゆっくりしたいところであったが、日向のタイムリミットもいよいよ危険水域だ。あまり悠長にしてはいられない。


 日向がエヴァに声をかける。


「エヴァ、どうだ? 最後の『星殺し』の居場所は分かったか?」


 七体目の『星殺し』は、今までエヴァも発見ができていなかった。グラウンド・ゼロが保有していた『星の力』も合わせれば、エヴァの気配感知の範囲と精度も向上し、今度こそ発見できるかもしれない。期待の感情を込めて日向は(たず)ねた。


 日向の言葉を受けて、エヴァが返答。


「これは……ううん……」


「ど、どうしたエヴァ。見つからなかったのか?」


「今までの『星殺し』とは明らかに異質な気配なのですが、確かに『星殺し』にも負けない大規模な『星の力』の集まりを一つだけ感じます」


「ええと、つまり、どういうこと?」


「何というか……今までの『星殺し』は、どれも巨大な『個』でしたが、今回は広い範囲にわたって膨大な量の『星の力』が散っているような……そんな感じなのです」


「七体目の『星殺し』は複数いるってこと?」


「あり得る話ですが、ここから気配を探るだけではなんとも……。そもそも、この気配が『星殺し』かどうかさえ、現時点では確定できません」


「とはいえ、エヴァでさえもよく分からない気配なら、逆に特別な何かがありそうではあるよな。やっぱりここは、直接現地へ行って確かめてみよう。どのみち、俺のタイムリミットもわずかだからな」


「ですね。少しでも可能性があるなら、立ち止まっていないで行動するべきでしょう」


「ちなみに、その気配を感じるのはどこなんだ?」


「地図で言うと……このあたりですね」


 そう言ってエヴァが指さしたのは、日向たちが現在いる北アメリカ大陸の南方、南アメリカ大陸のブラジルだった。


 北園とシャオランも興味津々といった様子で、エヴァが指さしている地図を覗き込んでいる。


「ブラジル! マモノ災害の時も一度も行ったことがないよね、私たち!」


「ブラジルかぁ……。あっちの方は治安が良くないって聞いたことあるから、ちょっと不安だなぁ……」


「治安がどうこう以前の問題かもしれないけどね。誰か無事な人間がいるといいんだけど」


「それもそっか……」


 その二人に続いて、本堂も地図を見ながらつぶやく。


「ブラジルか。ブラジルを中心として広がるアマゾンの熱帯雨林は、生命の宝庫でもある。そして最後の『星殺し』もまた”生命(ライフメイカー)”。何か関連性があるかもしれんな」


「何が出てこようが、ぶちのめすだけだぜ」


 本堂の言葉を聞いて、日影がそう答えた。

 北園は日影の頼もしさを(たた)えるような視線を送っているが、日向とシャオランは相変わらずの脳筋理論に(あき)れた視線を送る。


 すると、そんな六人に、ARMOUREDのジャックが声をかけてきた。


「オマエら、次の目的地は決まったのか?」


「ああ、ジャック。次は俺たち、ブラジルに行くことになりそうだ」


「ブラジルか。マモノ災害の時に行ったことあるな、俺たちは。ところで相談なんだが」


「ん、どうしたんだ?」


「オマエらさえ良ければ、最後の『星殺し』の捜索と討伐、俺たちARMOUREDも協力しようと思ってるんだがよ」


「え、いいのか? そっちもこれからのこととか、また襲ってくるかもしれないレッドラムへの警戒とか、色々とやるべきことがあるだろ?」


 日向は驚きで目を丸くしながらジャックにそう尋ねるが、ジャックは気にせずにうなずいた。


「ああ。そもそも、俺たちがどんなに国の再興に向けて頑張ろうと思っても、この”最後の災害(テラ・バスタード)”をどうにかできなけりゃ無駄な努力だしな。それなら優先するべきは『星殺し』だ。オマエらを手伝って、少しでも勝率が上がるなら、そうするべきだろ。まぁあくまで、オマエらさえ良ければだが」


「こっちからお願いしたいくらいだったよ。皆も、良いよな?」


 日向が仲間の五人に尋ねる。

 日影を除く四人が、それぞれうなずいた。

 唯一うなずかなかった日影も、むしろ「わざわざうなずくまでもない」といった様子であり、ARMOUREDが付いてくること自体は賛成しているようである。


「……というわけで、満場一致の賛成だった。引き続きよろしくな、ジャック。レイカさんとコーネリアス少尉も」


「おう、任せとけよ! 本当ならグラウンド・ゼロの時みたいにチーム総出でついて行けりゃ良かったんだけどよ、やっぱりオマエも言ってくれたとおり、合衆国(こっち)合衆国(こっち)でやらなきゃならねーことも多いからなー」


「数が少ないぶン、働きで埋めルとしよウ。狙撃が必要な時ハ任せロ」


 日向の言葉に、ジャックとコーネリアスがそれぞれ、そう返事した。


 ただ、日向の言葉に返事をしなかったレイカは、なにやら不安げな表情を浮かべており、意識もどこか上の空といった様子だ。日向の言葉が聞こえていないようである。


「レイカさん?」


 日向がレイカの名を呼んでみる。

 今度はレイカも彼の声に気づき、慌てて返事。


「……あ、日下部さん? ええと、あ、そうだ、私たちもブラジルへついて行くって話でしたね。すみません、ちょっと気が抜けちゃってて」


「いえ、自分は大丈夫です。レイカさんは……いけそうですか?」


「ええ、もちろんです。アカネは相変わらず起きてくれませんが、私がアカネの分まで頑張りますので!」


「分かりました。頼りにしてます」


 レイカと日向の会話も終わったところで、皆はブラジルへの出発に向けて、それぞれ準備を開始することにした。


 その直前。

 予知夢の六人と別れたところで、ジャックがレイカに声をかけた。


「レイカ。アカネのこと、まだ立ち直れないのか?」


「ジャックくん……。はい、そうみたいです。昨日も言いましたが、私の半身……私の存在の半分が消えてしまったような、悲しいというか、不安な気持ちでいっぱいなんです。アカネが自我を確立して、この肉体を共有するようになったのはつい最近のことなのに、私が生まれてからずっと一緒だった相棒を失ってしまったような……そんな感じです」


「そうか……。もちろん俺も、アカネが目を覚まさないのは悲しいけどよ、オマエの引きずり方はかなりヘビーだぜ」


「ですね……。いつの間にか、私にとってアカネは、それほどに大きな存在になっていたみたいです」


「なぁレイカ。ホントに大丈夫か、ついてきて? オマエはこっちに残って休んでても……」


「ありがとうございます、ジャックくん。でも、私は本当に大丈夫ですから」


「ならいいけどよ……」


 そう言って頭をかくジャック。

 レイカは連れて行くことにしたものの、まだ彼は少し不安そうだった。

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