敵性個体紹介・第23章時点
●超長距離砲型
アメリカ大陸東部の街、ピッツバーグに設置されていた目付きのレッドラム。巨大な砲台の形をしているがレッドラムであり、つまり生物である。三百キロ先の戦闘機をも撃ち落とす、超長射程、超精密、高火力の砲撃が特徴。
標的が発する熱を探知する特性を持っており、その熱探知で標的の動きを先読みし、正確に砲撃を当ててくる。しかし、かなりの高温でなければ探知できないようである。そのため、ジェットエンジンで空を飛ぶ戦闘機は恰好の獲物にされ、逆にプロペラで空を飛ぶヘリコプターなどは狙われにくい。
”反射”の超能力も使用することが可能で、遠距離から攻撃を撃ち返されても、この能力で反射してしまう。この超能力は物理的な攻撃には弱いので、接近して直接攻撃できればこちらのもの。
合わせて三基がピッツバーグの街に設置され、飛空艇で接近してくる日向たちを狙ったが、全て破壊された。
●大爪型
コロンバスの街を占拠していた目付きのレッドラム。両手に鋭く大きな爪を持っており、固いアスファルトの道路も楽々と抉る。体格もかなり大きく、日影の”オーバードライヴ”による強烈な一撃を受けても平然と戦闘を続行するほどに生命力は高い。
自慢の大爪には神経毒が含まれており、かすっただけでも麻痺で動きを止められてしまう。この大爪型と戦闘した日影とジャックは、大爪による直接攻撃はついぞ受けなかったので、その威力が発揮されることはなかった。
その特徴的な大爪は、砲弾のように飛ばすこともできる。発射された大爪は標的の近くでひとりでに破裂し、内部から針状の破片を全方位にばら撒く。この針にも神経毒が含まれており、たった数本被弾するだけでも身体が痺れるほどに麻痺成分は強力。回避も難しい、侮れない技である。
コロンバスにも超長距離砲型レッドラムをよこすよう将軍型に声をかけていたが無視され、日影とジャックには片手間レベルで退治された。なかなか不憫な個体であった。
●巨竜型
セントルイス防衛の要となっていた、巨大なドラゴンの姿をしたレッドラム。今まではアメリカ大陸各地を飛び回って暴れていたが、予知夢の六人がやってきたことで将軍型のレッドラムに招集された経緯がある。
身体性能だけでも非常に強力で、四肢や尻尾の一撃は大地を揺らし、大きな翼による飛行能力も高い。戦闘機とも渡り合える空中戦闘力を誇り、本来なら人間たちの手が届かない空中で一方的に攻撃を仕掛けてくる。セントルイスでの戦闘においては、エヴァの重力操作で常に飛行を封じられていた。
ドラゴンの見た目に違わず、火を吹くことも可能。しかも”怨気”が混ぜられた赤黒い色の炎で、この炎は水などで鎮火することができず、半永久的に燃え続ける。消火するには、まず日向や日影の炎で”怨気”を消し去る必要がある。ちなみにこの”怨気”の炎は巨竜型自身も焼いてしまう。
さらに、仲間である他のレッドラムを喰らうことで、そのレッドラムが持つ『星の力』を吸収し、自身の能力を強化することが可能。巨竜型はこの吸収と自己強化のエネルギー効率が極めて高く、全てのレッドラムがこの巨竜型のように、仲間を殺せば強くなれるわけではない。
本編ではプリースト型と機関銃型を喰らい、”地震”の異能を覚醒させた。踏みつけや角による攻撃、果てには咆哮にまで震動のエネルギーを乗せて放ち、戦場となったオフィス街を壊滅的に破壊。まさに生きる災害のごとき凶悪性を見せつけた。
ともすれば鮮血旅団の三体にも勝るとも劣らない危険度を持つ強敵であったが、最後はエヴァが生成したウイルスに感染させられ、著しく弱体化したところを討伐された。
●多連装ミサイル砲台型
セントルイスの街に設置されていた、巨大なミサイル砲台の姿をしたレッドラム。超長距離砲型と同じく、見た目は真っ赤な巨大兵器だが、レッドラムであり、生物である。
五十のミサイル発射口を持っており、標的めがけて次々とミサイルを発射する。ミサイルとは言うが、実際にはミサイルのようなエネルギーの塊であり、ミサイル砲台型の精神エネルギーが尽きない限り弾切れはなく、いくらでも発射できる。
超長距離砲型よりも射程距離は圧倒的に短いが、そのぶんミサイルの追尾性能と連射力で、射程に入った標的は確実に仕留めてくる。もちろんミサイル一発一発の火力も高く、戦闘機は一発被弾するだけでも粉々に爆砕されてしまう。
一部のミサイル砲台型は”透明化”と水の練気法”静水”を使用し、自身の姿と気配を隠すことができる。これにより戦闘機部隊の油断を誘い、ラプター4を撃墜した。
最初から姿を見せていた四基、透明化して隠れていた四基の計八基がセントルイスに設置されていたが、全て破壊された。
●花型
セントルイスに出現していた目付きのレッドラム。街の一区画を埋め尽くすほどに大量発生していたが、アメリカ兵からの通信を受けた無人爆撃機によって焼き払われた。
本編では登場した瞬間に爆撃されたので、戦闘描写はまったくない。近づいた者をツタで絡めとり、牙が生えた花弁で捕食する、食人植物のような方法で攻撃してくる。
●少年型
セントルイスで北園、本堂、シャオランの三人と対峙した目付きのレッドラム。身体はレッドラムらしく全体的にぬめりのある赤だが、首から上は人間とそう変わらない。性格は悪ガキを思わせる生意気さが強く出ており、それでいて人間を殺すことを楽しんでいる。
拳に炎を纏わせ、殴りつけた対象を爆破する能力を持つ。日影の”陽炎鉄槌”と同じような能力だが、日影よりも連射が利くらしく、相手に連打を浴びせて一瞬で木っ端微塵にしてしまう。つまり非常に火力が高く、アメリカチームのホワイトメイルを一分ほどで破壊してしまった。
ただ、少年らしく直情的な性格で、攻撃は直線的で単調。本堂たちには軽くあしらわれ、撃破された。
●蜘蛛女型
セントルイスでアメリカ兵たちが戦った、背中から蜘蛛のような八本の脚が生えた、八つの目を持つレッドラム。プリースト型とコンビを組んでいた。
鋭い爪が生えた八本脚による近接戦闘、赤い蜘蛛糸による標的の拘束、遠近ともにバランスよく戦える性能を持つ。しかし、やや怒りやすい性格をしており、敵を仕留めきれないとヒステリックに叫んで、攻めの姿勢を強くする傾向がある。つまり、攻撃は激しくなるが、防御が薄くなるということでもある。
女性ブレード兵のリリアンを蜘蛛糸で拘束したが、そのリリアンを仕留めようと前に出たことでプリースト型と分断され、そのまま討伐された。
●プリースト型
セントルイスでアメリカ兵たちが戦った、背中に大きな十字架を背負った、シスターのような姿をした目付きのレッドラム。修道服はレッドラムらしいぬめりある赤で、顔は人間と変わらない肌色をしている。
本人曰く後方支援特化の性能をしているらしく、バリアーを張りながら”治癒能力”で仲間のレッドラムを回復させるのが主な仕事。背中に背負っている十字架はツヴァイハンダーであり、敵が近づいてきたらこれを使って応戦してくる。
最初は蜘蛛女型のレッドラムを援護していたが、その蜘蛛女型が仕留められた後は、後からやって来たスピカ型によって逃がされる。そして巨竜型のレッドラムと合流し、日向の”星殺閃光”を阻止したり、巨竜型の回復を行なうなど、いやらしい活躍をみせた。
だがその後、回復させた巨竜型に捕食されて絶命。
恩を仇で返されるような最期となった。
●軍馬型
セントルイスでジャックとアカネの二人が戦った目付きのレッドラム。デュラハン型を背に乗せて、コンビを組んで襲い掛かってきた。
馬というより牛ではないかと思うほど筋骨隆々で、その見た目どおり高いパワーがある。そして打たれ強く、ジャックの弾丸を何発も撃ち込まれても怯まなかったほど。もちろん馬らしく走力もあり、獲物を踏みつぶそうと猛スピードで駆け寄ってくる。蹄からは赤い雷を発生させることもあり、走るだけで地面を粉砕してしまう。
先述のとおり打たれ強いが、さすがに一本の脚に攻撃を集中されたら耐え切れなくなり、体勢を大きく崩す。そうやってジャックに動きを封じられた後、アカネによってデュラハン型ごと真っ二つにされた。
●デュラハン型
セントルイスでジャックとアカネの二人が戦った目付きのレッドラム。軍馬型の背にまたがり、コンビを組んで襲い掛かってきた。金色の目は両手剣の刃の付け根にある。首は無いが言葉を発することは可能。どこに発声器官があるのかは不明。
厚みのある両手剣と大きな盾という、オーソドックスな騎士の装備をしている。盾で相手の攻撃を受け止め、両手剣で斬りつけてくる。シンプルながら隙の少ない、厄介な戦い方である。軍馬型のおかげで機動力も高い。両手剣を振るって風の刃を飛ばしてくることもある。
軍馬型とのコンビネーションもあり、ジャックも認めたほどの強敵だったが、その軍馬型が体勢を崩されたことで、デュラハン型も一緒に動きを封じられ、その隙にアカネに斬り捨てられた。軍馬型にまたがっていたことが逆に仇となった、なんとも皮肉な倒され方であった。
●シャーマン型
セントルイスでサミュエル隊が戦った目付きのレッドラム。祈祷師のような姿をしており、顔の両目の他、首から下げているネックレスの中央にも金色の瞳がある。
炎や風、大地隆起、さらには天候操作など、様々な属性を操ることができる。セントルイス中央の天候を悪くして、ラプター戦闘機が近づけないようにしていた。
豪雨と落雷を発生させてリカルド准尉を攻撃しようとしたが、その豪雨によって周囲一帯が濡れたのを逆にリカルドに利用され、バトルフィールドごと氷漬けにされて絶命した。
●狼男型
セントルイスで巨竜型に加勢しようとして、すぐにエヴァによって始末された不運な目付きのレッドラム。
彼の遠吠えを聞いた者は、精神に異常をきたして混乱してしまう。もしもエヴァに消されることなく、巨竜型と共闘できていたら、手ごわい相手になっていただろう。
●キューブ型
セントルイスで北園たち三人と戦った目付きのレッドラム。六面のうちの一面に大きな金色の瞳がついている。
敵を捕捉すると、それぞれの面からガトリング砲やミサイルポッド、レーザー砲台などの武装を一斉展開する。本編では見せなかったが、巨大な瞳は相手と目を合わせることで発動する”精神支配”や”金縛り”の超能力を使用する。
間違いなく強敵なのだが、ここまでの戦いで強くなった三人には及ばず、あっという間に倒された。あと尺の都合で。
●ピエロ型
セントルイスでアメリカチームの前線基地を襲撃した目付きのレッドラム。でっぷりとした一つ目のピエロのような見た目をしている。おちゃらけた言動は、対峙する者の精神を逆なでする。
”念音波”の超能力の使い手。この能力で発した音は、たとえ耳を塞ごうとも、その耳を塞いだ手、さらには頭蓋まで透過し、鼓膜と脳を直接揺さぶって、頭痛やめまい、吐き気などの症状を引き起こす。
同じ音波系の超能力に”超音波”があるが、あちらは聞き続けると脳を破壊される殺傷力が高い能力であるのに対して、こちらは聞き続けても気分が悪くなるだけで済む。また、”超音波”は耳を塞いで遮断することが可能。
ふらふらくねくねとふざけた動きをするが、それゆえに動きが読みにくく、見た目に反して戦闘力が非常に高い。持っているシンバルで”念音波”の音を鳴らしながら攻撃してくるため、かなり戦いにくい相手。
ピエロらしく人を馬鹿にするが、自分が人間から馬鹿にされるのは我慢ならない性格。シンバルの側面を丸ノコのように機動させて襲い掛かってくる。しかし同時に、怒りで動きが単純になるため、怒らせた方がかえって戦いやすくなる。
実は、このピエロ型のレッドラムは、本体である小人のようなレッドラムが操っていた武装に過ぎなかった。どれだけピエロ型を攻撃しても小人型のレッドラムにダメージは行かず、小人型は遠隔でピエロ型を修復できるため、傍から見ればピエロ型が不死身の生命力を持っているようにしか見えない。
しかし、ロドリゴ少尉の超能力”千里眼”によってピエロ型の弱点……つまり小人型の存在が暴かれ、討伐された。
●機関銃型
セントルイスで、日向たちと巨竜型との戦闘に乱入してきた大柄な目付きのレッドラム。ぬめりある真っ赤なガトリング砲を装備している。
その名前の由来にもなっているガトリング砲からは、炎のエネルギーで作った銃弾を発射してくる。この銃弾は着弾地点で榴弾ほどの爆発を発生させる。それをガトリングの連射力でぶっ放してくるので、瞬間的な火力は非常に高い。
主にエヴァと対峙したが、すばしっこい彼女は機関銃型との間合いを積極的に詰めて、彼の射撃を封じ込めた。機関銃型はたまらず逃走したが、その逃走先で巨竜型に捕食され、絶命した。
〇スパイダー
合衆国機密兵器開発所を防衛する無人兵器の一種。
白いカラーリングと四本の脚が特徴的な機体。
装甲は見た目以上に頑丈で、多少の銃撃などものともしない。
スパイク状の足裏で、壁や天井に張り付くこともできる。
機体によって機銃やロケットランチャーなど、様々な武装を搭載している。
〇ホーネット
合衆国機密兵器開発所を防衛する無人兵器の一種。
いわゆる武装ドローン。
機体下部に装着された機銃で攻撃してくる。
機銃を撃っても、飛行中の機体はまったくブレないところが、地味ながらも開発所の技術レベルの高さを窺わせる。
〇ガーディアン
合衆国機密兵器開発所を防衛する無人兵器の一種。
人型のマシンで、高周波ブレードで襲い掛かってくる。
アメリカチームのブレード兵とも渡り合える戦闘力を誇っており、合衆国機密兵器開発所における主力兵器の一つ。人間の声を、さながら本物の人間が言ったように、機械っぽさを完全に消して発するという、無駄に高性能なボイス機能も持っている。
●ファフニール
合衆国機密兵器開発所を防衛する無人兵器の一種。
その見た目は、まさに機械の竜。
両肩には機銃、背中にはミサイルポッドを装備。翼を羽ばたかせても飛ぶことはできないが、翼膜を張る指部分にジェット機構が装備されており、それを使って低空飛行することができる。ジェットの炎を浴びせて敵を攻撃することも可能。
メインエンジンには小型原子炉が搭載されており、このエンジンから生み出された電力は攻撃にも転用できる。口からプラズマブレスやプラズマ球を撃ち出したり、尻尾に超電磁を纏わせて敵を打ち据えたり、などである。
この機体が守るメインコンピュータールームには多数の監視カメラが壁に設置されているが、この監視カメラ全てがファフニールの目である。監視カメラから送られた映像データを全て受け取り、視界を共有することができる。この監視カメラを壊さない限り、ファフニールに死角はない。
竜の姿を模して造られた理由は、「この機体はもともと対マモノ戦闘を想定した機体であり、力ある怪物として最もメジャーな竜の姿であればマモノも恐怖するのではないか」という推測のため……とされているが、やはり多少は機械竜というロマンに研究者たちが惹かれたのも有るかもしれない。
対マモノ戦を想定して造られたと先述したが、実際のところ「メインエンジンが破損したら周囲を放射能汚染してしまう」、「視覚データを送る監視カメラが不足していると、期待通りのスペックで動けないので、屋外戦闘が難しい」などの欠点を抱えており、今のところ製造されたのは本章で登場した試作機一機のみ。マモノとの戦闘にも投下されず、施設防衛機という名目で施設内に封印されていた。
●ヤマタノオロチ型
グラウンド・ゼロを防衛する役目を担っていた目付きのレッドラム。八つの頭の額にそれぞれに金色の瞳を持ち、やって来たアメリカ兵たちに襲い掛かった。
八つの頭からそれぞれ炎、冷気、電撃、竜巻、石化ブレス、毒霧、大砲のような血の塊、超能力由来と思われる純粋なエネルギー弾を撃ち出すことができる。全属性に対応した攻撃方法で、的確に敵の弱点を突いてくる。
本編では倒された描写はなかったが、しっかりと討伐されている。戦闘に臨んだアメリカ兵たちは誰一人として死亡はしなかった。
●スピカ型
アメリカ大陸の侵略を担当していた三体の目付きのレッドラムグループ「鮮血旅団」を構成していた一体。日向たちを補助するアーリアの民、スピカを模した姿をしている。
オリジナルのスピカと同等の能力を持っており、超能力の性能まで共通。肉体はレッドラム基準の強度であり、むしろオリジナルより強化されている。性格、口調もオリジナルと遜色ないが、レッドラムらしい残忍さも付加されている。
オリジナルのスピカの時点で「アーリア最強の超能力兵士」と謳われており、そんな彼女を模したスピカ型もまた非常に強力な個体。彼女の性格上、余裕をみせたり調子に乗りやすかったりするので意外と隙は多いが、もしも彼女に「遊んでいる余裕はない、全力で排除すべき敵」と認識されたら、レッドラム最強とされる光剣型にも劣らない最上級の難敵となってしまうだろう。
その正体は、狭山がオリジナルのスピカから奪った魂を組み込んで製造されたレッドラムであり、人格は文字通りスピカそのもの。クローン以上の同一人物。第二のスピカと呼べる存在だった。
圧倒的な能力で、多くのアメリカ兵たちを死に追いやったが、限界を超えて『星の力』を取り込んだニコ少尉、そのニコを援護するカインやロドリゴによって致命傷を負わされ、最後はオリジナルのスピカの策略でトドメを刺された。
・”念動力”
スピカ型が使用する三種の超能力のうちの一つ。主に精神エネルギーの形をコントロールする能力であり、自身の精神エネルギーで物体を掴んで持ち上げたり、エネルギーの形を変換してバリアーにしたり、弾として撃ち出すこともできる。
生物には効きにくいとされるが、スピカ型が使用する”念動力”は特別であり、他の生物も自身の精神エネルギーで包み込み、コントロールすることができる。この能力で敵を拘束してから破壊するのは、彼女の十八番と言っても過言ではない。
出力も凶悪で、鋼鉄を捻じって切断することもできる。エネルギー弾として撃ち出せばミサイル並みの破壊力を発揮し、バリアーとして張れば戦車の主砲も軽々と受け止めてしまう。
・”読心能力”
目に映った生物の心を読む能力。持っているだけで警戒されるであろう生きづらそうな能力であり、実際に地球ではそうだったが、アーリアの民たちはおおらかであり、心を読まれるのも気にしない者が多かった。というか、彼らはあまり隠し事をしなかった。
心を読むとは言っても、基本的には相手の感情がサーモグラフィーのように色分けされるだけだったり、心の中を言語化はできないが何となく相手の考えていることが直感で分かる、といった風に発揮される。
スピカ型の”読心能力”は最上級の性能を持っており、相手が考えていることを瞬時に言語化してしまう。頭の中で考えていることも、秘密にしている感情も、彼女の前では隠し通せない。
この能力があれば、スピカは過去のゼス王子の異変に気づけそうなものだと思われるが、実際に気づいたときにはほぼ手遅れだった。何らかの方法で彼女の目を欺いていたのは確実だろうが、その方法は今のところ不明。
・”瞬間移動”
地点から地点へ一瞬で移動する能力。地球においても、アーリア遊星においても、皆がうらやむ超能力ランキング不動のナンバーワン。
使用するには座標計算のような思考が必要で、これがなかなかに複雑であり、使用しようと思って瞬時に使用できる人間は少ない。特に、戦闘にも組み込めるほどに使用が速い者は、この能力を相当に訓練しているのは確実である。
オリジナルのスピカは次元すら超えて瞬間移動することができたが、レッドラムのスピカ型が同じことをできたかは不明のまま終わった。彼女の性格上、使用できたなら『幻の大地』にいる狭山の側で仕えていそうだったので、できなかったのかもしれない。
●将軍型
アメリカ大陸の侵略を担当していた三体の目付きのレッドラムグループ「鮮血旅団」を構成していた一体。サーコートを羽織った将軍のような姿をしている。
鮮血旅団のまとめ役であり、日米合同チームの行く先々でレッドラム部隊を展開し、その進軍を妨害し続けていた。あまり自分から前線に出て戦闘を行なうことはない。二丁の長大な銃器で戦うほか、計略や策略にも長けており、いやらしい作戦の数々は日米合同チームを大いに苦しめた。”怨気”も使用できる。
サミュエル中尉とリカルド准尉の二人と戦闘を繰り広げ、奥の手の素手戦闘まで披露したが、最後は二人に倒された。
・指揮能力
将軍型の直属となっているレッドラムは、目に見えて動きが良くなり、個体間での連携も抜群になる。これは将軍型が”精神感応”でレッドラムたちそれぞれに指示を出しているからである。
・次元移動
『星の力』に由来する能力。次元と次元をつなげるトンネルを開き、地点から地点への瞬間移動を可能とする。この能力で、離れたところにいるレッドラムを招集することも可能。
本来なら膨大な『星の力』が必要な能力であり、いくら強力な個体とはいえレッドラムが使えるような能力ではないが、『幻の大地』にいる狭山からのバックアップを受けることで使用を可能としている。
・格闘戦
長大な銃器を二つ装備しているところからは想像しがたいが、この個体が最も得意としているのは素手格闘であり、彼の銃器を封じて相手が喜ぼうものなら、その隙を突かれて絶望へ叩き落とされる。
先述の次元移動と組み合わせることで、相手の至近距離に小さな次元の裂け目を開き、そこへ拳を突き入れる、さながら「瞬間移動するパンチ」、「間合いを無視する拳」とでも呼ぶべき打撃を繰り出してくる。
おまけに、彼の拳には毒が含まれており、受け続けると侵されてしまう。この毒は、最初は威力は低いものの、罹患者が激しく動くと一気に悪化するという特性を持っている。
●光剣型
アメリカ大陸の侵略を担当していた三体の目付きのレッドラムグループ「鮮血旅団」を構成していた一体。近未来的な鎧に身を包んだ武者のような姿をしている。
基本的にこれといった超能力は使用しないが、身体性能がずば抜けて高く、下手に近づけば一瞬でバラバラに切り刻まれてしまう。武にも精通しており、レイカとアカネを剣術勝負で圧倒するほど。
名前の由来にもなっている、両手に持つ二本の光剣は”怨気”のエネルギーで構成されており、これで斬られた傷はしばらく異能で治療ができなくなり、運が悪いと光剣型への恐怖心まで植え付けられてしまう。もちろん切れ味も抜群に高い。
白兵戦特化のシンプルな性能だが、たったそれだけでも尋常ではない強さを誇り、全レッドラムの中でも最強の個体とされている。
グラウンド・ゼロの左腕の上でARMOUREDの五人と激突。五人そろえば予知夢の六人を超えうるとされる彼らの連携力にも最後まで一歩も引かず応戦し、アカネを事実上の道づれにして、ようやく討伐された。
・テュベウソスとアルセスフラウ
光剣型のレッドラムの人格を形作る、二人のアーリアの民。彼らは双子であり、共にアーリアの民の中でも剣士としては最高峰の腕前だった。
最初は、光剣型のレッドラムの人格を作っているのはテュベウソスだと思われていたが、後に弟のアルセスフラウの人格も入っていることがミオンの観察により判明。一つの肉体に二人の魂を持つレッドラムである。
兄のテュベウソスは、ラッシュで相手を攻め立てて、トドメの大振りで一気に叩き斬る戦法を得意とする。それとは対照的に弟のアルセスフラウは、一刀ごとに狙いすました力強い斬撃で相手を追い詰めていき、最後は瞬間的に何十回もの斬撃を繰り出す連続斬りで敵を細切れにする。
・”二重人格”
本来はレイカとアカネが使用する超能力だが、彼女らと同じく一つの肉体に二つの魂を持つ光剣型のレッドラムは、彼女らの超能力を模倣し、自分の技としてしまった。
性能はレイカとアカネが使っていたものとまったくの同一だが、やはり光剣型の方が地力が上なためか、彼女らよりも洗練されているような印象を与える。
★グラウンド・ゼロ
狭山がこの星の環境や生命を絶滅に追いやるべく生み出した、七体の『星殺し』の内の一体。地震と崩壊を司る怪物である。
大陸から生えた、圧倒的なまでに大きすぎる岩の巨人と言うべき外殻を有しており、その巨大さたるや、根本から頭頂部までの標高はなんと約一万二千メートル。これは、この星の空の限界点、成層圏に届くほどの高さである。
大陸を自身の超震動で破砕し、その破砕した大地を”念動力”で外殻としてくっつけている。大陸を砕けば砕くほど、グラウンド・ゼロは巨大化する。
グラウンド・ゼロの本体は、この大地をかき集めた外殻の中を、モグラのように掘り進めて移動することができる。移動の速度もかなりのもので、日向が”星殺閃光”で直接狙い撃ちできない一因でもあった。
とにかく巨大すぎる外殻が厄介であり、この外殻を除去しなければ、到底グラウンド・ゼロの本体を直接攻撃することなどできない。自分の周囲には、砕いた大地を超能力で多数浮かべており、外殻の一部が破損したら、このストックしてある大地で修復してしまう。なので、時間をかけて外殻を砕いていくといった戦法も通用しない。
しかし、巨大すぎる外殻には弊害もあり、外殻内のグラウンド・ゼロは外の様子をうまく把握することが難しくなっている。浮遊岩石に陣取る人間たちをロクに振り落とさなかったり、光剣型のレッドラムをあまり頻繁に援護しなかったのも、この性質が原因である。動きも非常に遅く、振り上げた両腕を大地へ叩きつけるのに一時間近くを要する。
・超震動エネルギー
超級の規模を誇るグラウンド・ゼロは、生成する”地震”の震動エネルギーのスケールも桁違い。特に、日数をかけて震動エネルギーを凝縮して生み出すものは「超震動エネルギー」と命名され、拳に纏わせて大地を殴れば、北アメリカ大陸が崩壊するとまで言われた。
・オリハルコン化
『星の力』を凝縮して結晶化することで生み出す幻の鉱石、オリハルコン。和名は蒼星石。グラウンド・ゼロは、自身の外殻や自分自身の一部に『星の力』を集中させ、オリハルコン化させる能力を持つ。
オリハルコンの強度は異常なレベルであり、コンクリートを砕くような衝撃を受けても傷一つ付かない。炎や冷気、電撃や酸にも驚異的な耐性があり、一万年経とうが錆ついたりもせず、その透き通る蒼の輝きが失われることは決してない、とまで言われている。
ただし、純粋に『星の力』のみで構成された物質であるため、その『星の力』に特効を持つ『太陽の牙』には唯一弱い。それでもある程度なら斬撃を受け止めることが可能である。
グラウンド・ゼロは、自身の外殻の百平方メートルをオリハルコン化させて、外からの攻撃を防御することができる。本編ではこの能力で、同じくオリハルコンを素材として造られたミサイル、グングニルを食い止めた。
グラウンド・ゼロ本体もこの能力を使うことが可能。もともと外殻の百平方メートルをオリハルコン化できたのもあり、本体は全身を余すことなくオリハルコン化できる。
余談だが、オリハルコンは主にギリシャ神話などで名前が見られる鉱石であるが、そちらでは青銅を指している。もちろん、この作品に登場するオリハルコンほどの強度はない。