第1448話 グラウンド・ゼロ討滅戦
日向とジャック、そして実は生きていたノイマン准尉が、グラウンド・ゼロの本体と交戦を開始。
日向はグラウンド・ゼロとの戦闘の最序盤に”星殺閃光”を使用し、まだエネルギーを回復させている途中だが、どうにか”点火”くらいなら使えるようになった。
ジャックは先ほど、グラウンド・ゼロの外殻の右腕に”パイルバンカー”を叩き込んでいた。高所からの飛び降りと技の反動により、相当なダメージを負ったはずだが、”生命”の異能でそのダメージも自己再生したようである。
ノイマンの異能は「背中に翼を生やして飛行できる能力」。それ以外にできることはなく、武装も拳銃一丁のみ。前二人と比べると、主戦力に数えるのは少し難しいか。
そして対するグラウンド・ゼロ本体は、どっしりとした仁王立ちで「かかってこい」と言わんばかりに日向たちを待ち構えている。ただそこに立っているだけなのに、全身を上から押さえつけられるようなプレッシャーを三人は感じた。
「この重圧……なんか覚えがあるなと思ったら、マードックに似てんな。ちょうどガタイも身長も同じ感じだしな。もしかしたら、戦い方も似てるかもしれねぇ」
「なるほど、参考にさせてもらうよ。じゃあ、まずは一太刀……!」
ジャックにそう返事をして、日向がグラウンド・ゼロに斬りかかった。『太陽の牙』の刀身にも、さっそく”点火”の炎を灯している。
しかしグラウンド・ゼロは、わずかに身体を後ろへ反らして、首を狙ってきた日向の斬撃をあっさりと回避。
「あ、避けられた!?」
そしてグラウンド・ゼロは、すかさず右腕を無造作にぶん回し、日向に反撃。
「goooo...!!」
日向は慌てて頭を低くして、グラウンド・ゼロの右腕を回避。
グラウンド・ゼロの右腕が頭の上を通過した時、恐ろしく重厚な風切り音が聞こえた。
「うひっ!?」
あれに当たったらどうなるのか。
思わずそんなことを想像してしまい、日向の身体が緊張でこわばる。
その緊張をすぐに振り払い、日向は身を屈めた体勢から、グラウンド・ゼロの胴体を突き刺しにかかる。
グラウンド・ゼロもまた、右腕ぶん回しから左アッパーへ動作をつなげてきた。向かってくる日向を迎撃するように、左の拳を振り上げる。
グラウンド・ゼロの左拳が、日向の『太陽の牙』を下から殴りつけた。
その衝撃で、日向は『太陽の牙』を弾き飛ばされてしまう。
「くぅっ!? イグニッション状態の『太陽の牙』を、素手で殴り飛ばした!? 『太陽の牙』に弱いはずの『星殺し』のくせに……!」
剣を弾き飛ばされた衝撃は強烈なもので、日向は手がビリビリと痺れてしまう。
しかし、その痺れに気を取られている場合ではない。
グラウンド・ゼロが、右腕を日向めがけて振り下ろしてきているからだ。
「gooo...!!」
「どわぁぁ!?」
あわててバックステップして、日向はグラウンド・ゼロの右拳を回避。直撃は免れたが、鎖骨のあたりに拳の先端が少し引っかかってしまった。
少し引っかかっただけだというのに、鎖骨が砕けたのではないかと思うほどの痛みが日向を襲う。
「痛っつぅ……!?」
やはりというか、グラウンド・ゼロは見た目通りのパワータイプのようだ。一撃一撃が非常に重く、高威力。一発だって攻撃を受けないくらいの覚悟で挑まなければならない。
ここで、ジャックとノイマンも射撃を開始。
「オーケー、野郎はああ動くんだな。ヒュウガに一発だって誤射せず、完璧に援護してやるぜ」
「タイガー。さて、俺は乗り物の操縦だけじゃないぞってところを見せてやる」
日向に追撃を仕掛けようとするグラウンド・ゼロの横から、ジャックたち二人が放った弾丸が飛んでくる。弾丸は全発、グラウンド・ゼロに命中。
だが、二人の銃弾はグラウンド・ゼロに命中すると、金属音と共にはじき返されてしまった。
この時、銃弾を防がれた二人は、目線だけで顔を見合わせる。
「おい、ノイマン。今の見たか?」
「タイガー。見たぞ。銃弾を受けた瞬間、奴の身体の表面が一瞬だけ蒼い結晶のようになった。オリハルコン化だ」
「グングニルを止めるのにもオリハルコン化は使ってたからな。そりゃ本体が使っててもおかしい話じゃなかったか。だが、俺たちは今、ヤツの全身に向けてランダムに銃弾を撃ち込んだ。その全てをオリハルコン化で防御された。ってことは、だ」
「今の銃弾全てに対して、正確に捉えて対応されたとは考えにくい。つまり奴は、受けた攻撃に対して自動的にオリハルコン化できるってこと、だな?」
「イグザクトリーだぜ。しかし、こりゃまいったな。俺たちの銃撃、何の役にも立たねーじゃねーか……!」
その間にも、グラウンド・ゼロは日向に攻撃中。
幸い、グラウンド・ゼロの攻撃は大振りで避けやすいものが多く、日向は攻撃の先読みをうまく使って回避を続けている。
ジャックたちが撃ち込んだ弾丸がオリハルコン化によって防御されたのを、日向も見ていた。
「グラウンド・ゼロめ、どうして残骸の下に隠れずに出てきたかと思えば、こいつにとってジャックたちはいてもいなくても一緒だから、『太陽の牙』を持つ俺だけでも今のうちに始末しておこうって魂胆か! ロシアで戦ったプルガトリウムの本体みたいに……!」
その時、グラウンド・ゼロが両方の拳に無色透明のエネルギーを生成。”地震”の震動エネルギーである。そして、そのエネルギーを纏った両拳を同時に振り上げ、目の前の日向へ振り下ろす。
「goo...!!」
「くっ……!」
日向は後ろへ飛び退き、グラウンド・ゼロの叩きつけを回避。
だが、振り下ろされた拳はそのまま足場を叩きつけ、震動エネルギーがここら一帯を揺るがす大地震を発生させた。
「うおおおお……!?」
震動に足を取られ、動きを封じられた日向。
その隙にグラウンド・ゼロは、両拳を叩きつけた体勢からショルダータックルを繰り出し、日向を吹っ飛ばしてしまった。
「gooooo!!」
「がっふ……!?」
電車が激突してきたのかと思うほどの、異常な重さ。
日向は二十メートルほども吹っ飛ばされ、そのまま動かなくなった。
日向が倒れると、彼を完全に葬り去るため、グラウンド・ゼロが再び接近しようとする。
それを見たジャックがグラウンド・ゼロを阻止するために動こうとするが、動き出す直前に迷いが生じてしまう。
「アイツの防御力じゃ、俺がどんな攻撃をしたって意にも介さねぇ。ヒュウガを助けるためとはいえ、ここで俺がアイツに飛び掛かっても、どうにもならないんじゃねーか……? 震動エネルギーまで使う危険な攻撃に、自分の身を晒しに行くだけなんじゃねーか……?」
……と、その時だった。
日向のもとへ向かうグラウンド・ゼロ、その進路を断つように、上空から炎の塊が落ちてきて、着地と同時に大爆炎を巻き起こした。
グラウンド・ゼロも足を止める。
炎を纏って落ちてきたのは、日影だった。
「よぉ、さっそくやり合ってんな。そこにいんのがグラウンド・ゼロの本体か? 『いかにも』って見た目してんな」