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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第23章 合衆国本土奪還作戦
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第1447話 残骸の大地

 日向たちと、アメリカチーム。

 戦場に出ている者、出ていない者。


 合わせて百名を超える人間たちの奮戦の末、遂にグラウンド・ゼロは崩壊した。


 その崩壊の衝撃は極めて(すさ)まじく、このはるか空の上までも崩壊の轟音が聞こえ、震動さえ感じた気がしたほどだった。


 エヴァを抱いてグラウンド・ゼロの右腕から離脱した北園は、アラムが操縦する飛空艇の甲板に降りていた。見れば、北園と同じように、兵士たちを担いで右腕から離れていた本堂とシャオランの姿もある。


 甲板にいる兵士たちは、さすがにもう疲労困憊だからか、多くがその場に座り込んでぐったりとしていた。中には、痛みをこらえるような表情をしている者もいる。グラウンド・ゼロの右腕へ飛び降りた時、落下の衝撃で腕や足を痛めてしまったのだろう。


 そんな兵士たちのもとへ、北園は駆け寄る。


「ケガしてしまった人は来てくださーい! ”治癒能力(ヒーリング)”で治してあげますから!」


「おお、助かるぜミス・キタゾノ」


「さっそくちょっと足の具合を()てくれないか? 足の裏にヒビの一つは入ったかもしれん……」


 兵士たちも北園のもとへ群がり、それぞれ怪我を治してもらい始める。


 そんな中、飛空艇の甲板の端から、日影とコーネリアス少尉が地上を見下ろしていた。


 広大な大地は、崩れ落ちたグラウンド・ゼロの外殻が積もり、瓦礫の大陸と化してしまっている。北アメリカ大陸そのものの崩壊という事態は防げたが、この崩れた外殻を片付けるのも、どれだけの時間がかかるか想像がつかない。


「後始末のことヲ考えると頭ガ痛くなるガ……ひとまズ、これで終わったナ」


 コーネリアスがつぶやく。

 だが、その言葉に対して、日影が首を横に振った。


「まだ終わってねぇ。今までの『星殺し』と同じ傾向なら、グラウンド・ゼロの本体が残ってるはずだ」


「……そうだったナ。急いで地上へ降りテ、奴の本体を探そウ」


「ああ。ここまでやったのに本体には逃げられた、なんてことになったらオレはもう面倒みきれねぇ」


「……ところデ、ヒュウガ・クサカベとジャックはどこに行っタ? この甲板にはいないようだガ、まさカ……」


「落ち着け、落ちてねぇよ。ユピテルが背中に乗せて運んでるのが見えたぜ。こっちに戻ってこないあたり、先に地上に降りて本体を探し始めているのかもな」


「そうカ。落ちてないなら安心ダ」


「ともあれ……『星殺し』の本体も、外殻ほどじゃねぇがだいたい強ぇ。アイツらが先に戦ってるとしたら、手伝ってやらねぇと危ないかもな。ちょいとオレだけでも先に地上へ行ってくるぜ」


「頼んダ。俺は光剣型に右腕を破壊されテ、事実上の隻腕の状態ダ。先ほどは氷の異能でリカルドを手伝いはしたガ、直接的な戦闘にこれ以上参加するのは難しいだろウ」


「ああ。こっちには怪我してるヤツも多いみてぇだからな。ゆっくり降りてきたらいいと思うぜ」


 そう返事をして、日影は甲板の上から飛び降りた。



◆     ◆     ◆



 一方その頃。

 日向とジャックは、日影の予想通り、ユピテルの背中に乗って先に地上へと降りていた。


 ここまでずっと飛行し続けてもらって、ユピテルもかなり疲労が溜まってきているようだ。グラウンド・ゼロの本体探しは日向とジャックの二人が引き受け、ユピテルはいったんこの場から離脱してもらった。


 地上を埋め尽くすグラウンド・ゼロの外殻の残骸の上で、周囲を見渡しながら、日向とジャックはつぶやく。


「分かってはいたけど……地上はすごいことになってるな……。見渡す限り、壊れた岩だ」


「この中からグラウンド・ゼロの本体を探さなきゃなんねーのか。壊れていなかった時よりマシだろうが、骨は折れそうだな」


 しかし、その時。

 この崩れた岩の大地の上で、一人の人影を発見した。


 これまでの『星殺し』の本体は、ジ・アビスなどは少し異形だったが、そのほとんどは人型だった。日向とジャックは「いきなり本体発見か?」と少し期待する。


 だがすぐに二人は、その人影は普通の人間だということに気づいた。

 そして、その人物は、日向もジャックも予想だにしていない人物だった。


 そこにいたのはノイマンだ。

 先ほど、搭乗していた戦闘機ごとグングニルの爆発に巻き込まれて消滅したと思われていたノイマン・ロビンソン准尉だったのだ。


「タイガー。二人とも無事だったか」


「の、ノイマン!?」


「ええ!? ノイマン准尉!?」


「俺が投下したグングニルでもグラウンド・ゼロが倒れていなかったときは(あせ)ったが、やったなジャック。マードック大尉もきっと誇らしく思ってるぞ」


「あ、ああ、サンキューな……じゃなくてだな! オマエ、生きてたのかよ!?」


「タイガー。やっぱり死んだと思われていたのか。実際、俺自身も『俺は死んだ』と思っていたものだが」


 そう言ってノイマンは、自分が生きていた経緯を説明する。


 グングニルを投下し、戦闘機を全速力で飛ばして、グラウンド・ゼロから離脱していたノイマン准尉。


 しかしその途中で、グングニルは爆発。

 通信もつながらなくなり、日向たちはノイマンが死んだものと思っていた。


 だが実際は、ノイマンが操縦していた戦闘機は、たしかにグングニルの爆発に巻き込まれはしたものの、後ろ半分……つまりエンジン部分だけで済んだのだ。ノイマンが乗っていたコックピットまでは巻き込まれていなかった。


 とはいえ、機体が大破したことに変わりはなく、その影響で機体の通信機能も壊れてしまったのだろうとノイマンは話す。


 後ろ半分を消し飛ばされた戦闘機は、もはや墜落するしかなかったが、ノイマンはエヴァからもらった『星の力』で、背中に翼を生やして飛行する異能力を授かっていた。その異能を使って、()ち行く戦闘機から脱出したのである。


「パラシュートは使わず、身一つでの脱出だったからな。だからお前たちも俺を見つけられなかったのだろう。タイガー」


「け、けどよ、オマエ、個人で持ってる通信機はどうした? 一応そっちにも連絡を入れてたけど、オマエ応答しなかっただろ」


「基地に忘れてきた。俺も早く自分の無事をお前たちに伝えなければと思ったが、どうしようもなかった」


 それを聞いたジャックは、鋼の右手でノイマンの頭をひっぱたいた。


「タイガー。痛いじゃないか。死んだらどうする」


「うるせーバーカ! オマエはホントそういうところあるよな! 最高だよクソッたれ!」


「褒めるか(けな)すかどっちかにしてくれ。タイガー」


 ともあれ、死んだと思っていた人間が生きていた。これほど喜ばしいことはない。和やかな空気が三人を取り巻く。


 ……が、しかし。

 その空気が、一瞬で緊張感あふれるものに変わった。

 近くの崩れた外殻の下から、何かが勢いよく飛び出してきたのだ。


 現れた何者かが、岩場の上に着地。

 全身が薄茶色の岩でできた、二メートルを超える大きな人型だった。


「全身が岩っぽい人型の怪物! あれがグラウンド・ゼロの本体か! もうここまで来た以上、隠れはしないってことか……!」


 日向が『太陽の牙』を構える。

 ジャックとノイマンも、それぞれの拳銃を構えた。


「ノイマン。オマエ、直接戦闘ではロクな能力を持ってねーだろ? せっかく拾った命なんだから、ムリすんなよ」


「タイガー。分かってる。だが、この場に居合わせて観戦を選択するほど、俺も大人しい人間じゃない。援護しかできないとしても、最後まで戦うさ。大尉たちの仇だしな」


「それもそうか。言ったオレが野暮だったな。……というワケでヒュウガ、俺たちも加勢させてもらうぜ。構わねーよな?」


「もちろん。むしろすごく助かる。とはいえ、気を付けて。『星殺し』は本体もしっかり強いからな」


「ああ、分かってるぜ。もう誰も死なせねぇ。ここで俺が全部終わらせてやる!」


 ジャックが啖呵(たんか)を切り、三人がそれぞれの武器をグラウンド・ゼロへ向ける。


 そしてグラウンド・ゼロもまた、ゴツゴツとした岩石のような両拳を突き合わせ、打ち鳴らし、戦闘開始を告げる重圧(プレッシャー)を三人に向けて放った。


「gooooo...!!」



 北アメリカ大陸を西から東へ横断し、ついにグラウンド・ゼロをここまで追い詰めた。


 今こそ、この『星殺し』を打ち倒し、その勝利を、犠牲になった仲間たちに捧げる時である。

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