第1445話 降り注ぐ最後の攻撃
グラウンド・ゼロに最後の総攻撃を仕掛けるため、飛空艇の甲板へと向かった日向たちとアメリカチーム。
狙いはグラウンド・ゼロの右腕。
右腕の上から全員の全力攻撃を叩き込み、腕を押し下げる。
それでグラウンド・ゼロの身体の傾きはさらに大きくなり、やがて身体を支えきれなくなって崩れ落ちる……と日向は予想した。
アメリカチームの兵士たちの多くは、飛空艇の甲板から、周囲に浮いている岩石へと飛び移った。あまり密集していると、攻撃の際にグラウンド・ゼロの右腕へ飛び降りる時、他の者たちの攻撃に巻き込まれる恐れがあるからだ。
日向たち六人と、ARMOUREDの三人は飛空艇の甲板に留まっている。
グラウンド・ゼロの右腕を甲板から見下ろしながら、日向がつぶやく。
「うわぁ、改めて見るとやっぱり高いな……。二十メートルくらいの高さかな? 怖くなってきたな、やっぱり飛び降りるのやめとこうかな……」
……と、青い顔をしていると、ジャックが鋼の右腕を日向の右肩に回してきた。
「そんなこと言わずに付き合えよヒュウガ! ここで行かなきゃヒーローが廃るぜ?」
「わ、分かってる分かってる。言い出しっぺだしな。あのシャオランだってやる気なんだし、俺も頑張らないと」
「気持ちは分かるけど、ここでボクを引き合いに出さなくてもいいじゃんかぁ……」
日向の言葉を近くで聞いていたシャオランが頬を膨らませた。
部隊の展開はおおかた完了。
あとは合図と共に、一斉攻撃を仕掛けるだけである。
日向が一斉通信で皆に声をかける。
「聡明で戦闘経験豊富な皆さまにおかれましては分かり切っていることだとは思いますが、皆の攻撃のタイミングを一つに合わせて、右腕への衝撃を少しでも大きくしましょう」
その日向の言葉を聞いて、何人かの兵士たちが返事をしてくれた。
『もちろんだぜ! 俺たちアメリカチームの息がどれだけピッタリか見せてやるよ!』
『そちらも上手く合わせてくれよ。こちらも努力する』
頼もしい返事だった。
同時に、日向は思う。
彼らがいたからこそ、この合衆国本土奪還作戦はここまで来れた。
彼らがいたからこそ、グラウンド・ゼロをここまで追い詰めることができた。
そして、犠牲になった兵士たちが、ここまで来るための足場になってくれたからこそ、日向たちは今、ここにいる。
自分が死んでも、自分と同じ志を持つ者が残っていれば、道はどこまでも続いていく。
確かにその通りなのだが、そのために死をも恐れず戦ってくれた彼らには、感謝してもしきれない思いだった。
「――今度こそ、これで終わりにしましょう。総員、降下!」
日向の号令と共に、仲間たちも、兵士たちも、日向自身も、それぞれのタイミングで、グラウンド・ゼロの右腕めがけて飛び降りた。
まずはエヴァが『星の力』を充填し、能力を行使。
「堕ちよ……”アバドンの奈落”!!」
エヴァの詠唱と共に、グラウンド・ゼロの右腕に強烈な重力がかかる。恐らくこれだけでもグラウンド・ゼロは右腕を上げていられないほどの負荷を受けているが、そこへ他の皆がダメ押しとばかりに攻撃を実行。
一人の兵士が”生命”の異能で、左腕を肥大化させる。筋力も元の十数倍になったその腕を、グラウンド・ゼロの右腕に思いっきり叩きつけた。
また別の兵士が”地震”の能力で、足場にしていた浮遊岩石を全身に装着。岩の塊となって、グラウンド・ゼロの右腕に体当たり。
こちらではサミュエル中尉が”溶岩”の異能を行使。足から小規模な爆発を発生させ、その勢いでグラウンド・ゼロの右腕めがけて急降下。身体ごと一回転してかかと落としを叩き込む。
「はぁぁっ!!」
リカルド准尉とコーネリアス少尉が、それぞれの異能で巨大な氷塊を協力生成。それをグラウンド・ゼロの右腕の上へ落とした。着弾の衝撃で右腕の表面に激震が走るほどの威力だった。
「喰らえっ!」
「潰れロ……!」
レイカが”暴風”の異能で落下を加速させ、グラウンド・ゼロの右腕に流星のような蹴りを打ち込んだ。
「やぁっ!!」
日向たちの飛空艇も援護する。
誰も着地しない場所を狙って、ミサイルと主砲の一斉射撃。
まだ残っている三機のラプター戦闘機も、ありったけのミサイルをグラウンド・ゼロの右腕にお見舞いした。右腕の上でいくつもの爆発が巻き起こる。
金の大鷲のマモノ、ユピテルも攻撃に参加。
グラウンド・ゼロの右腕に急降下し、その全身ごと蹴爪で踏みつけた。
「ケェェンッ!!」
北園が”氷炎発破”を放った。
冷気と火炎が混ざり合って発生した大爆発が、グラウンド・ゼロの右腕に衝撃を与える。
「いっけぇー!」
本堂が生身のまま、両手足を叩きつけるようにしてグラウンド・ゼロの右腕に着地。彼の着地地点が派手に粉砕されるほどの破壊力だった。
「これはどうだ……!」
シャオランが”空の気質”を纏い、火の練気法の”爆砕”を使って、グラウンド・ゼロの右腕を踏みつけて着地。見上げるほどの高さまで土煙が舞い上がるほどの威力を見せた。
「やぁぁぁッ!!」
日影が”落陽鉄槌”で、グラウンド・ゼロの右腕にまっすぐ激突。まるで隕石が落ちてきたように、着弾地点で大爆発が発生。
「おるぁぁぁッ!!」
そして、日向とジャック。
日向は飛空艇から飛び降りる直前、あらかじめ自身の右手を思いっきり噛んで傷つけていた。その傷を”復讐火”で治療し、拳のパワーを底上げして、グラウンド・ゼロの右腕を殴りつける。
「どりゃああっ!!」
ジャックは落下しながら全身を引き絞り、”パイルバンカー”の使用準備。グラウンド・ゼロの右腕に近づいた瞬間、その引き絞った全身を解き放つように、右の拳を突き出した。
「”パイルバンカー”ッ!!」
トドメは再びエヴァ。
グラウンド・ゼロの右拳に、本日二度目の”星の咆哮”を放った。
「星よ、奏でたまえ……”星の咆哮”っ!!」
彼らの攻撃は、全てがほぼ同時に炸裂した。
何十人もの人間が一斉に攻撃に参加したのに、いっそ感動するくらいにピッタリのタイミングであった。
グラウンド・ゼロの右腕に凄まじい衝撃。
エヴァの重力の効果もあり、グラウンド・ゼロの右腕が押し下げられ、グラウンド・ゼロの全身も大きく傾いた。
そして……。