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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第23章 合衆国本土奪還作戦
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第1439話 誓いを果たす

 ARMOUREDのメンバーと最後の別れを済ませたマードックは、グングニルを肩に担いでグラウンド・ゼロの左拳へと向かっていく。


 その途中でマードックは、グラウンド・ゼロの右拳の方を見た。

 右拳の超震動エネルギーは、日向が一度”星殺閃光(バスタードノヴァ)”で焼き尽くした後、再びエネルギーを回復されないように他の皆が攻撃を加えてくれている。


 その甲斐あって、右拳のエネルギーは、地上に落ちてもあまり問題はないであろう規模にまで落ちている。アメリカチームの皆や予知夢の六人が頑張ってくれたようだ。


 マードックの上空で、日向たちの飛空艇が飛び去って行くのが見えた。恐らくジャックたちを回収してくれたのだろう。これで彼らも安全圏まで避難できたので、心置きなくグングニルを起爆できる。


 グラウンド・ゼロの左手首あたりまでやって来た。

 超震動エネルギーは、マードックのすぐ目の前で広がっている。


 エネルギーの周辺では、空気が音を立てて震えている。

 近づくだけで粉々にされてしまうのではないか、と思ってしまうほどのプレッシャーだ。


 その超震動エネルギーの手前で、マードックはグングニルを足場に置いて、オリハルコン製の装甲を分解。どんな迎撃でも傷一つつかないグングニルの蒼い装甲だが、構造を理解していれば装甲そのものはドライバー一本で取り外しが可能だ。


 弾頭部分を取り外すと、反物質が内蔵されている装置を発見。


「……ふむ。起爆のための信号が、装置まで届かないように回線を切断されているだけか。流石のスピカ型も、飛んでくるミサイルの内部をゆっくりといじっている暇は無かったようだな。これなら私の義体を動かす電力を使って装置を起動させれば、グングニルを起爆することができる」


 後は起爆するだけ。

 しかしマードックは、ふとその手を止める。

 ARMOUREDの皆に別れは告げたが、他の隊員たちはどうするか、不意にそんな考えが浮かんでしまった。


 他の皆に別れは告げない。

 ジャックたちのように、皆が反発すると分かっているからだ。

 後で皆、ジャックたちから仔細(しさい)を聞くだろうから、マードックから別れを告げても告げなくても同じだと考えた。


 そう考えたのだが。

 やはり皆にも何か一言は伝えておくべきかと、マードックは考えを軟化させた。


「戦闘中に皆の士気を落としてしまう可能性もあるが……いや、きっと彼らなら大丈夫だろう。そう信じたからこそ、私も今、行動しているのだから」


 そうつぶやき、マードックは通信機の一斉通信機能をオンにして、皆に向けて短く、言葉を伝えた。


「こちらマードック。これよりグラウンド・ゼロの超震動エネルギー消滅作戦を実行する。諸君、後はよろしく頼んだぞ」


 そして。

 マードックは、グングニルを起爆させた。



――我らは、誓った。

  我らは犠牲を恐れないと。

  犠牲を出してしまうことを、(いと)わないと。



――もしも、どうしようもないような強敵が出現したのなら。

  先陣を切る我らが命を賭して、その敵の弱点を見つけ出そう。



――もしも、我らが()く先に深い谷があるのなら。

  先頭を行く我らが進んで穴の中に落ちよう。

  我らの死体で穴を埋め、後に続く者たちのための道になろう。



――だから、生き残った者たちよ。

  どうか、我らの犠牲を有効に活用してほしい。



――我らの国を守るため、そして、この星を守るためならば。

  我らは喜んで奈落の底へ身を投じよう。

  後に続く者たちのための道となり、土壌となろう。



――最初にそれを提唱したのは、私だ。

  そして皆、ここまで本当に、よく実行してくれた。

  彼らが命を懸けてくれたから、我々は、そして私は、ここまで来れた。



――だから、今度は私の番なのだ。

  最初にこの誓いを提唱した者として、その責任を果たしに行こう。



――グラウンド・ゼロよ。

  皆が守ろうとした我らの大地を、砕かせはしない……!




◆     ◆     ◆



 グラウンド・ゼロの左拳が、突如としてまばゆい光に包まれた。

 皆の通信機から、マードックの声が聞こえた直後だった。


 やがて光が収まると、グラウンド・ゼロの左拳が消滅していた。左拳が(まと)っていた超震動エネルギーも見当たらない。


 それを見た一部の兵士たちは、歓喜に()いた。


「グラウンド・ゼロの超震動エネルギーが消えてるぞ!」


「本当に超震動エネルギーが消えた! マードック大尉はいったいどんな手を使ったんだ!?」


「さっきの光って、グングニルの……反物質爆弾の爆発か? 三発目を使ったのか?」


 そして一部の兵士たちは、最後のマードックの言葉に嫌な予感を覚え、焦燥を抱いていた。


「なぁ、さっきの大尉の言葉って……『後はよろしく頼む』って……」


「さっき爆発したグングニルが三発目じゃないなら、グラウンド・ゼロの左腕に落ちたっていう一発目か? だとしたら、大尉は……」


 だんだんと、皆が察し始めてきた。

 グラウンド・ゼロの左拳を巻き込んで、マードックは消滅したのだと。


 偉大なるリーダーが消えた。

 この場にいる誰もが、そのショックで動けなくなっていた。

 それは、アメリカ兵たちと共にいる日向たちも同じだった。


「マードック大尉が、死んだ……?」


「嘘……ほんとに……?」


「大尉……」


「う、ウソだよね? ウソだよね……?」


「……マジかよ」


「皆さん……」


 マードックとは短い付き合いだったエヴァも、ショックを受けている日向たちを見て、彼らを気遣うように、同じく動けなくなっていた。


 そんな時、また別の声が通信機から聞こえた。

 日向たちの飛空艇に乗っているジャックの声だった。


『おいオマエら! 葬式ムードはここまでだ! 悲しいのはすげー分かるけどよ、いつまでもメソメソして戦いの手が止まるのは、アイツだって望んでねーぞ!』


「ジャック……」


『マードックは俺たちに、皆がアイツの後を継いでくれることを願ってた! これからは俺たちが、アイツがいなくとも、一つにまとまって動かなきゃならねぇ! アイツを含めた全ての犠牲を無駄にしないためにも! 今はまずグラウンド・ゼロをどうにかするぞ!』


「そう……だな。よし、やってやる……!」


「ここまで来たら、あと一息だろ! 絶対にグラウンド・ゼロを倒すぞ!」


 皆の士気が再び戻った。

 日向たちも同じく、気を持ち直した。


「なんか今、ジャックから、良い意味であいつらしくないカリスマを感じた気がしたな」


「マードックさんがいなくなったぶん、ジャックくんも気合いを入れてるのかもね……」


「ともあれ、ジャックの言う通りだろう。グラウンド・ゼロの右拳の超震動エネルギーは弱化し、左拳は諸共(もろとも)消え去った。これでようやく、三発目のグングニルをグラウンド・ゼロに撃ち込むことが出来る」


「ボクたちずっとグラウンド・ゼロの右拳を攻撃し続けて、エネルギーを散らして頑張ってたもんね! 一か月くらい攻撃し続けてたような気さえするよ!」


「ウソつくな、せいぜい二十分くらいだったろ。なんだ一か月って」


「グラウンド・ゼロは、右拳の超震動エネルギーの回復と、左拳の再生を図っているようですが、どちらもスピードは遅いです。今なら奴に『ぐんぐにる』とやらを撃ち込めます」


「よし、いよいよあいつにトドメを刺す時だな……!」


 そう言うと日向は、グングニルの発射を要請するために、合衆国機密兵器開発所へ通信を行なった。

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