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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第23章 合衆国本土奪還作戦
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第1422話 金色の竜人

 ニコが『星の力』による進化を終えて、金色の竜人とでも呼ぶべき姿に変貌した。


 ロドリゴもカインも、スピカ型のレッドラムに教えてもらったことで分かっていたはずだが、やはり信じられないといった様子で、新しいニコの姿を見ていた。


「ニコちん……」


「ブライアント少尉……」


 その一方でスピカ型は、(あき)れた表情でニコを見ていた。

 しかしその(あき)れ顔は、どうやらニコではなく自分自身に向けているようだ。


「あーあ、結局こうなっちゃったかー。のんきに話なんかしてないで、さっさと殺しちゃえばよかったのにねー。オリジナルの人格の影響かな」


「皆ノ、仇……モう、負けなイ……ッ!!」


 ニコが翼を広げて大きくジャンプ。

 竜の爪が生えた右手を振りかぶり、スピカ型に飛び掛かる。


 飛び掛かってくるニコの心を、スピカ型は読んだ。


「真正面からの飛び掛かりは、ワタシを油断させるためのブラフ。ワタシが”念動力(サイコキネシス)”で迎え撃とうとしたところで一気に加速して、ワタシの懐に潜り込む。なるほどねー」


 スピカ型は、飛び掛かってくるニコに右手を向けた。

 まずはお望み通りに”念動力(サイコキネシス)”を使う……ように見せかけて、接近してきたところを仕留める作戦である。


 ニコの心が、加速を意識した。

 彼女の接近に備えて身構えるスピカ型。


 次の瞬間、鋭く重い衝撃と共に、スピカ型は左方向へ吹っ飛ばされていた。


「ぐっ……!?」


 何が起きたか。

 起こったこと自体は単純明快。

 ニコに接近されて、横から蹴り飛ばされたのだ。


 だが、その接近する速度が異常だった。

 心を読み、ニコが次に何をするか分かっていたスピカ型でも反応が間に合わないほどに。


 吹っ飛ばされながらも体勢を整え、スピカ型は着地。

 すぐさま顔を上げ、ニコを視界に(とら)える。


「距離が遠い。ここからじゃあの子の心がよく見えないなー……」


 スピカ型は、一瞬で意識のスイッチを切り替えた。

 ニコを強敵と認識し、もう二度と油断はせず、確実に仕留めるために。


 ニコは短く、それでいて大きく息を吸い込み、スピカ型めがけて口から黄金色のビームを発射。体内で発生させた電気を圧縮して撃ち出した、雷電のドラゴンブレスだ。


 恐るべき速度で発射されたニコのブレスだったが、スピカ型は”瞬間移動(テレポート)”を使って姿を消してしまった。いったんニコからの捕捉(ほそく)を切るために遠くへ移動したのか、この周囲にスピカ型の姿は現れない。


「どコ……行ッた……!?」


 ニコは翼を広げて、空へと飛び上がった。

 上空からスピカ型を探すつもりらしい。


 この場に残ったのは、ロドリゴとカインの二人のみ。

 二人は、空へ飛び上がったニコを見ながら、呆然(ぼうぜん)とした様子で声を掛け合っていた。


「ブライアント少尉……ホントにマモノになっちゃったっすね……」


「ああ……覚悟はしてたからニコちんを止めなかったけど、やっぱりちょっと胸が苦しくなるというか……」


「ところで、ブライアント少尉は俺たちのことをちゃんと味方として認識してるんすかね? スピカ型は『下手すると暴走する』みたいなことを言ってたっすけど……」


 すると、いきなり二人の頭上から雷のビームが落ちてきた。空にいるニコが吐いたものである。着弾地点で電気の大爆発を巻き起こした。


「とぉぉぉ!?」


「うおおおっす!?」


 二人は慌ててその場から退避し、どうにか爆発に巻き込まれずに済んだ。


 それからすぐに二人は、空にいるニコを見る。

 やはり彼女は自我を失い、二人をも敵と認識しているのだろうか、と。


 しかしニコは、それ以上は二人を狙わず、あちらこちらへ電気のブレスを吐き散らしていた。どうやらスピカ型が見つからないので、数撃てば当たるの方針に切り替えたようである。


「ドこだ……どこダぁァッ!!」


 ニコが真下に雷のブレスを吐き出し、それを前方に向かって振り上げた。ニコのブレスで一閃された地面が、一拍置いて縦一列の大爆発。


「優先順位はスピカ型みたいっすけど、俺たちのこともどうでもよさそうな感じっすね……。あんな様子じゃ、もうブライアント少尉の自我は……」


「……いや、まだ分からないぜ。スピカ型を倒せば、ニコちんの中の『スピカ型に対する敵意』も消えて、落ち着きを取り戻すかもしれない」


「だと嬉しいんすけど……そう上手くいくっすかね……」


 ……と、ここで、二人の通信機から声がした。

 どうやら合衆国機密兵器開発所の中枢からの連絡のようである。


『あー、あー、こちらスピカさんだよー! レッドラムじゃない、本物の方のスピカさんだよー! 地上のお二人、応答おねがーい!』


「あ、本物さん。こちらカインっす。どうしたっすか?」


『そっちの様子は樹海に仕込まれている隠しカメラで確認してたけどさ、ちょっとあの竜になっちゃったニコちゃんをどうにかできないかなー!? あっちこっちが爆撃されて、このままじゃ最後のグングニルを装填している砲台も巻き込まれちゃいそうだよー!?』


「ああ、まずいっすね……スピカ型が見つからないから……」


「木々が生い茂る森の中に隠れたんじゃ、空に飛び上がったところで、葉っぱが邪魔で余計に見つけにくいだけだよな。しかも、いつか地上から狙い撃ちにされる可能性だってある」


「マルティン少尉。ブライアント少尉が手に入れたチカラは確かに凄まじいものっすけど、このままだと、やっぱりあの人だけじゃスピカ型には勝てなさそうっす。俺たちが補助しないと」


「同じこと考えてたぜカイン。あのスピカ型さえ倒せばニコちんも元に戻ると信じて、頑張るか!」


 うなずき合うロドリゴとカイン。

 その二人に、再びスピカが通信で声をかけた。


『よろしくねー二人とも! ……あ、それともう一つ!』


「ん、どした?」


『今のところワタシ型のレッドラムは、ワタシたちがいる施設中枢には直接”瞬間移動(テレポート)”で来れないと思う。中枢(ここ)の正確な位置が分からないから。おまけにここは地下。下手に移動すれば土の中に転移して生き埋めになっちゃう……どころか、土と一体化してお亡くなりだろうからね』


「ふんふん、なるほど」


『でも……施設の入り口から乗り込んでこられたら、ワタシ型はバリアーとか使って、無理やりトラップを突破して中枢まで侵入してくると思う。つまり、キミたちが突破されちゃったら、ワタシたちも助からないってこと』


「それは……責任重大だな……」


『そゆこと。というわけで、絶対にワタシ型を施設に侵入させないようお願いね! おたくの通信チームがやられちゃった場合でも、最後のグングニルは発射できなくなっちゃうんだからねー!』


「オーケー、オーライ、おー任せい! アンタの偽物は、ここでオレっちたちがきっちり成敗してやるからよ!」


 通信を切り、ロドリゴとカインはニコを援護するために動き出した。

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