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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第23章 合衆国本土奪還作戦
1452/1700

第1419話 施設を守護するもの

 場面は変わり、こちらは合衆国機密兵器開発所、その屋外の森林地帯。


 スピカ型のレッドラムはグングニル発射の妨害をするため、施設への侵入を部下のレッドラムに任せ、彼女自身はこの地上に残っていた。


 そこへやってきたのは、三人のアメリカ兵。

 ニコとロドリゴ、それからカインである。


 微笑みを浮かべていたスピカ型は、その三人の姿を見て、さらに深く笑みを浮かべた。


「おやー? キミたちはたしかこの間、セントルイスの街で会ったよねー? 特に、そこの金髪の子はよく覚えてるなー。お仲間さんを撃ち殺しちゃってたっけ。今日のターゲットは隣の男子お二人かな?」


「ふん、挑発しようたってそうはいかないよ。アンタは今日、アタシらにここで倒されて死ぬ。アンタが死ぬって分かっていれば、平常心も簡単に保てる」


(……マルティン少尉。今のブライアント少尉の言葉、実はちょっと挑発効いてるってカミングアウトしてるも同然じゃないっすか?)


(そういうところ正直なんだよなーニコちん)


「そこ二人。聞こえてるから」


「まぁワタシとしては、そこのお二人さんがバラしてくれなくても、自力で心が読めちゃうからねー。ワタシが挑発する前から、キミの心はワタシへの憎悪で煮えたぎってるね。今日ワタシの首を取れなきゃ発狂死する……そんな勢いまで感じるよ。そして、なんかワタシを倒すための秘策も用意してきているってこともね」


 そのスピカ型の言葉を聞いて、ロドリゴとカインは驚いた表情でニコを見た。二人とも、そんな秘策があるなど彼女からは何も聞かされていなかったからだ。


「ニコちん、そんなもん用意してたのかよー!?」


「何なんすか、その秘策って」


「それは……」


 何やら言いにくそうにしているニコ。

 その彼女の言葉を待たずに、再びスピカ型が声をかけてきた。


「でも、いいのかなー? キミたちの秘密基地になっているそこの施設には、ワタシの部下のレッドラムをたくさん侵入させた。キミたちの任務はここの防衛でしょ? ワタシなんかに構ってないで、中にいる人たちを助けなきゃ」


「ああ、それなら問題ないよ」


「問題ないって?」


「そう。なんで問題ないか、お得意の超能力でアタシの心を読んだらどう?」


「じゃあお言葉に甘えて。……ふーん、なるほどね」


 スピカ型はニコの心を覗き見た結果、「セキュリティシステム」、「トラップ」、「ミオン」などの単語を読み取った。



◆     ◆     ◆



 同じころ、合衆国機密兵器開発所内部。


 レーザートラップが作動して、二体のレッドラムが焼き切られて絶命した。

 さらに、こちらでは通路全体に強烈な電撃が流されて、三体のレッドラムが黒焦げになった。


「KAAAA!! ナンダココハ! 罠ダラケノ迷宮ジャナイカ!?」


 現在、合衆国機密兵器開発所は、日向たちが停止させたセキュリティーシステムを再稼働させて、レッドラムの侵入を妨害している。もちろんセキュリティーレベルは落として、レッドラムだけを攻撃するように設定を変更した。


 施設内のトラップのほとんどを把握していたハイネが同行していた状態でも、日向たちはあの数多くのトラップに手を焼かされた。トラップの情報をまったく持っていないレッドラムたちが同じように挑めば、彼らにとって地獄が待ち受けているのは想像に難くない。


 とはいえ、レッドラムたちもそれぞれが異能を持つ、恐るべき怪物だ。いくらかの個体はトラップを突破し、通信チームや技術チームが集まる施設中枢へと近づいている。


 後方支援部隊には、戦闘をこなせる人員がほとんどいない。


 通信チームにはマイケルが所属しているが、彼はセントルイスでの戦闘で負傷してしまった。もちろん傷の治療は受けたものの、神経まで傷つけられたらしく、まだ握力などが回復しておらず、動きのキレも落ちている。


 ゆえに、レッドラムに施設中枢を攻め込まれたら、後方チームは一気に危機に陥ってしまう。


 だが、そんな状況にも対応できるよう、前線チームは大きな戦力をこの施設に残しておいた。


 三体のレッドラムがトラップを突破し、施設中枢間近まで接近。


 そこに立ちはだかったのは、シャオランの師匠であるミオンだった。


「あら~、いらっしゃ~い! ここを通りたければ、この私を倒していくことね♪」


「ミ、ミオンクヌリフェ……!」


 ミオンはおもむろに三体のレッドラムのもとへ歩み寄り、素早く拳を動かす。


 あっという間に三体のレッドラムの頭部が破裂した。

 目にも留まらぬ速度で振るわれたミオンの拳によって、頭を打ち抜かれたのだ。


 ここでミオンが施設中枢を防衛している限り、レッドラムたちが中枢へ侵入することはありえないだろう。


 しかしミオンは、心配していた。

 中枢にレッドラムが入り込むことではなく、地上にいるニコたちのことを、である。


”空の心”によって心を無にできる自分が、スピカ型のレッドラムと戦うべきだとミオンは思っていた。

 しかしニコに懇願されて、彼女らにスピカ型の相手を譲り、ミオン自身はここでレッドラムの侵入を防ぐことになったのである。


 その際にミオンは、ニコにこう言われた。


(アンタ、まだ病み上がりなんでしょ? もしもそれが原因でアンタがスピカ型に負けたら大きな損失よ。アンタは本来、アタシらよりも重要な戦力なんだから。だから今回はアタシらに譲って、アンタは後方で養生してて。もしもアタシらが負けた時は……その時は悪いけど後始末よろしくね。まぁ、もう負けないけどさ)


 確かにニコの言葉にも一理あるが、スピカ型の相手を務めることになったニコたち三人よりも、今の病み上がりのミオンの方がまだ強い。


 だからミオンも、最初はニコにスピカ型を任せるべきか迷った。ニコがスピカ型に固執しているのを、ミオンも知っていたからである。ニコは冷静にスピカ型と戦うことができずに犬死(いぬじ)にしてしまうかもしれない。


 それでもニコにスピカ型を任せたのは、ミオンから見て、ニコの眼に何らかの「覚悟」が宿っていたように感じたからである。これを止めるのは野暮、とミオンは判断した。


「あの子が何をするのかは私も分からないけど……スピカちゃん型に勝っても負けても、あの子は無事じゃ済まないでしょうね……。それでも構わないっていう『覚悟』が、あの子の眼の中にはあった……」


 少し気まずそうに、ミオンはそうつぶやいた。

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