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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第23章 合衆国本土奪還作戦
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第1418話 英雄の演説

 こちらはARMOUREDの様子。

 彼らは現在、光剣型のレッドラムと戦闘を繰り広げている。


 恐るべきスピードで動き回り、必殺の威力を持つ斬撃を次々と放ってくる光剣型のレッドラム。シンプルながらも極めて凶悪な戦法であり、世界最強の対マモノ特殊部隊であるARMOUREDといえど、一瞬たりとも気が抜けない。


 そんな緊迫した戦闘の最中でありながら、ジャックは予知夢の六人や仲間の兵士たちが戦意喪失しかけているのを察知し、通信機越しに彼らを叱咤激励していた。


「そりゃまぁ、オマエらの気持ちもよく分かるさ! もうこっちは余力はないってのに向こうはまだ余裕たっぷりと来たら、そりゃ諦めたくなるモンだよな! けどよ、俺たちの戦いは、俺たちのためだけのものってワケでもねーだろ? 俺たちを信じて待ってくれている生存者たち、俺たちを信じて後を託してくれた仲間たち、大勢いたはずだ!」


 そのジャックの言葉を聞いて、通信機越しに兵士たちはハッとした。


 ジャックの言う通りだ。

 ここまで来るために、大勢の兵士たちが犠牲になった。

 皆、生き残った者が最後に勝利を掴んでくれると信じて、死を恐れず戦ってくれた。


 最後の最後まで戦って、戦って、戦い抜いて、それでもグラウンド・ゼロに勝てなかったのであれば、犠牲になった者たちも納得はしてくれるかもしれない。


 だが、ここで「どうせ勝てないから」と早々に諦め、今できることさえやらずに敗北を受け入れたら、はたして先に地獄で待っている仲間たちは何と言ってくるだろうか。


 ニューヨークの空母では、今も生存者たちが兵士たちの勝利を祈ってくれているだろう。彼らが待っているその場所に、「勝てないと判断したから諦めて帰ってきました」などと、間違っても言えるものか。


 ジャックの呼びかけのおかげで、絶望の中で忘れかけていた誓いを、兵士たちは思い出した。


『そうだ……そうだったな……。アイツらの犠牲があったからこそ、俺たちは今ここにいる。その責任を果たさねぇと……!』


『皆の犠牲で埋め立ててくれた奈落の谷を、俺たちが踏破しなくちゃならないんだ!』


『けど……実際どうする? 左拳の超震動エネルギーを消滅させるには、今の俺たちじゃあまりにも火力不足だ。おまけに右拳のエネルギーも回復しつつある。ここで俺たちにできることは何だ……?』


 どうにかギリギリのところで折れずに立ち直ってくれた兵士たちだが、状況が絶望的であることに変わりはない。せっかく再燃してくれた兵士たちの意思の火種も、このままでは何もせずとも自然消滅してしまいそうだ。


 そんな彼らに、ジャックは再び通信機で声をかけた。


「心配すんなって! とりあえず今は、機密兵器開発所の連中がスピカ型を排除して、三発目のグングニルを撃ってくれるのを待てばいい! 向こうにもそれなりの戦力は揃ってるんだ。三発目の正直、必ずやってくれるはずだぜ!」


『けど、一発だけじゃグングニルが足りない! 左拳の超震動エネルギーとグラウンド・ゼロ本体、どっちか一方しか狙えないぞ!?』


「だったらお前、グラウンド・ゼロ本体一択だろ! 超震動エネルギーを消滅させてもグラウンド・ゼロを倒せるワケじゃねーしな!」


『だが、そうしたら左拳の超震動エネルギーが大地に落ちて、この大陸が……』


「大陸が崩壊するって言うんだろ? まぁそれならそれで仕方ねーさ。それでこのデカブツ倒せるなら安いモンだろ。我らが母なる大地も納得してくれるって」


『お前、マジで言ってるのか! この大陸をレッドラムどもから取り返すために、俺たち今までずっと戦ってきたっていうのに!』


「そりゃあ、この大陸を無傷で取り返せたら万々歳だぜ? けどよ、それに固執するあまり、グラウンド・ゼロに勝てねーんじゃ本末転倒だろ」


『そ、それは……確かに、その通りなんだが……』


「一つくらい大陸がぶっ壊されても、まだ他に大陸が残っていて、人類が生き残っているんなら、未来は続いていくんだ。その未来のために、いま勝たなければならねー戦いは何が何でも勝つ! たとえ、ここまで犠牲になった俺たちの仲間たちと同じように、この大陸を勝利のための(いしずえ)に捧げてでもな!」


 さすがにそれはどうなんだ、と兵士たちは思った。

 しかし同時に、目から(うろこ)が落ちるようでもあった。


 どうせこの大陸は壊される。

 しかし別に、絶対に守り通さないといけないわけでもない。

 そう考えると、皆の気持ちが少し楽になった。


『そうか……そうだな』


『俺たちの大地は壊されるかもしれないけど、それで全部が終わるわけじゃないんだよな。俺たちの未来は続いていくし、どのみちグラウンド・ゼロは倒さなくちゃいけない』


『これは俺たちアメリカの戦いだけど、同時に、この星に生きる全ての者たちの戦いだ。こんなデカブツがいつまでも残ったままじゃ、後に続く連中が大変だよな』


『おっしゃ! ダメでもともとで、もうちょっと頑張ってみるか!』


 兵士たちの心が、再び燃え上がった。

 諦観(ていかん)半分ではあるが、見つめるべきものを見つめてくれた。


「それでこそ合衆国(ステイツ)の軍人だぜ。ったく、世話焼かせやがって」


 通信機越しに兵士たちの奮起の声を聴いて、ジャックは(あき)れ気味に微笑(ほほえ)んだ。


 そんなジャックに、光剣型のレッドラムが接近。

 あっという間に距離を詰めてきて、右の光剣を突き出してきた。


「刺突」


「うおっあぶねー!? 人が電話してるときは静かにしろって学校で習わなかったのかよ! 俺は習ったことねーな考えてみたら!」


 デザートイーグルを連射し、ジャックは光剣型を下がらせる。

 そこへマードックがガトリング砲を射撃し、さらに光剣型を後退させた。


 光剣型と間合いが開いたのを確認し、マードックはジャックに声をかける。


「ジャック。皆への演説、ご苦労だったな」


「演説って、別にそんな立派なモンじゃなかったろ。売り言葉に買い言葉っつーか、まぁいつものやり取りだったろ?」


「ふっ、そう言うか。やはりお前は大した奴だよ」


「な、なんだよ今日はえらい素直に褒めちぎるじゃねーか。光剣型に頭でもやられたか?」


「まだ無傷だ、失敬な奴め。ともかく、これで私も一つ、決意が固まった」


「あん? 何の話だ?」


 するとマードック通信機を取り出し、先ほどのジャックのように、皆に向けて一斉通信を行なった。


「皆! よく聞け! 攻撃するのであれば、引き続きグラウンド・ゼロの右拳を狙え! 左拳の超震動エネルギーは、上手くいけばの話になるが、こちらでどうにかできるかもしれん!」


『マジかよ大尉!? それを早く言えよー!』


『果然やる気が出てきたぜ! じゃあ俺たちはここまでと同じようにグラウンド・ゼロの右拳を狙って、弱体化させたエネルギーが回復しないように抑えていればいいんだな!?』


『よっしゃお前ら、気合い入れろよー!』


『よく言うぜ、さっきまでお前が一番暗い顔してたじゃねーか!』


 マードックの話を聞いて、兵士たちの士気がさらに上昇した。

 その一方で、ジャックは少し懐疑的な表情。


「マードック、今の話マジか? 本当にグラウンド・ゼロの左拳のエネルギーをどうにかできる方法があるのかよ? まだ無傷だぞ左拳」


「上手くいけば、だがな。その方法を実行するには、まずは光剣型を排除せねばならん。片手間で行なえることではないのだ」


「オーケー。それならサクッと片付けてやるか!」


「お二人とも、そろそろお話終わりましたか!? 少尉と私だけであの化け物を引き付けるのも限界ですー!」


 レイカが泣き叫ぶように、ジャックとマードックに声をかけた。

 二人はレイカに礼と謝罪を述べつつ、戦線復帰した。

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