第1415話 総攻撃
サミュエルとリカルドが将軍型のレッドラムと戦闘を繰り広げていたころ、予知夢の六人やほかのアメリカ兵たちは、浮遊岩石地帯に展開していたレッドラムたちをあらかた掃討し、グラウンド・ゼロへの攻撃を開始していた。
グラウンド・ゼロの両拳に生成されている、合わせて二つの超震動エネルギー。左拳の方は二発目のグングニルで消滅させる予定だが、右拳の方に三発目を使ったらグラウンド・ゼロ本体に撃ち込むためのグングニルが無くなってしまう。
よって、右拳の方は人間たちの総攻撃でどうにか消滅させなければならない。
日向の”星殺閃光”で腕まで貫かれた影響か、新たに生み出した右拳の超震動エネルギーは一回目より弱化しているらしい。だがそれでも、未だに尋常ではないエネルギー量である。
すでに多くの者が、グラウンド・ゼロの右拳へ攻撃を試みている。
まずは北園が”雷光一条”を発射。
前に突き出した両手から、青い電気の大きな光線を放った。
「えーいっ!!」
次に本堂が”轟雷砲”を撃ち込む。
かつては一発撃つだけでも彼の腕が折れていたこの大技を、五発も六発も連射する。
マモノとなって肉体がはるかに頑強になった今の彼ならば、この程度の連射は苦でもない。
「まだまだ。二十でも三十でも撃ち込んでくれる」
シャオランは超震動エネルギーの近くに浮いている岩へ移動し、そこで空の練気法”天界”を使用。超震動エネルギーを”空の気質”の領域に捉えてから、八極拳のフルコースを叩き込む。
「せやッ! やぁッ! えいやぁッ!!」
日影は”オーバーヒート”を使用。浮遊岩石地帯をくぐり抜けて、超震動エネルギーに正面から激突。一度激突したらいったんとんぼ返りして、また激突。何度も何度も繰り返し、何度も何度も大爆発を巻き起こす。
「弱化しても大陸を半壊させるほどのエネルギーか! それを消滅させるにはコイツと同等のエネルギーをぶつけなきゃならねぇわけだから、オレたちの攻撃で大陸を半壊させろって言ってるようなモンだろ? どれだけ攻撃すればいいか想像もつかねぇな! 上等だ、徹底的にやってやらぁッ!」
その一方で、エヴァは何かの攻撃の発動準備のために『星の力』を集中させているらしく、まだ何の攻撃も行なっていない。ただ、彼女の周囲に充満する蒼いエネルギーが非常に濃くなっており、相当な攻撃を見せてくれるであろうことは間違いなさそうだ。
さらに、飛空艇を操縦するアラムも攻撃に参加してくれている。
金色のエネルギー弾を次々と発射し、同時に主砲も撃ち出した。
「もしもの時は、みんなを乗せて帰還するためのエネルギーまで、攻撃に回さなきゃいけないかな……!」
レッドラムとの戦闘で生き残ったアメリカ兵たちも、グラウンド・ゼロの右拳に攻撃してくれている。
一人のアメリカ兵が自身の両手の中に熱エネルギーを凝縮。これを火球として投げつけた。
「ナパーム・ボム!」
彼が放った火球は、超震動エネルギーに着弾すると、民家を軽く五件は吹き飛ばしてしまいそうな大爆発を巻き起こした。そしてすぐに第二射の準備に取り掛かる。
こちらでは二人のアメリカ兵が、協力して超震動エネルギーを攻撃していた。
「巻き起これ、竜巻!」
「吹き荒べ、吹雪!」
一人が撃ち出した竜巻に、もう一人が吹雪を乗せる。
渦巻く冷気の奔流が、超震動エネルギーに激突した。
こちらでは一人の女性兵士が、彼女がいる岩場に生えている植物群を異能によって進化を促し、攻撃性能を持つ植物へと変貌させた。
「皆さん! よろしくお願いします!」
進化した植物たちは、彼らが持つ種子をグラウンド・ゼロめがけて発射。
種子は超震動エネルギーに着弾すると、手榴弾ほどの爆発を巻き起こした。
この種子が無数に放たれるのだから、その総合火力はかなりのものである。
大火力を発揮できる異能を持たない兵士たちも、持ってきた重火器で超震動エネルギーを攻撃。少しでもダメージを稼ごうと頑張ってくれている。
四機のラプター戦闘機も、浮遊する岩石の間をうまく搔い潜りつつ、ありったけの弾丸とミサイルを超震動エネルギーに撃ち込んでくれた。
四人の兵士たちが、バックパックから何かを取り出す。
野球ボールより少し大きいくらいの、球形の機械だ。
「ハイネの特性爆弾、ノヴァクラッシャーだぜ! ニホンチームが『幻の大地』で使った時は、落ちてきた隕石も木っ端微塵にしちまったとか!」
「合わせて四つ。これならどうだっ!!」
ノヴァクラッシャーと呼ばれた機械を持つ四人の兵士が、それを超震動エネルギーめがけて投げつけた。
その威力はまさに破壊的。
半径数百メートルにも及ぶ大爆発、それが四つ、超震動エネルギーの表面で巻き起こされた。
しかし、未だに超震動エネルギーは健在。
ちゃんと皆の攻撃は効いているのか。それさえ分からないくらい、エネルギーの規模に変化は見られない。
皆の表情にも焦りの色が浮かび始める。
兵士の中には、戦意を喪失しかけている者も現れだした。
「クソッ! やっぱり無理なんじゃないか!? 大陸を半壊させるエネルギーだぞ!? 人間の火力でどうにかできるわけが……」
「いいから攻撃続けろ! どうせあれほどのエネルギー、今からお前一人で逃げたところで、逃げ場なんかどこにもないぞ!」
「俺たちの全弾丸、全エネルギー、全部使い果たしても、あのエネルギーを消せなかったらどうしよう……」
「全部使い切ってから言え! ぶち込める弾丸はまだまだあるぞ!」
そんな中、エヴァが攻撃準備を終えたようだ。
全身から蒼いエネルギーを滾らせながら、皆に声をかけた。
「”星の咆哮”を使います! 皆さん、巻き込まれないように気を付けてください!」
「”星の咆哮”っていうと、俺たちと戦った時に、最後に使ったアレか!」
日向の言う通り、”星の咆哮”はエヴァの最大の大技。
増幅させた『星の力』を衝撃波やビームとして撃ち出すだけのシンプルな技だが、その破壊力はエヴァの『星の力』が十全ではなかった状態でも、核兵器に匹敵するほどのものだった。
今までは『星の力』の不足によりこの技を使えなかったようだが、どうやらここまでの戦いで『星の力』を取り戻し続けてきたことにより解禁されたようだ。
彼女の中で凝縮された『星の力』が、周囲に蒼いスパークを発生させている。どれほどのエネルギーが彼女の中で渦巻いているのか想像もつかない。
そしてエヴァが両手を前に突き出し、超巨大な蒼い光線を発射した。
「星よ、奏でたまえ……”星の咆哮”っ!!」