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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第23章 合衆国本土奪還作戦
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第1413話 不退転の決意

 サミュエルは、取り出した注射器を身体強化薬だと言って、自身の首元に針を突き刺して投与した。


 それを見たリカルドも息を一つ吐いて、サミュエルと同じように一本の注射器を取り出し、自身の首元に投与。


「……そうですね。ここまで来たら、やるしかない。迅速に将軍型を倒し、飛空艇で僕たちを回収してもらって、この戦線を離脱しましょう」


「すでに他のチームは雑魚レッドラムどもを掃討し、グラウンド・ゼロの超震動エネルギーへの攻撃に移っているようだ。あの大きさのエネルギーを削りきるとなると、時間も人手も一切無駄にするわけにはいかん。将軍型は、何が何でも俺達二人で倒さなければならない!」


 不退転の決意表明。

 薬の効果が切れる前に、将軍型を倒さなければならない。

 倒しきれなかったら、それは事実上の二人の死を意味する。


「フン。良イダロウ、オ前達トノ(くだ)ラン遊ビニ、モウ少シダケ付キ合ッテヤル。オ前達ナド、ショセン前菜。サッサト終ワラセテ、残リノ雑兵ドモモアノ世ニ送ッテヤル!」


 宣言し、将軍型がダッシュしてきた。

 これを見たサミュエルも、真っ向から将軍型へ向かっていく。


 まずはサミュエルが仕掛けた。

 一気に将軍型との間合いを詰めて、連続で斬りかかる。


 しかし、将軍型はこれらの斬撃をすべて回避するか、いなしてしまう。

 その最中に、ブレードを振るったサミュエルの右手を取り、背負い投げで投げ飛ばした。


「フンッ!」


「くぅっ!? まだまだ……!」


 投げ飛ばされたサミュエルは、異能による爆発跳躍で、投げ飛ばされながらも空中で体勢を整えた。見上げるほどに大きく飛び上がり、再び爆発跳躍で将軍型めがけて急降下。


 だが、そのサミュエルの横に次元の裂け目が開き、その裂け目の向こうから飛び出てきた将軍型の左ストレートが、サミュエルを殴り飛ばしてしまった。


「ぐぁっ……!?」


 サミュエルが撃墜されてしまった。

 しかしその隙に、今度はリカルドが将軍型の背後から攻撃を仕掛ける。


「引き裂かれるような寒さを味わえ!」


 リカルドが自身の超能力と『星の力』を総動員し、猛烈な吹雪を発生させた。巻き込まれたら全身が千切れてしまうかと思うほどの、白く輝く猛吹雪である。大規模であるため、将軍型も簡単には回避できそうにない。


 ところが、将軍型は自身の目の前に次元の裂け目を開き、その中へと入る。


 裂け目をくぐり、将軍型が現れたのは、リカルドの背後。

 あっさりと吹雪を回避してしまい、同時にリカルドの背中も取った。


 だが、リカルドもすぐに、将軍型が背後に回り込んできたのを察知。右手のひらに真っ白な冷気を瞬時に集中させ、圧縮し、爆発させるかのように将軍型めがけて発射。


「凍り付け!」


 ……が、しかし、将軍型は姿勢を思いっきり低くしながらリカルドの懐に潜り込み、彼が放出した冷気も(かが)んで回避する形に。


「ソノ(たぐい)ノ攻撃ハ、射出部分ノ根本(ねもと)(もぐ)レバ当タラナイト相場ガ決マッテイル!」


 言いながら、将軍型はボディーブローを繰り出して、リカルドを吹っ飛ばした。


「がはっ……!?」


 本来なら、リカルドが受けたら内臓が破裂して即死してもおかしくない一撃だった。


 しかし今のリカルドは、あらかじめ自身の肉体に氷の鎧を(まと)わせて防護しており、それがリカルドを即死の可能性から救った。


「とはいえ、氷の鎧があっても、この衝撃……! 見た目だけなら中尉の方がマッシブなのに、この馬鹿力は反則も良いところだ……!」


 十メートル近くも吹っ飛ばされたが、どうにか足でブレーキをかけて着地するリカルド。


 だが、すでに彼の背後に将軍型が立っていた。

 またも次元の裂け目を利用し、先回りしていたのだ。


 飛んできたリカルドに、将軍型は右の回し蹴りを仕掛ける。

 狙いはリカルドの側頭部。


「ハァッ!!」


 リカルドは左腕を氷の鎧で包み込み、将軍型の回し蹴りをガードしたが、それでもダメージは大きかった。抑えきれなかった衝撃が、そのまま側頭部に叩きつけられた。


「くぅぅぅっ!?」


 プロ野球の強打者がフルスイングした金属バットよりも、その衝撃はさらに強烈だっただろう。左腕を包んでいた氷は無残に砕かれ、身体ごと大きく蹴り飛ばされた。重い一撃が脳髄を襲い、気を失いかけてしまう。


 リカルドの氷の鎧に触れたことで将軍型の肉体も少し凍結しているが、お構いなしだ。そのまま、動けなくなっているリカルドにトドメを刺そうと動く。


 ここで、サミュエルが戦線復帰。

 蹴飛ばされてしまったリカルドを援護するべく、将軍型に斬りかかる。


「はぁぁぁっ!!」


 目にも留まらぬ速さで繰り出される斬撃の数々。

 しかし、これも将軍型には通用しない。

 冷静に、冷酷に、一つひとつの斬撃を丁寧に処理されてしまう。


「ソノ程度ナノカ、オ前達ノ全力ハ! 妙ナ薬品マデ使ッタトイウノニ、(まった)クモッテ足リンナ!」


 突き出されてきたブレードの切っ先を、将軍型は左フックで(はじ)いた。そしてサミュエルの体勢を崩すべく、彼の足元を狙ってローキックを繰り出す。


 しかし、サミュエルはジャンプして、将軍型のローを回避。

 跳び上がったサミュエルを殴り落そうと、将軍型が次元の裂け目を使った遠距離パンチを仕掛ける。


 サミュエルは足裏で小規模な爆発を発生させながら、その勢いで空中ジャンプ。将軍型の拳を回避してみせる。


 将軍型が、さらに連続で遠距離パンチを放つ。

 引き続き爆発跳躍を使って、これを避け続けるサミュエル。

 さながら、追尾してくるミサイルを振り切ろうとする戦闘機のような空中戦。


 やがて、次元の裂け目から飛び出てくるのを狙って、サミュエルが将軍型の右拳をブレードで斬りつけた。


「ふんっ!」


「ヌッ……!?」


 思わぬ反撃を受けて、将軍型はたまらず右拳を引っ込める。

 サミュエルも飛び回りながらではうまく狙いをつけられなかったか、将軍型の傷は浅い。


 攻撃を回避され続け、生意気な反撃を受けて、たいそう怒り狂っているかと思われた将軍型だが、その目元は(わら)っていた。


「セイゼイ飛ビ回レ。動ケバ動クホド、オ前ノ中ノ毒ハ増幅シテイクカラナ」


 やがて、毒が効いてきたのか、それとも単にスタミナ切れか、サミュエルの動きが鈍り始めてきた。


 それを狙って、将軍型が足元に次元の裂け目を開き、その中に自身の右足を突っ込ませる。


 すると、サミュエルの頭上に開いていた次元の裂け目から将軍型の右足が飛び出てきて、踏みつける形でサミュエルを地上へ叩き落してしまった。


「ぬぐっ!?」


 サミュエルが落ちたのは、将軍型のすぐ目の前。

 将軍型は、サッカーボールキックでサミュエルを蹴り飛ばしてしまう。


「死ネ!!」


「がはっ!?」


 それこそサッカーボールのように、人間が蹴られたとは思えない距離まで飛ばされてしまったサミュエル。当然ながらダメージも大きい。痛みを必死に押し殺しながら、何とか立ち上がろうとしている。


 ……が、その時。

 サミュエルが、胸のあたりを手で押さえながら、うずくまってしまった。


「ぐ……ぁ……、こ、これは……この痛みは、先ほど蹴られた箇所ではない……」


「ドウヤラ、終ワッタヨウダナ。我ガ毒ハ、オ前ノ肉体ヲ完全ニ(むしば)ンダ」


「お……おの、れ……」


 ブレードを地面に突き立てて杖にしながらも身体を支えていたが、とうとうサミュエルは倒れてしまった。

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