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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第23章 合衆国本土奪還作戦
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第1411話 将軍を追い詰める

 将軍型のレッドラムが次元の裂け目を使って、サミュエル中尉を岩場の外へ落としてしまった。


 これを見ていたリカルド准尉が、驚きで目を丸くしながら声を上げた。


「ち、中尉!? 冷静にって言ったのに、言わんこっちゃない……!」


「サァ、次ハオ前ダ。ソノ次ハ、オ前ノ仲間達ダ。サッサト片付ケテ、コノ大陸ヲグラウンド・ゼロニ破壊サセル。ワザワザ相手ヲシテヤルノモ、コレデ終ワリダ」


 言いながら、将軍型のレッドラムはゆっくりとリカルドに向かって歩き始め、その間合いを詰めていく。


 ……その時だった。

 将軍型の背後で、何かが小さく爆発したような音がした。


「ン……何ノ音ダ?」


 正面のリカルドに注意しつつ、背後を振り返る将軍型。


 そこには、サミュエルがいた。

 先ほど、将軍型が間違いなく落としたはずのサミュエル中尉が。


「何ッ……!?」


 今度は将軍型が驚愕した。

 慌ててサミュエルにアサルトライフルの銃口を向けようとする。


 だが、サミュエルも素早く動く。

 彼の足裏で小さな爆発が起こり、それと同時に将軍型に向かってまっすぐ跳躍。まるで撃ち出された大砲のように速く、まっすぐに。


「アノ爆発ハ……!」


 今のを見て、将軍型は察した。

 サミュエルは”溶岩(ボルケーノ)”の権能により、炎の異能を(つかさど)る能力を得ている。彼はこれを利用して、空中で小さな爆発を発生させつつ跳躍し、その爆発の勢いによって落下から復帰したのだ。


 その爆発跳躍を、今度は将軍型との間合いを詰めるのに使用した。

 先ほどの刺突以上の速度で、サミュエルは将軍型の懐に潜り込む。


「貴様、異能ヲ真価ヲ隠シテイタカ!」


「今度こそ、逃がさんぞ!」


 サミュエルの高周波ブレードが振るわれる。

 まばたき程度の一瞬のうちに、三回の斬撃を繰り出した。


 将軍型は後ろに跳んで、サミュエルの刃から逃れようとする。

 そのせいで真っ二つとはいかなかったが、しっかりと傷を付けることはできた。


「グゥゥゥッ!!」


 受けたダメージに苦悶の声を漏らしつつ、将軍型はサミュエルに対物ライフルの銃口を向けて反撃を試みる。


 だが、それよりも早く、リカルドが横からサブマシンガンを射撃。冷気を帯びた弾丸が将軍型の対物ライフルの銃身に命中し、対物ライフルが凍り付いた。


 その状態で対物ライフルの引き金を引いたので、銃身内部から破裂するような形でライフルは暴発。将軍型は怯み、同時に対物ライフルを失った。


「オノレ……!」


 将軍型は、残されたアサルトライフルでリカルドを射撃しようとする。


 しかし、リカルドに目を向ければ、その隙にサミュエルが接近。

 再び将軍型を斬りつけ、ダメージを与える。


 将軍型がサミュエルを追い払おうとすれば、今度はリカルドが攻撃。冷気の弾丸や吹雪で、将軍型を氷漬けにしようとする。


 炎の異能と氷の異能による、息もつかせぬ連続攻撃。

 将軍型に逃げる暇を与えない。


「セントルイスでの戦闘データの通りですね! 将軍型は接近戦に弱い! このまま冷静に、しかし確実に攻撃を続ければ、押し切れそうです!」


「ああ。その戦闘データを手に入れるのに、オフィーリアにテリー、そして私の部下であるカークも犠牲になった。連中の戦いを無駄にはしない。仇を討たせてもらうぞ、将軍型!」


 サミュエルが一気に踏み込み、ブレードを振るう。

 炎の剣閃が、瞬く間に七つ(はし)った。


 それと同時に将軍型のアサルトライフルがバラバラになり、将軍型自身も大きく出血。


「ヌァァァッ……!」


「これは……やりましたか!?」


「まだだ! アサルトライフルを盾にして斬撃を耐えられた! だが、あと一息だ! 畳みかけるぞ准尉!」


「了解しました!」


 サミュエルの指示を受けて、リカルドはサブマシンガンを射撃。

 冷気を帯びた弾丸が、将軍型の頭部を狙う。


 今の将軍型は武器を失い、丸腰だ。

 先ほどのように、アサルトライフルでリカルドの弾丸を撃ち落とすことはできない。


「ナラバ……!」


 将軍型は次元の裂け目を開き、リカルドの弾丸はその裂け目の中に吸い込まれてしまう。


 そして、裂け目の出口からリカルドの弾丸が吐き出され、その先にはサミュエル中尉が。


「仲間ノ弾丸デ死ヌガイイ!」


「同じ手を二度も食うか!」


 サミュエルはブレードに炎を宿し、その刀身でリカルドの弾丸をガード。


 すると、熱気と冷気がぶつかり合ったことによって水蒸気が発生。

 サミュエルの姿が、真っ白な煙の中に隠れる。


「ヌ、煙幕ヲ……!」


 水蒸気の向こうからサミュエルが飛び出てくると予想し、将軍型は身構える。


 将軍型の予想通り、サミュエルは水蒸気の向こうから飛び出てきた。

 ただし、予想していても目で追えないくらいの速度で。

 爆発跳躍を使用し、スピードを引き上げたのだ。


「クッ……!」


 将軍型は完全な反射任せで、飛び掛かってきたサミュエルめがけて右腕を振るう。サミュエルは必ず正面から突っ込んでくるから、そこにタイミングを合わせようとした。


 しかし、サミュエルは将軍型の(わき)を通過し、将軍型の右腕をくぐり抜けて、彼の背後へと回り込んだ。


 将軍型と背中合わせの形で背後を取ったサミュエルは、振り向かず、ブレードを逆手に持って、将軍型の腰あたりを狙って剣を突き出した。


「取った! これで終わりだっ!!」



 ……サミュエルも、リカルドも、そう確信していたのだが。



 ガッ、とサミュエルのブレードが止められた。

 ブレードの切っ先は、まだ将軍型の背中に突き刺さっていない。


「む!? なんだ、受け止められた……!?」


 まだ将軍型と背中合わせの体勢のため、サミュエルは何が起こったのか、なぜ自分のブレードが止められているのか確認できていない。


 自身の右わきから覗き込むような形で、サミュエルはなぜブレードが止められたか確認する。


 確認したサミュエルは、本日で一番、驚愕した。


 将軍型が、サミュエルの方を振り向かず、後ろに回した左手の人差し指と中指で白刃取りするように、サミュエルのブレードを受け止めていたのだ。


「何……だと……!?」


「異能ヲ隠シテイタノハ、オ互イ様トイウコトダ」


 将軍型がつぶやいた。

 そしてサミュエルの方へ振り向き、右の拳を振るう。


 将軍型の右拳が、サミュエルの(ほほ)に直撃。

 サミュエルは車にはねられたかのように吹っ飛ばされた。


「ぐぁぁっ!?」


「中尉っ!?」


 リカルドはサミュエルに呼び掛けるが、いま将軍型から気を逸らすのは(まず)いと瞬時に判断し、再びサブマシンガンの銃口を将軍型に向ける。


 だが、それと同時にリカルドの目の前に、小さな次元の裂け目が開く。


 そして、その裂け目の向こうから、将軍型の赤い拳が突き出てきた。

 リカルドは回避が間に合わず、殴り飛ばされてしまう。


「うぶっ!?」


 大きく()()りながら吹っ飛ばされ、その勢いでリカルドは宙返り。うつ伏せに地面に叩きつけられてしまう。


 二人を殴り飛ばした将軍型は、静かに告げた。


「思惑通リニ引ッカカッテクレテ(うれ)シイゾ。私ハナ、銃撃ヨリ肉弾戦ノ方ガ得意ナノダ」

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