第1408話 攻撃結果
日向がグラウンド・ゼロの超震動エネルギーめがけて”星殺閃光”を放とうとしている。
将軍型のレッドラムがこれを妨害しようとしたが、サミュエル中尉とリカルド准尉が食い止めてくれた。これで、もう邪魔しようとしてくる敵はおらず、後はただ全力で繰り出すのみ。
超熱に晒され続け、すっかり溶岩地帯と化した浮遊岩石の上で、日向は見上げるほどに長大な光剣となった『太陽の牙』を振り下ろした。
「太陽の牙……”星殺閃光”ッ!!」
巨大な灼熱の光線が、振り下ろされた『太陽の牙』から放たれた。
光線は巨大ではあるのだが、それでもグラウンド・ゼロの超巨大な拳と比べれば、爪楊枝のようなか細さでしかない。
だが、この超常の火力の前に、規模の差など関係ない。
日向が放った”星殺閃光”は、グラウンド・ゼロの超震動エネルギーど真ん中を貫き、その先の拳も貫き、そのずっと先にある肘まで貫いた。
「g....o.....o.....」
グラウンド・ゼロがうめき声を上げた。
地響きかと思うほどの、野太く大きなうめき声だった。
日向は保有していた全エネルギーを撃ち尽くした。
自身が発した熱で形成された溶岩地帯に焼かれる前に、大鷲のマモノのユピテルに回収してもらう。
「ケェェン!」
「悪いなユピテル。ドゥームズデイに引き続いて、今回もよろしくな」
ユピテルの背中に乗った日向は、仲間たちと合流しに向かう。今の日向は『太陽の牙』の炎を回復させている最中なので、戦力としては数えられないくらいに弱体化しているが、それでも仲間たちの周囲の警戒や、敵の注意を引き付ける陽動など、弱いなりにできることはある。
「……っと、そうだ。攻撃の成果を確認しておかないと。グラウンド・ゼロは……超震動エネルギーはどうなった?」
日向は、グラウンド・ゼロの右拳に目を向けてみる。
”星殺閃光”で貫かれた超震動エネルギーは、核の部分を撃ち抜かれたからか、次第にその形が保てなくなっていき、やがて崩壊。
日向のたった一発の攻撃で、北アメリカ大陸全土を粉砕するエネルギーを消滅させたのだ。
超震動エネルギーのついでに貫いたグラウンド・ゼロの右拳は、中心部分が大きく溶解しているものの、大部分はいまだ健在。山を半壊させるほどの超熱だったが、山よりも圧倒的に巨大なグラウンド・ゼロの拳を焼き尽くすには至らなかったようだ。
「拳まではいけなかったか。けど、これは思った以上の成果だぞ。俺一人でグラウンド・ゼロの超震動エネルギーを始末できた。これなら皆に後始末をしてもらう必要もない。ここから先の行動に余裕ができる」
その後、日向はユピテルの背中から飛び降りて、仲間たちのもとへ合流。
「日向くん、お疲れさま! 今回もすごい火力だったね!」
「一撃であの超震動エネルギーを消滅させるとはな。そこまでいけるとは思っていなかったが、この誤算は嬉しさの方が勝る。よくやった日向」
「なんか、前よりもヒューガの火力が上がってない?」
「ありがとう三人とも。じゃあ、ここからの俺はしばらく湿気たマッチくらいの火力しか出せないので、残りのレッドラムはよろしくお願いします」
「けッ、いざとなったらテメェをレッドラムに投げつけて人間ミサイルにしてやる」
仲間たちとやり取りを交わす日向だが、その一方でエヴァがグラウンド・ゼロの右拳に注目しているようだ。日向のことなどそっちのけである。
「どうしたエヴァ。あいつの拳に何かついてるのか?」
日向がそう声をかけると、エヴァはグラウンド・ゼロの方を見ながら、返事をした。
「エネルギーが……またグラウンド・ゼロの奥深いところから湧き上がってくるのを感じます。どんどん右拳に集まっていって……」
「……嫌な予感」
エヴァの言葉を受けて日向がそうつぶやいた、その瞬間だった。
グラウンド・ゼロの右拳に、再び超震動エネルギーが生成された。
先ほど日向が消滅させたものに負けず劣らずの大きさのエネルギー塊だ。
「あいつ! まだエネルギーを温存してたな!?」
復活した超震動エネルギーを見て、日向が悲鳴交じりの声を上げた。
日向は先ほど全力で”星殺閃光”を撃ったばかりなので、二発目はすぐに撃つことはできない。下手をすれば二発目を撃つより、あの超震動エネルギーが大地に叩きつけられる方が早いかもしれない。
すると、再びエヴァが口を開く。
「相変わらず膨大なエネルギーですが、先ほど日向が消滅させたものより、いくらか出力は落ちています。恐らくは、日向の”星殺閃光”が奴の拳を貫通し、腕の中まで焼いたため、超震動エネルギーを生成する『星の力』の伝達に支障が出ているのかもしれません」
「じ、じゃあ、あの二つ目の超震動エネルギーは、地上に落ちても問題なさそう?」
シャオランがそう尋ねるが、エヴァは首を横に振った。
「大陸全壊まではいかないでしょうが……それでも半壊まではいくと思います。そして、それだけの衝撃が大地を奔れば、あの……機密兵器開発所でしたか? あそこにいる人たちをはじめとして、地上に残っている人たちが危ないです」
「そ、そっか。じゃあやっぱりどうにかするしかないか……!」
「幸いな点は、先ほどよりも出力が落ちている、つまり一回目よりも打ち消しやすいということです。これなら日向の”星殺閃光”に頼らずとも、私たちが全力で攻撃し続ければ、同様に消滅させられるかもしれません」
「けどその前に、邪魔な連中を掃除しておいた方がいいぜ」
日影がつぶやく。
いつの間にか、多数のレッドラムが六人を取り囲んでいた。
だが、六人は怯まない。
ここにいるレッドラムに目付きはいない。
通常個体のレッドラムであれば、日向はともかく、彼以外の五人の敵ではない。
「この場にいるレッドラムを速やかに掃討し、グラウンド・ゼロへの集中攻撃に移るぞ」
「りょーかいです!」
本堂と北園のやり取りを号令として、日向を除く五人が、レッドラムめがけて一斉に攻撃を開始した。
そして冷却時間中の日向は、皆の戦闘を見守りつつ、同時に周囲を見回して、何かを探している様子だった。
「将軍型のレッドラムはアメリカ兵のお二人が抑えてくれている。光剣型のレッドラムは未だに姿が見えない。となると、いま一番警戒するべきはスピカさん型のレッドラム。けれど、そのスピカさん型も姿を消した。どこにもいない。いったいどこに行ったんだ……?」