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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第23章 合衆国本土奪還作戦
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第1401話 死角無き鋼竜

 ジャックを助けた本堂がファフニールに噛み潰されそうになっており、レイカとマードックにはファフニールの尻尾が振り下ろされようとしている。


 まずはジャックたちの様子……を、この部屋の片隅で見守っていた北園とハイネとスピカの様子。


 非戦闘員のハイネを守るため、北園は球状のバリアーを展開して、戦闘ドローンのホーネットからの銃撃を防いでいた。


 その最中、彼女らの目の前でジャックがファフニールに噛み殺されそうになり、それを助けた本堂が、今度はファフニールの咬合力によって動けなくなってしまった。


「ど、どうしよう!? ホンドウがピンチだよ!? ジャックのせいで! ゴメンねウチのジャックが迷惑かけて!」


「ジャックくんやマードック大尉があらかじめ撃ち落としてくれたおかげで、ホーネットの数が減ってるね。北園ちゃん、今ならバリアーを解除して、キミが本堂くんを助けられるんじゃないかなー!?」


「そうだね、やってみようかな……!」


 本堂とジャックを援護するため、北園はバリアーを解除しようとする。


 だがその時、ファフニールが北園たちめがけて機関銃とミサイルを一斉射撃してきた。


「き、北園ちゃん! 援護やめ!」


「うん、りょーかいっ!」


 北園はバリアーの展開に集中し直し、ファフニールが放ってきた弾丸とミサイルを防御した。やはりファフニールの機関銃とミサイルはかなりの威力で、さすがの北園のバリアーと言えど、そう何度も受け切れるものではない。


「あ、あぶなかったぁ……。けど、あのファフニールって竜、すごい反応速度だよ。私、ほんのちょっとしか動かなかったのに、それを見逃さずに私の動きを牽制(けんせい)してきた……」


「後ろにいる敵にも反応が良いよねー。ホントに、実は目が複数あったりするんじゃないー!?」


 冷や汗をかく北園と、ファフニールのあまりの反応の良さに文句が出てしまうスピカ。


 ともあれ、これで北園は、本堂たちの援護に動くわけにもいかなくなってしまった。彼女一人なら弾丸やミサイルは回避できるかもしれないが、非戦闘員のハイネが無事では済まない。


 その二人の後ろで、ハイネは周囲を見回しながら、なにやらつぶやいていた。


「目が複数……複数か……。もしかして……」



 そしてこちらはジャックと本堂。

 本堂が両腕でファフニールの上顎を食い止め、右足で下顎を食い止め、その体勢のまま動けなくなってしまっている。


 時間にして二秒も満たない数瞬。

 ジャックは本堂を助けるための方法を閃き、実行に移す。


「ホンドウ! 一瞬だけ、ソイツの顎をこじ開けてやる! その隙に離れろ! いくぜ、”パイルバンカー”ッ!!」


 全身の筋肉を一ミリ秒のズレもなく連動させて放つ、ジャックの会心の右拳。これを、ファフニールの上牙を突き上げるようにして放った。


 ジャックが放った”パイルバンカー”は、何トンあるかも分からないファフニールの咬合力を一瞬だけ押し返すことに成功。その隙に本堂がファフニールから手足を放し、脱出に成功した。


 ファフニールから距離を取りつつ、二人はやり取りを交わす。


「今度は俺が助けられたな。感謝する、ジャック。しかし今の技は、大丈夫なのか? 確かお前への反動が(ひど)かったと記憶しているが」


「ああ、心配すんな。”生命(ライフメイカー)”の異能のおかげで、これくらいの反動なら再生させて帳消しにできる」


「成る程。これは一応褒め言葉だが、何ともお前らしい小狡(こずる)い異能だと感じる」


「いやホントに褒めてんのかそれ!?」



 ジャックと本堂が危機を脱した一方で、こちらはレイカとマードック。


 ファフニールの背後から接近し、弱点である背中に登ろうとしたが、その動きを察知されて、ファフニールが尻尾を振り下ろしてきた。


 超電磁を帯びた、太くて大きい鋼鉄の尻尾。

 直撃なぞしたら、まず命は助からない。


 そんな攻撃が、もうレイカの目の前まで迫っていた。

 今から回避は、とても間に合わない。


 ズガン、と音がした。

 ファフニールの尻尾が叩きつけられた音だ。


 しかし、レイカは尻尾に潰されてはいなかった。

 駆けつけたマードックが、シールドでファフニールの尻尾を受け止めて、レイカを守ってくれていた。


 マードックが立っている床が蜘蛛の巣状に砕けている。

 レイカを守るため、それほどの衝撃を受け止めてくれたのだろう。


「た、大尉ーっ!」


「ぬ、ぐぅ……!」


 感激の声を上げるレイカだが、マードックは苦しそうだ。

 それもそのはず。尻尾が帯びている電磁気が、シールドを通してマードックを現在進行形で焼いている。

 彼が使っているシールドには耐電性能もあるが、完全ではない。あまりにも強力な電撃は防ぎ切れない。


 このままではマードックの義体がショートしてしまう。

 電撃を受け続けたら、いずれ彼の唯一の生身部分である脳も危ういだろう。


「た、大尉! 今助けますね!」


 レイカはファフニールの尻尾の下から出て、その尻尾に”超電磁居合抜刀”を繰り出した。マードックを苦しめるこの尻尾を斬り飛ばすつもりだ。


「やぁぁぁっ!!」


 ……が、ファフニールは素早く尻尾を動かし、レイカの斬撃から尻尾を逃がしてしまった。


「う、嘘でしょ!?」


 そしてすぐさまファフニールが反撃に移る。

 動かした尻尾をそのままぶん回し、レイカとマードックを薙ぎ払いにかかった。


 これも回避は間に合わない。

 マードックが再びシールドを構え、レイカを庇うように尻尾を防御。


 しかしマードックは押し負けて、シールドごと弾き飛ばされてしまった。


「ぬぐっ……!」


 その弾かれたマードックをぶつけられるように、レイカも衝撃を受けて転倒してしまう。


「きゃあ!?」


「く……すまん。大丈夫か、レイカ」


「な、なんとか。尻尾を直接ぶつけられるよりは遥かにマシです。助かりました大尉……」


 二人は弾き飛ばされた拍子に、ファフニールの尻尾の範囲外まで出たようだ。呼吸を整えるために、いったんファフニールから距離を取る。


「九死に一生でしたね……。それより、さっきの見ました!? あいつ、明らかに私の居合を見てから、尻尾を逃がしましたよ!?」


「ああ、見たぞ。奴が何らかの方法で、自身の背後などを確認しているのはほぼ確定か。後は、その手品の種だが……」


 ……と、ここでレイカとマードックのもとに日向が合流。

 彼なりに必死に走って来たらしく、息を切らせている。


「はぁーっ、はぁ、やっとここまで来れた。それよりお二人とも、さっき危なそうな状況でしたけど、大丈夫でした!?」


「あ、日下部さん。はい、大尉のおかげでなんとか」


「それより日向、お前はファフニールの視野の広さについて何か――」


 マードックが日向に尋ねている途中だったが、ここで戦闘ドローンのホーネットが五機ほど乱入。レイカとマードックの二人を狙って機銃を撃ってきた。


『射殺。射殺』


『目標発見。攻撃セヨ』


「ちっ、一息入れる暇も与えてくれんか。連中の機銃は、私にとっては豆鉄砲も同然。私が一方的に撃ち勝てる。レイカは接射してくる機体を撃墜してくれ」


「分かりました!」


「日向、お前は私の後ろへ隠れていろ。撃たれるぞ」


「あ、はい。けど、あいつらの銃口、俺には一切向いていないような……」


 日向が小さくつぶやくが、もうマードックはホーネットとの撃ち合いを開始している。ホーネットの機銃をシールドで防ぎつつ、マードックはガトリング砲を撃ち返す。


 猛烈な勢いで連射される徹甲弾によって、四機のホーネットが一瞬で鉄くずに成り果てた。残り一機がマードックのシールドの裏側に回り込もうとしたが、これはレイカが瞬時に斬り捨てた。


 あっという間に五機のホーネットを殲滅したARMOUREDの二人。

 その時、それと同時に、ハイネから日向たち全員に向けて一斉通信が入った。


『みんな! 聞いて! ファフニールの視野が広い理由が分かったと思う!』

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