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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第23章 合衆国本土奪還作戦
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第1394話 デストラップダンジョン

 搬入口にて襲い掛かってきた戦闘マシンを、日向たちは全滅させた。

 皆そろって目立った負傷も無い、完全勝利である。


「今の私たちに、恐れるものなどほとんどありませんね! 先を急ぎましょう!」


 そう言って、レイカが正面の通路から敵が飛び出してこないか警戒しつつ先行。光剣型との戦いでダメージを受けていた心は、もうすっかり元の調子を取り戻したようだ。


 しかし、通路に足を踏み入れようとしたレイカを、ハイネが止める。

 レイカの服の背中部分を引っ張って強引に。


「あ、レイカ、ストップ!」


「わわっ、ハイネちゃん、どうし――」


 ……と、その時。

 レイカが通ろうとした通路の左右の壁に、無数の小さな穴が出現。

 そして、そのたくさんの小さな穴から、一斉に銃弾が発射された。


 もしもハイネが引き留めてくれていなかったら、今ごろレイカは左右からの銃弾でサンドイッチにされていたところだ。


「あ、あぶなぁ……!? ありがとうございますハイネちゃん。おかげで命拾いしました……」


「ホントに危なかったね……。前にこの施設に来た時に、案内役の人からチラって聞いてたんだ。ここには戦闘マシンの第一防衛線を突破してきた侵入者を仕留めるためのトラップがあるって」


「さっそくデストラップダンジョンたる所以(ゆえん)を見せつけてきましたね……。やっぱり私は後ろで大人しくして、素直に大尉や日下部さんに先頭を譲った方が良さそうです……」


 やや寂しそうに隊列の後ろへと下がるレイカ。

 そんな彼女に、ジャックが茶化(ちゃか)すように声をかけた。


「ドジなオマエじゃ、この先いくつ命があっても足りそうにねーな」


「むむっ。ジャックくんだって、いつもイノシシみたいに突撃してますし、せいぜい本物の野生のイノシシみたいにあっさりトラップに引っかかったりしないことですね」


 気を取り直して、一行は先に進む。

 先ほどの銃弾の罠は、装弾数が各穴につき一発だけなので、一度作動してしまえばそのまま通過できる。


 施設内には、数々の即死トラップが存在していた。


 センサーで侵入者を探知し、天井からギロチン状の大刃を落としてくるトラップ。

 これはマードックがわざと作動させて、その頑強な義体でギロチンを受け止めて破壊した。


 通ってきた通路の入口を高電圧のフェンスが塞ぎ、そのフェンスが後ろから迫ってくるトラップ。

 これは、超帯電体質の本堂がフェンスを受け止めて、その間に他のメンバーは安全圏まで脱出した。


 即死トラップの定番、幾本もの迫りくるレーザーが侵入者を焼き切ってしまうトラップ。しかも解除装置は、レーザー地帯をくぐり抜けた先にある。


 これの解除はジャックが担当。

 スライディング、ローリング、バク転などを駆使して、レーザートラップをくぐり抜けてみせた。


「よくやるよ、再生能力持ちの俺を突撃させた方が安全確実に突破できたのに」


 レーザーを突破してトラップを解除したジャックに、日向がそう声をかけた。


「やー、こういうトラップ見るの初めてだからよー、だったら一度、自分で体験してみてぇじゃん?」


「イカれてるわお前」


「よく言われるぜ。ついたあだ名の一つがクレイジー・ジャックってな」


「レーザーが隙間なく壁みたいに迫ってくる回避不可能パターンとかあったらどうしたのよ」


「そんときゃレーザーの発射装置を撃ち壊してたぜ。装置そのものは剥き出しだったんだから、ソレを壊しちまえばレーザーも撃てなくなるだろ」


「最初からそれをやるという発想は無かったのか」


「回避した方が楽しいじゃん?」


「イカれてるわお前」


 ともあれ、今のところは実に順調。

 対処を間違えれば即刻命にかかわるトラップの数々を、適切に回避できている。


 それというのも、ハイネがトラップの位置と種類をかなり正確に把握しており、それを事前に日向たちに教えてくれるからだ。おかげで日向たちはトラップが作動する前に、そのトラップへの対策を十分に講じてから挑むことができる。


「恐るべき罠も、位置と仕掛けが割れていれば恐れるに足らずだな。見事なものだ、ハイネ・パーカー」


 本堂がハイネを賞賛。

 ハイネも得意げに微笑みながら、本堂の言葉に返事。


「やっぱりさ、この国で最高の研究所なんだからさ、仕掛けられているセキュリティーも最高峰じゃん。ここに出入りしていた時に、ここのトラップの仕組みとかについても色々聞いてて、それで場所ごと覚えちゃってるんだよね。まぁ全部把握しきれてるわけじゃないから、過信は禁物だけど」


「ふむ、研究者としての熱烈な興味ゆえの情報量というわけか。そういえば、先程(さきほど)から何度か話に上がっているが、お前はこの施設に幾度か出入りしたことがあるそうだな。マモノ討伐関係か?」


「まぁそんなところ。ここの技術を吸収するために留学みたいなこともしてたし、キミたちを『幻の大地』に送った次元転送装置もここで開発されて、その時にも出入りしてたなぁ。あ、ここで作ったのは設計図だけで、組み立てはウチの基地でやったんだけど」


「そんな経緯があったのか。()(ほど)、この施設は俺が想像していたよりもずっと、この国にとって重要な場所のようだ」


「そういうことだね。あ、そこの通路、通るとシャッターで閉じ込められて毒ガスが出てくるようになってる。対処が難しいから迂回しよ」


 ハイネの言う通りに迂回ルートを進んでいると、通路の角の先から戦闘マシンが出現。四脚マシンのスパイダーが二機と、武装ドローンのホーネットが二機、そして人型マシンのガーディアンが一機だ。


 だが、この程度の戦力なら物の数ではない。

 スパイダーとホーネットは、北園が爆炎と雷撃で撃破。

 ガーディアンは、斬りかかってきたところを本堂が返り討ちにした。


「よーし、やっつけた! それにしても、出てくるのは戦闘マシンばかりで、レッドラムとかは出てこないね?」


 北園が首をかしげて、つぶやいた。

 その彼女の言葉にマードックが反応。


「それは私も気になっていた。てっきり、レッドラムが私たちを妨害するために、ここのセキュリティーを作動させたものだと思っていたが」


「地上でエヴァちゃんに気配を探ってもらったけど、その時も何も反応は無かったらしいんですよね。レッドラムがここのセキュリティーを作動させて、その後で逆にセキュリティーにやられちゃったとか?」


「有り得ない話ではないが、レッドラムは一体一体が異能を使用する強力な怪物だ。あの程度のマシンに後れを取るとは思いにくいが。何よりも、レッドラムがマシンと戦闘したと思しき戦闘跡も残骸も見つからない」


「あーたしかに。通常個体のレッドラムでも、普通の人間じゃまず勝てないくらい強いですもんねー。今は私たちの能力が強くなりすぎて、最近じゃ通常個体はすっかり雑魚敵扱いだったけど」


 何気ない疑問だったが、一度気になりだすと、なかなかどうして止まらない。

 (つい)にはレイカがアカネに切り替わり、彼女の優れた嗅覚で、一度レッドラムのニオイを探ってみることに。


(『すでに死んでいるからエヴァちゃんがレッドラムの気配を見つけられなかった』のだとしても、死んでいるなら血の匂いがするはず。どう、アカネ? 何か見つかりそう?)


「レッドラムかは分からないけどさ、向こうからひっどいニオイがするよ……。血と、それから腐敗臭かな……。あぁイヤだ、血の匂いはともかく、腐敗臭はダメだ。鼻が曲がりそう。アタシはさっさと引っ込ませてもらうよ」


 そう告げて、アカネは早々にレイカに戻った。

 彼女が指し示した先にあったのは、研究者たちの居住スペースだった。

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