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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第23章 合衆国本土奪還作戦
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第1380話 星すら震える大咆哮

 巨竜型のレッドラムが、機関銃型のレッドラムを食べてしまった。


 目の前で機関銃型のレッドラムが食われるところを目撃したエヴァ。その彼女のもとに、右方向から日向と日影も走り寄ってくる。


「エヴァ! 機関銃型は!?」


「巨竜型が食べてしまいました……」


「そうか、食べたのか……」


「野郎、またパワーアップしやがるのか」


 その日影の言葉の通り、巨竜型の身体にエネルギーがみなぎっているようだ。最初のパワーアップの時と比べて身体的な進化はほとんど無いが、間違いなく強くなっているのが見て分かる。


 ともかく、こうなってしまったからには仕方ない。


 巨竜型は進化による急激なパワーアップでスタミナを消費したのか、まだ動く様子がない。

 この隙に少しでもダメージを稼いでおこうと考え、日影は”オーバーヒート”を使用。巨竜型に突撃して、その眉間にミサイルのように激突する。


「おるぁぁぁッ!!」


 ……だがこの時、同じく巨竜型を見ていた日向は、巨竜型が進化で疲弊しているというより、力を溜めているように見えた。


「日影! ちょっと待……」


 日向は急いで日影に声をかけるが、遅かった。


 日影と巨竜型の間合いがほぼゼロに縮まった瞬間、巨竜型が咆哮を上げた。今日一番の、大爆発のような大咆哮だ。


「GUUUUOOOOOOOAAAAAAAAAAAAAA!!!」


 その咆哮が響き渡った瞬間、周囲のビルの窓ガラスは一斉に粉砕され、巨竜型の周囲の瓦礫は吹き飛び、巨竜型に接近していた日影も(はじ)き飛ばされ、近くのビルの窓の中に叩き込まれた。


「ぐぅぅッ!? なんだ今の……音の爆弾でもぶつけられたみてぇな……」


 強烈な衝撃と轟音によって、日影の意識が朦朧(もうろう)としている。”再生の炎”はまだ稼働しているが、すぐには立てない様子だ。


 日向とエヴァは巨竜型と距離があったため、咆哮で吹っ飛ばされはしなかったものの、その爆音に思わず耳を塞ぎ、その場から動くことも忘れてしまっていた。


「くぅ……鼓膜どころか脳みそまで破裂しそうだ……。おまけにこの周囲の破壊。なんだったんだ今の雄たけびは……」


「どうやら、咆哮に”地震(アースクエイク)”の震動エネルギーを込めていたようです。頭がくらくらします」


「次ハオ前達ダ!」


 巨竜型が右前足を叩きつけてくる。

 この右前足には、砂色のスパークが(はし)っている。

 ”地震(アースクエイク)”のエネルギーだ。叩きつけると同時に震動を引き起こす。


「震動はジャンプしないと、またこっちの足をやられるな……!」


 日向とエヴァはそろってその場を離れ、巨竜型の右前足叩きつけを回避。右前足が落ちてきたら震動が発生したので、同じく二人そろってジャンプして震動を避ける。


 巨竜型は、今度は左前足を振り抜いて日向たちを追撃。

 日向たちはさらに走り続け、左前足の攻撃範囲から逃れる。


 巨竜型から一定の距離を取ったところで、エヴァが足を止めて反撃。


「吹き荒べ……”セトの暴風”!!」


 エヴァの杖の先端から、濃い灰色の猛烈な竜巻が発射される。巻き込んだもの全てをミキサーのように粉砕してしまうであろう風の破壊光線だ。


 これに対して、巨竜型は大きく息を吸い込み、また先ほどの”地震”の咆哮を放った。


「GUUUUOOOOOOOAAAAAAAAAAAAAA!!!」


 この咆哮に押し負けて、エヴァが発射した竜巻は瓦解し、霧散(むさん)してしまう。巻き添えで、周囲のビルの窓ガラスが再び一斉に砕け散った。


「向こうが炎のブレスだったら撃ち負けなかったのですが、咆哮で克服してしまいましたか……!」


 巨竜型の咆哮は、今や衝撃波も同然だ。瞬間的な威力と物理的破壊力は炎のブレスよりさらに高い。だからこそ、怒涛の勢いで迫ってきたエヴァの竜巻も押し返してしまったのだろう。


 巨竜型が両前足を持ち上げて、日向たちを踏みつけにかかる。

 この両前足にも砂色のスパークが宿っている。


 日向とエヴァは再び退避し、同時にジャンプして踏みつけと震動を回避。

 踏みつけが落ちてくると、道路に巨大な蜘蛛の巣状のひび割れが入り、近くのビルが根元から崩れ落ちた。震動で基礎を破壊されたのだろうか。


 ここで日向が(きびす)を返し、巨竜型に走り寄る。それと同時に、『太陽の牙』が凄まじい熱を発し、十メートル近い刃渡りの、長大な緋色の光剣を形作る。


「太陽の牙、”最大火力(ギガイグニート)”ッ!!」


 自身の最強の大技を発動した日向は、作り出した光剣を右から左へ大きく振り抜いた。狙いは巨竜型の頭部。彼の顔を真っ二つにしてやる勢いで。


 しかし、巨竜型は素早く後退して、日向の灼光の刀身から逃れてしまう。その反応速度は、ここまでの巨竜型との戦闘全体で見てもトップクラスだった。


「やっぱり”最大火力(ギガイグニート)”は警戒されてるか! もう少し動きを鈍らせないと駄目だな……」


 巨竜型が攻撃範囲から出てしまったので、日向はいったん”最大火力(ギガイグニート)”を解除。この技は発動させているだけで日向を焼き続け、”再生の炎”のエネルギーもごりごりと消耗してしまう。


 日向の攻撃を回避した巨竜型は、再び日向たちに接近。

 大きな歩幅で走り寄り、その勢いを乗せて鼻頭の角で突き刺しにかかる。


 この角にも”地震”のエネルギーである砂色のスパークが(はし)っている。この角を回避しても、角が地面に当たれば地震が発生し、日向たちの足元を攻撃してくるだろう。


 日向とエヴァは後ろへ飛び退き、角と地震を同時に回避。

 巨竜型の角は道路に深く突き刺さり、日向たちの足元に大きなヒビが入る。


 すると巨竜型は、その角を引き抜くかと思いきや、再び角に砂色のスパークを(まと)わせて、逆にさらに深く道路に突き刺した。


 飛び退きから着地した日向とエヴァの足元がずん、と揺れる。

 道路のヒビ割れはさらに深く、そして小さく盛り上がる。


「これはやばい……!」


「急いでここから離れなければ……」


「逃ガサン! GUUUOOAAAAAA!!」


 巨竜型が、道路に突き刺した角をそのまま振り上げる。

 前方の道路五十メートル、剥がされたアスファルト、それと一緒に日向とエヴァが、宙を舞った。


「うおおおおお!?」


「ひゃ……」


 見上げるほどに高く打ち上げられた日向とエヴァ。

 落ちてくるその二人を狙いながら、巨竜型は口の中に炎を(たくわ)える。


 ”怨気”の火炎ブレスの用意だ。

 落下地点を狙われたら、日向たちは回避のしようがない。


「今度コソ(ちり)一ツ残サズ焼キ尽クシテクレルッ!!」

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