第1378話 機関銃型のレッドラム
視点は日向、日影、エヴァの三人と、巨竜型のレッドラムとの戦いへ。
巨竜型が急降下してきて、道路をぶち抜いて大穴を開けた。
日向たちはその穴の中に落ちてしまい、巨竜型は一足早く穴の外へ。
そして巨竜型は、穴の外から日向たちを覗き込みつつ、炎のブレスの用意をしていた。この逃げ場のない穴の中に火炎を吹き込み、日向たちを蒸し焼きにするつもりだ。
「やべぇぞコレどうするんだオイ!?」
「ええと、それじゃあエヴァ! あいつの足元を崩せるか!?」
「やってみます! ”ティアマットの鳴動”……!!」
エヴァが前方に向かって跳躍し、巨竜型のレッドラムが立っている崖の下を、震動エネルギーを宿した杖で殴打。
そのエヴァの一撃で巨竜型の足場に衝撃が走り、崩壊し始める。
巨竜型も崩壊する道路に足を取られ、体勢が大きく崩れる。
「ヌゥ……!?」
このまま巨竜型も大穴の中へ落ちてくれれば反撃のチャンスだったのだが、巨竜型は背中の翼を羽ばたかせながら跳躍し、崩れる足場から逃れてしまう。
そして、少し地面から浮きながら、巨竜型は改めて炎のブレスの発射体勢。今度こそ日向たちを蒸し焼きにするつもりだ。
しかし、猶予は十分に稼げた。
日影が”オーバーヒート”で穴の中から飛び出し、そのまま爆速で巨竜型の顔面に激突。
「おるぁぁッ!!」
「GUUOOOOO!!」
日影の攻撃で再び体勢が崩れ、巨竜型はやむなく着地。
ターゲットを日影に変更し、空中にいる彼に炎のブレスを吐き出す。
日影は”オーバーヒート”による飛行を続行し、ブレスを回避。
彼の背後に建っているビルの外壁に灼熱の火炎が叩きつけられる。
その一方で、日向とエヴァは大穴の中から脱出。日影が巨竜型を引き付けてくれていたので、安全に這い上がることができた。
「”天女の羽衣”。この風のオーラで私と日向を空中浮遊させ、穴の中から脱出します」
「助かる、エヴァ。さて、ここからどうしようか。どうすれば、あの巨竜型を効率よくやっつけることができるかな」
「それを考えるのが、あなたの主な仕事です。期待しています」
「はいはい、期待されました……おや?」
エヴァの能力で地上に降り立った日向は、視界の左側、ビルの陰に何かを発見。
それは、新手の目付きのレッドラムだった。
真っ赤なガトリング砲を抱えている、機関銃型のレッドラムである。大柄な体格で、フルフェイスのヘルメットを被ったような頭部をしており、ひび割れから右の瞳だけが見える。
「GYAHAHAHAHAHAHA!!」
「またやばそうなのが出てきたな!?」
「日影が巨竜型を引き付けてくれている間に、まずはあの目付きから始末しましょう、日向!」
エヴァの言葉に日向はうなずく。いま日向たちが相手にしている巨竜型のレッドラムは、他の目付きのレッドラムを食らってパワーアップする特性がある。あの機関銃型のレッドラムまで食べられてパワーアップされたら、日向たちの状況はより厳しいものになってしまう。
機関銃型のレッドラムが、抱えているガトリング砲の銃口を日向たちに向けた。
日向とエヴァは、それぞれ左右に散開。
同時に、機関銃型のガトリング砲が火を噴いた。
ガトリング砲の銃弾は、どうやらただの銃弾ではないようだ。着弾地点でグレネードランチャーの榴弾くらいの爆発が起こる。銃弾として成形された炎のエネルギーを撃ち出しているらしい。
そんな爆発する銃弾を、ガトリング砲特有の超連射力で撃ちまくってくるのだから、その破壊規模は凄まじい。銃口は日向とエヴァの二人のうち、日向を狙っており、着弾による爆発が日向を追いかけてくる。
「あんなの喰らったら一秒でミンチだな……! ”再生の炎”があるから死んでも復活はできるけど、復活には時間がかかる。その間に、残った日影とエヴァには負担をかけてしまうことになる。つまり、どのみち死ねない!」
歯を食いしばって全力疾走し、ガトリング砲の銃弾から逃げる日向。走り始めた地点から大きく弧を描くように、機関銃型のレッドラムとの距離を詰めていく。
日向の逆サイドには、エヴァがいる。
一足早く機関銃型のレッドラムに接近し、”地震”の震動エネルギーを込めた杖で殴りかかった。
「吹っ飛ばしてあげます……!」
「GYAHAHA!!」
だが、機関銃型は大きく飛び退いて、エヴァの攻撃を回避。
着地を待たず空中で、エヴァめがけてガトリング砲を撃ってきた。
エヴァは異能で地面を隆起させて防護壁にしながら、その場から離れる。
ガトリング砲の銃弾は、エヴァが作り出した岩壁に次々と命中し、あっという間に崩壊させてしまった。恐るべき威力だ。
機関銃型がエヴァから逃げたことで、エヴァと同じく接近しようとしていた日向とも距離が開いてしまう。機関銃型は再び日向をターゲットとして定め、ガトリング砲を構える。
「これはまずい……」
銃弾ごと焼き尽くすため”紅炎奔流”の用意をする日向。この炎のエネルギーは巨竜型のレッドラムに回したかったが、背に腹は代えられない。
……と、その時だった。
空からゴロゴロと音が鳴り、直後に空が爆発するような音。
それと全く同時のタイミングで、機関銃型に雷が落ちてきた。
「GYAAAAAAA!?」
落雷が機関銃型に直撃。
こんな芸当で攻撃を行なう者など、エヴァしかいない。
「ナイスエヴァ! おかげで”紅炎奔流”を温存できた!」
そう言って、日向は改めて機関銃型との距離を詰めて、トドメを刺しにかかる。
しかし、機関銃型は日向の足元を狙って発砲。
日向の目の前で次々と爆発が起こり、思わず足を止めてしまう。
「わわわわ……!」
そして日向を足止めすると、機関銃型のレッドラムは日向たちに背を向けて、ビルとビルの間の路地裏に入って姿を隠してしまった。
「GIGIGI……!」
「あ、逃げた!」
「お任せください。あんな場所に逃げ込んだところで、私の落雷からは逃れられません」
日向にそう伝え、エヴァは再び落雷攻撃の準備。
あの機関銃型の遠距離火力は、放置しておいたら巨竜型との戦闘で横槍を入れられ、大きな被害を被る恐れがある。確実に仕留めなければならない。
ところが。
日向は三秒ほど考え込んだ様子を見せ、いったんエヴァを制止した。
「いや、落雷はちょっと待った、エヴァ」