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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第23章 合衆国本土奪還作戦
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第1369話 理解の外側

 ミオンと光剣型のレッドラムが戦闘を繰り広げている。


 その様子を、ミオンによって光剣型から助けられたサミュエル、リカルド、ルカンの三人は、ミオンたちを追いかけながら観察していた。


 観察しているというより、正確には追いかけて援護に入ろうと考えているのだが、二人の戦闘があまりにも激しく、おまけにこの西エリア中をバトルフィールドにするほどの高機動戦闘なので、見失わないように追いかけるので精いっぱいという状況である。


「いやぁ、やべぇなあの二人。我が国の(アメリカン)コミックのヒーロー対ヴィランのバトルじゃん完全に。中尉とリカルドも、よくあんな化け物相手にたった二人で持ち(こた)えてたよホント」


「我が事ながら、俺自身もそう思ってしまうな。よくあんなのを相手にして生き残れたものだ。だが、げに恐るべきは、あのミオンという女だな。あの光剣型と互角どころか、今のところ押しているぞ」


「オレから見れば、中尉やARMOUREDの連中もたいがい化け物ですけど、上には上がいるもんなんスねぇ……」


 走りながら、やりとりを交わす二人。


 その傍らで、リカルドもまたミオンの戦いぶりを見て、一人で衝撃を受けていた。


「本当に、化け物だな……。そうとしか言いようがない……。冷静に考えて、()よりもよっぽど……」


 僕よりもよっぽど。

 その言葉の通り、リカルドもまた、かつて化け物と呼ばれたことがある。

 ただし、実の家族からである。


 リカルドは、母の胎内にいる時から超能力者だった。

 そして不運なことに、昔は能力の制御ができない人間だった。


 その結果、リカルドは母親から産み落とされる際、無意識に発動させてしまった”凍結能力(フリージング)”で、母親を内側から凍らせてしまう。


 幸い、リカルドの母は、母としての愛と意地で、実の子により体内から凍らされながらもリカルドを出産。


 だが、内臓を凍らされたことで身体機能に深刻な不全が生じ、リカルドの出産から間もなく、リカルドの母は死去してしまった。


 リカルドの父は愛妻家で、愛する妻を殺した実の息子を「得体の知れない能力を持った化け物」と呼んで忌避(きひ)した。


 リカルド自身も、どうしようもなかったとはいえ母を死なせてしまったことはひどく悲しみ、化け物と呼ばれても仕方ないと感じていた。


 しかし同時に、化け物なんて呼ばれたくないという気持ちも存在していた。


 自分は、世間一般のイメージである「化け物」とは違って、言葉はちゃんと通じるし、良い事と悪い事の区別もつくし、喜怒哀楽の感情だってちゃんとある。誰かと一緒に笑い合えるし、誰かと一緒に悲しみ合える、ちょっと他人とは違う能力を持っているだけの、れっきとした人間だ。


 そう思っていた。

 そして、その心は今でも変わらない。


 だが、今。

 リカルドは、自分を化け物と呼んだ父親の心が、なんとなく分かったような気持ちだった。


「言葉が通じるとか、気持ちが通じるとかじゃなくて、人間は、自分の理解から完全に外れた存在なら、冷静さを奪われて、なんでも化け物と思ってしまうのかな……」


 人智を超えたミオンの戦闘力を見て、リカルドはそんなことを思っていた。



 ミオンと光剣型のレッドラムの戦闘は続いている。


 ミオンとの距離を詰めながら、次々と斬撃を放ってくる光剣型のレッドラム。光剣のリーチを活かして、ミオンの拳がギリギリ届かない間合いをキープしている。


 光剣型が一太刀振るうごとに、ミオンは後ろへ大きく飛び退いて回避。これくらい大きな動作で回避しなければ、斬撃の余波によって、刀身を完全に避けても斬撃を受けることになってしまう。


 すると、ここで光剣型がひときわ速く動く。

 放たれた矢のような速度でミオンとの間合いを一気に詰め、右の光剣で袈裟斬りを放った。


 対するミオンは、この光剣型の動きに素早く反応。

 剣を持つ光剣型の手首を取り、足を払い、光剣型を投げ飛ばした。


「はいっ!」


 地面を転がされる光剣型。

 受け身を取って立ち上がった瞬間、ミオンの”火の練気法”のサッカーボールキックが叩き込まれる。


「はっ!」


 光剣型は吹っ飛ばされ、その先にある高層ビルのエントランスのガラス戸に叩きつけられ、ガラス戸は粉々に粉砕。光剣型もエントランス内部へ。


 強烈な一撃を受けたはずの光剣型だが、またすぐに立ち上がった。

 ミオンも再び光剣型に接近し、追撃の体勢。


 ミオンの接近に合わせて、光剣型は立ち上がりながらの斬り上げを繰り出した。


 この斬り上げを、ミオンは水の練気法”流水”で流し、ガラ空きになった光剣型のボディに蹴り上げを喰らわせる。


「やぁっ!!」


 蹴り上げられた光剣型は、エントランスの天井に叩きつけられた。光剣型を中心として、天井にクモの巣状の大きなクレーターができる。


 さらにミオンは、間髪入れず追撃。

 自身の右手に”風の気質”を凝縮。

 その右手を、天井の光剣型に向かって突き出した。


「”如来神掌”!!」


 ミオンの手から巨大な衝撃波が発せられ、天井は一撃で崩壊。衝撃波の余波はどんどんビルを昇って行き、七階までの窓ガラスが一斉に割れる。そして衝撃波に巻き込まれた光剣型は、その衝撃波と共に十階まで打ち上げられて、ようやく止まった。


 さすがの光剣型も、今のは効いたようだ。

 大ダメージを受けて、すぐには立ち上がれずにいる。


「損傷甚大。コレ以上ノ被弾ハ危険……」


 ……と、光剣型がつぶやいている間に、彼が打ち上げられて開いた床の穴からミオンが飛び出してきた。風の練気法”飛脚”で一階からここまで飛んできたのだろう。


「限界、近いみたいね?」


「逃走困難。戦闘続行」


 光剣型は表情も声色も変えず、淡々(たんたん)とそう告げて、再びミオンに向かって戦闘態勢を取った。あまりにも淡々とし過ぎて、まだミオンを出し抜く逆転策を持っているのではと感じさせるほどであった。

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