表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第23章 合衆国本土奪還作戦
1394/1700

第1361話 調子が悪い

 スピカ型のレッドラムの”念動力(サイコキネシス)”を受けて、マードックが無力化されてしまった。


 現在、マードックはスピカ型の足元に転がされている。彼は脳が無事な限り、義体をどれだけ破壊されても死に至ることはないが、このままでは彼の脳まで破壊されるだろう。


 そこへ、ジャックが援護に入った。

 スピカ型の右から走り寄り、殴りかかる。


「うおおおッ!!」


「それは悪手でしょー。仲間がやられて気が動転したかなー?」


 スピカ型が右手をジャックへ向ける。

 マードックにやったのと同じように、ジャックの義体も故障させるつもりだ。


 しかしその時、スピカ型がハッとした表情を見せる。


「この少年……心が読めない? いや、心が()()。そういえば、最初に戦った六人の兵隊さんたちの中に、霧で幻影を作り出せる能力者がいたね……!」


 スピカ型の言う通り、この走り寄ってきたジャックは、ローガンチームのカイン曹長が”濃霧(ディープミスト)”の能力で生み出した幻影だ。マードックが倒れたのを見て、ローガンチームも戦闘に復帰した。


 そして、幻影のジャックの反対側、スピカ型の左方向から、同時に本物のジャックも走り寄ってきていた。彼の必殺技、”パイルバンカー”の構えを取りながら。


「もらったぁぁッ!!」


 ジャックの鋼の拳が突き出され、スピカ型のバリアーに激突。

 拳は、先ほどマードックが殴りつけてヒビを入れた箇所に命中した。


 拳を当てると、ジャックは素早く後退し、アカネの名を呼んだ。


「アカネ! ブチ破れ!」


「……ああ!」


 返事をしたアカネが、ジャックと入れ替わりでスピカ型に接近。両腕ごと刀を引き絞り、踏み込みの勢いも乗せた力強い刺突を放つ。


「バリアーごと串刺しだよッ!!」


 ……ところが。


 アカネが刺突を繰り出すより早く、スピカ型が右手で”念動力(サイコキネシス)”の衝撃波を発生させる。アカネの目の前でだ。


 回避する暇など無い。

 アカネは、スピカ型の衝撃波を顔面に喰らってしまった。


「くぁ!?」


 回転しながら吹っ飛ばされるアカネ。首がもげてもおかしくない威力だったが、無意識的に脱力して受けたことで、ダメージの一部を受け流し、即死を(まぬが)れることができた。


 だがそれでも、強烈な衝撃だった。

 脳も揺さぶられ、アカネは立つことができずにいる。


「ちッ……しくじった……!」


「おいアカネ、大丈夫かよ!?」


 起き上がろうとしていたアカネを、ジャックが助け起こす。

 どうにか立ち上がれたアカネだが、まだ足がふらついているようだ、


 ジャックはアカネを支えながら、彼女に声をかけた。


「なぁアカネ。オマエ、調子悪いのか? さっきの刺突、いつものオマエならもっと早く合わせてただろ? さっきのデュラハン型を相手した時もそうだ。デュラハン型に弾き飛ばされた時、受け身をミスってよく地面に転がされてたよな? 普段のオマエなら絶対にありえないミスだ。なんというか、今日のオマエ、全体的に動きが固いんだよ」


 その言葉に、一瞬だけピクリと固まるアカネ。

 図星を突かれたかのように。

 アカネの中のレイカも「言われてみれば」と感じた。


「……さぁてね。アタシゃいつも通りにやってるつもりだけどね?」


「レイカがいねぇからか? やっぱりアイツと一緒じゃないと調子出ねーんじゃ……」


(そうなのアカネ? やっぱり私も一緒に戦った方が……)


「レイカは関係ない。それよりほら、無駄話してないで戦闘再開するよ! ローガンチームがスピカ型の気を引いてくれてるけど、このままじゃローガンたちが危ない!」


「あ、ああ! 仕方ねーな!」


 返事をして、ジャックはアカネと共にスピカ型へ攻撃を仕掛けに行く。


 アカネが言っていた通り、現在はローガンチームの六人が、スピカ型と交戦中だ。ローガン、ニコ、ロドリゴ、ジョーンズの四人が後方から射撃し、ブレード兵のカインとリリアンが斬りかかる。


 だが六人の攻撃では、スピカ型のバリアーはビクともしない。

 銃弾を受けても。鉄をも切断する高周波ブレードで斬られても。


 スピカ型はバリアーで攻撃を防ぎつつ、”念動力(サイコキネシス)”でブレード兵の二人を捕まえようとしているが、今のところ二人は回避できている。しかし、いつ捕まってもおかしくなさそうな危なっかしさだ。


 ここで、リリアンが勝負を仕掛ける。

 ブレードに冷気を(まと)わせながら、スピカ型の左に回り込む。


 そして、スピカ型のバリアーの側面、マードックとジャックによってヒビを広げられた箇所を狙って、氷の刺突を繰り出した。


「決める……!」


 ……が、しかし。

 それより早く、スピカ型がリリアンに向かって左の手のひらを突き出した。


 スピカ型の左手から、螺旋状の”念動力(サイコキネシス)”の波が撃ち出される。それは高周波ブレードを先端から持ち手部分まで(ねじ)り、そのブレードを持っていたリリアンの両手を(ねじ)り、両手から両腕へ、両腕から両肩へ……。


「……終わった。ごめん」


 そして、螺旋の衝撃がリリアンの首まで到達。

 首をゴギリ、と(ねじ)られて、リリアンは死亡してしまった。


「リリアン! アンタよくもっ!!」


 ニコが怒りの声を上げて、スピカ型にアサルトライフルの銃口を向ける。


 スピカ型は、そのニコのアサルトライフルに右手を向けて、右手を左方向へ()いだ。


 すると、ニコのアサルトライフルの銃口も左へ向けられる。

 その銃口の先には、老兵のローガンが。

 スピカ型を射殺しようとしていたニコは、そのまま引き金を引いてしまう。


「ぐぁ!?」


「え!? あ、お爺ちゃん!?」


 すかさずスピカ型が、先ほど殺したリリアンの手から高周波ブレードを奪い取り、それを”念動力(サイコキネシス)”でローガンへ向けて射出。


 たとえ(ねじ)られていようとも、ブレードの切っ先は鋭いまま。

 まっすぐ放たれたリリアンのブレードは、ローガンの頸動脈を(えぐ)り、貫いた。


「ぬ……、抜かったわい……」


 首筋から大量の血を噴き出して、ローガンも死亡してしまった。


「あ……ああ……」


 自分の攻撃がきっかけとなって、ローガンを死なせてしまった。

 ニコは悲しみと自責で、頭の中が真っ白になってしまう。


 ここで、ジャックとアカネが戦線復帰。

 スピカ型の背後から、それぞれ接近して攻撃を仕掛けた。


「テメェよくも!! ブッ飛ばすッ!!」


「叩き斬るッ!!」


 ……が、スピカ型は二人の方を振り返ることなく、”念動力(サイコキネシス)”で二人の動きを封じてしまった。


「ぐ!? しまった、動けねぇ……!」


「こ……んのヤロ……!」


 そのままスピカ型は、二人を前方へ勢いよく投げ飛ばす。

 その先にはローガンチームの面々がおり、ジャックはロドリゴとジョーンズに、アカネはカインに激突してしまう。


「うぐッ!?」


「おわっとぉ!?」


「うわ!? ジャックくん、大丈夫かい!?」


「っと……! 大丈夫っすか、アカネちゃん?」


「ああ、なんとか……」


 幸い、五人のダメージは軽いものだったが、体勢は大きく崩されてしまった。アカネはカインが完璧に受け止めてくれたが、ジャックたち三人はまだ立て直しができていない。


 そこへ、スピカ型が悠々(ゆうゆう)と接近してくる。

 アカネはすぐにスピカ型の前に立ち、彼女を牽制。


 するとスピカ型は、なにやら面白いものを見つけたような様子で、口を開いた。


「健気だねー。そんな状態の心で、ワタシの前に立つなんて」


「あん? 何のことだい? 別にアタシはいつも通り……」


「隠しても無駄だよー。キミ、戦いを怖がってるよね?」


 その言葉を聞いて、ジャックたちアメリカチームの皆が固まった。

 誰もが目を丸くして、アカネの方を見ていた。


「アカネが……戦いを怖がってるって?」


「あの、一度戦い始めたら、敵の血を見るまで止まらないアカネがっすか?」


 この皆の問いかけに対して、アカネは気まずそうに沈黙していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ