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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第23章 合衆国本土奪還作戦
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第1352話 シャーマン型のレッドラム

 天候操作によってラプター戦闘機の飛行を妨害する、シャーマン型のレッドラム。


 このシャーマン型のレッドラムを排除するため、サミュエル中尉、リカルド准尉、ルカン少尉の三人が戦闘中だ。


 シャーマン型がたくさんの火球を作り出し、その火球から全方位に向けて無差別に火炎を放射する。


「燃エ尽キヨ!」


「准尉!」


「はい!」


 サミュエルの声を受けて、リカルドが地面に手を突いて氷の壁を生成。それが防護壁となり、迫りくる炎から三人を守ってくれた。


「ヌン! 次ハコレダ!」


 シャーマン型がそう叫ぶと、三人の兵士が立っている場所に風が吹き込み始める。


 風はどんどん勢いを増し、三人を中心にして渦を巻いているようだ。

 ここに留まるのはマズい。急いで三人はその場から退避。


 すると、先ほどまで三人が立っていた場所で、大きな竜巻が発生した。巻き込んだものをミキサーのように粉砕してしまう、恐るべき竜巻だ。


「あの場所から移動していなかったら、三人そろってミックスジュースだったな!」


「その氷の若造とミックスされるのは御免(ごめん)だな」


「こちらこそ、どこぞの頑固な中尉と一緒になるのは願い下げですね」


「この二人ホントに仲悪いなー」


「私ヲ無視シテ喧嘩トハ良イ度胸ダ! 後悔サセテヤル!」


 シャーマン型がそう言うと、この場所を覆うように雨雲が発生した。

 せいぜいビルの五階くらいの、雲が発生するにしては随分と低い位置に、だ。


 そして、その雨雲から大雨が降り始めた。

 ゲリラ豪雨級の強烈な雨だ。

 さらには、雨雲からゴロゴロと音が鳴り、無差別に雷も落ち始める。


「これはいかんな。少尉、下がるぞ」


「うぃっす」


 雷に打たれるのを危惧したか、サミュエルとルカンはこの場から離脱し始める。


 リカルドだけ動かなかった。

 そのリカルドの背後で地面が隆起。

 鋭い棘のような石柱が、リカルドの退路を断ってしまった。


「なるほど。冷静に分析した結果、あらゆる属性、あらゆる攻撃を使い、あらゆる状況に対応できるのがお前の強みってところか」


「ククク! 仲間ハオ前ヲ捨テテ逃ゲテシマッタナ! サァ、我ガ雷ヲ受ケテ、死ネ!」


 シャーマン型が、リカルドに雷を落とすべく、振り上げた右手を振り下ろそうとした。


 その瞬間、この場全体が氷に包まれた。


 道路も、ビルも、標識も、路傍の車も、そしてシャーマン型も。

 全てが()てつき、凍ってしまっていた。


 この場を凍らせたのは、もちろんリカルドだ。

 全身から強烈な冷気を発生させ、この周囲を氷漬けにした。


「中尉と少尉が先に逃げたのは、これに巻き込まれないためだよ。今の僕の前で雨なんか降らせて場を水浸しにしたら、そりゃこうなる。嵐と雷、よほど自信のある攻撃だったんだろうけど、冷静に考えて、あまりにも悪手だったね」


 言って、リカルドは凍り付いたシャーマン型に前蹴り。

 シャーマン型は声一つ発することなく砕かれ、絶命した。


 戦闘が終了し、リカルドは通信機を取り出す。

 通信の相手は、ラプター戦闘機を駆るノイマン准尉。


「ノイマン准尉。こちらリカルドです。天候操作をしていると思われるレッドラムを始末しました。空の具合はどうですか?」


『タイガー。天候が急速に回復しつつある。これならいけそうだ。感謝する』


「それは良かった。日本チームの援護、よろしくお願いしますね」


 通信終了。

 リカルドが通信機をしまうと、サミュエルとルカンも戻ってきた。


「うひー、派手に凍らせたなぁ。逃げてなかったらやばかったぜ。シャーマン型が最後に発生させた石柱の壁がいい感じにオレたちから冷気を(さえぎ)るフェンスになってくれたのも良かったな」


「結局、本当に応援が来る前に終わったな。もう応援は不要だと連絡しておくか」


 そう言って、今度はサミュエルが通信機を取り出す。

 周波数を合わせ、前線基地に通信を入れた。


「こちらサミュエル。天候操作をしていたレッドラムを排除した。もう応援は不要だ」


『了解しました。ただ……また別のミッションをお願いしてもよろしいでしょうか?』


「今度は何があった?」


『二つのチームとの連絡が取れなくなっています。オズマチームとガルシアチームです。このニつのチームの安否を確かめてもらいたいのです』


「了解した。連絡が取れていた時の、二つのチームの最後の状況を教えてもらいたい」


『オズマチームは、強力な電磁波を操る目付きのレッドラムと交戦中でした。その能力により通信機の電波にも影響を及ぼされ、交戦開始の連絡と同時に通信が不安定になり、連絡が取れなくなりました』


「では、オズマたちはまだ、そのレッドラムと交戦中ということか?」


『その可能性が高いと思いますが、想定よりも戦闘時間が長すぎます。あるいは敗北してしまったのかもしれません。そしてガルシアチームは、本当にいつの間にか連絡が取れなくなりました。こちらから通信を入れても応答がありません』


「なるほど、分かった。サミュエルチーム、これより現地へ確認に向かう」


 前線基地との通信を終えると、サミュエルたちは二つのチームの安否を確かめるべく、行動を再開した。



◆     ◆     ◆



 視点は、巨竜型のレッドラムと戦闘中の日向たち三人に戻る。


 日向がノイマン准尉に通信を入れた。

 戦闘機による援護がまだ来ないので、向こうの状況を確認するためだ。


「もしもし! こちら日本チームの日下部です! 戦闘機チームの援護はどうなっておりますか!」


『タイガー。待たせたな。状況が整った。これより支援攻撃を開始する』


 通信機から返答が来ると、さっそく空から四機の戦闘機が飛来。

 日向たちの前方にいる巨竜型のレッドラムの背中に、機銃とミサイルが次々と降り注いだ。


「GUUOOAAAAA!?」


 効いている。

 戦闘機の一斉攻撃を受けて、巨竜型が明確に悲鳴を上げた。


「おお、すごい……。いや、感心してる場合じゃないな。そろそろトドメも刺せそうだ。日影、エヴァ、足止めを頼む! ”星殺閃光(バスタードノヴァ)”を使うぞ!」


「やっとか! 外すんじゃねぇぞ!」


「よろしくお願いしますね、日向」


 短くやり取りを交わし、日影とエヴァが巨竜型に向かって走る。

 日向はその場に留まり、”星殺閃光(バスタードノヴァ)”の発動準備。


 巨竜型はまだ体力があるらしく、あの戦闘機からの集中砲火を受けてもなお、四つの脚はその巨躯を力強く支え、見る者すべてを威圧する竜眼で日向たちを見据えていた。


「GUUOOAAAAA!!!」

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