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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第23章 合衆国本土奪還作戦
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第1327話 楽勝

 引き続き、大爪型のレッドラムと戦闘を繰り広げる日影とジャック。


 日影が大爪型に攻撃を仕掛けると、それより早くジャックが大爪型に射撃して注意を()らす。


 大爪型が日影を攻め立てようとすると、ジャックが大爪型の腕や脚を射撃して動きを止める。


 ジャックは、日影から逐次(ちくじ)注文を受けているわけではないのに、日影が援護してほしいタイミングで、必要としている援護射撃をほぼ毎回届けてくれる。


 これには日影も舌を巻いた。ジャックと付き合いの長いアメリカチームの人間にこれをやるなら、まだ分かる。だが、意外とそこまで共闘した機会が多くない日影にもこれほどの援護ができるのは驚異的だ。


「ったく、これに関しては素直に認めざるを得ねぇか。流石だぜジャック」


「お? なんか言ったかよヒカゲ?」


「独り言だ。気にすんな」


「そーかい。なんとなくだけど、『流石だぜジャック』って褒められた気がしたんだけどなー?」


「聞こえてんじゃねぇかこの野郎」


「KUAAAA!! 俺様ヲ無視シテ戦闘中ニ漫談トハ良イ度胸ダナァッ!!」


 怒りながら、めったやたらに両手の爪を振り回す大爪型。

 攻撃の勢いが激しく、これには日影も距離を取らざるを得ない。


 その間、銃を武器とするジャックなら、遠距離から撃ち放題だ。

 ジャックはその場で二丁のデザートイーグルを構え、連射する。


 銃弾が次々と大爪型のボディに撃ち込まれるが、大爪型はまだ倒れない。先ほども日影の大振りの一撃も喰らったばかりだというのに、(あなど)れないタフネスである。


 その時、大爪型が不意に、ジャックに右手の爪の先端を向けた。


 すると、その瞬間、なんと大爪型の右手の爪が射出されたのだ。弾丸のように、ジャックめがけてまっすぐに。


 日影は、ジャックに「危ない」と声をかけようとした。

 だが、そんなもの全く間に合わないくらいに、射出された爪の速度は高かった。


 しかしジャックは、どうやら大爪型が爪を射出してくると読んでいたようだ。あらかじめ回避の体勢に移っており、自分に爪が命中する前にその場から動く。


 ……ところが。

 射出された爪が、ジャックがいた場所を通過する、その瞬間。

 なんと、爪がひとりでに破裂したのだ。


 破裂した爪の中から、まつ毛のように小さくも鋭い赤針が、全方位に向けて何百本も飛び出してきた。こんなもの、いくらジャックでも、とうてい回避できるものではない。


 ……と、思われたが。


「しゃらくせぇぇっ!!」


 そう叫び、ジャックが右腕を上から下へ思いっきり振り下ろす。

 風圧が生じるほどの、凄まじいパワーの振り下ろしだった。


 その結果、大半の赤針はジャックの腕振り下ろしによって叩き落とされ、その腕振り下ろしをギリギリ()(くぐ)るはずだった赤針も、ジャックが起こした風圧によって勢いを失い、地面に落ちた。


 結果として、ジャックに命中した赤針はほとんど無かった。

 さすがにまったくの被弾ゼロとはいかなかったものの、一見すると被弾したのか分からないほどにジャックはピンピンしている。


(しの)イダ……ダトォ!? 俺様ノ奥ノ手ヲ……!」


 まさか攻撃を防がれるとは思っていなかったらしく、大爪型は動揺している。それと同時に、先ほど射出して爪が無くなっていた部分から、新しい大爪が生えてきた。爪は失ってもすぐに再生するようだ。


「へっ、見た目のわりには姑息な手を使いやがるじゃねーか。そんじゃあこっちもお返しだ。真の姑息ってやつがどんなもんか教えてやるぜ」


 そう言ってジャックはデザートイーグルを連射。

 大爪型はこれを防ぐべく、両手の爪を×字に構える。


 その時。

 ジャックの背後から、一発の大きな弾丸が音速で飛んできた。

 コーネリアス少尉が撃った対物ライフル弾だ。


 弾丸は冷気を(まと)っており、ジャックの顔の横を通過していき、彼の横髪を風で揺らす。そしてそのまま、その先にいる大爪型に命中。


 弾丸が命中すると、爆発したかのように真っ白な冷気がまき散らされる。

 冷気が晴れてくると、そこには氷像になった大爪型の姿が。


 ジャックは、氷像に成り果てた大爪型のもとへ歩いて近づく。

 そして大爪型の目の前まで来ると、デコピンを一発。


 それだけで、大爪型は粉々に砕け散った。

 

 今の一連の出来事を見て、日影がジャックに声をかける。


「お前の銃弾をガードさせて視界を制限して、さらにお前に注意を向かせて、そこをコーネリアスが狙撃か。実質回避不可能コンボじゃねぇか。エグい真似するぜ」


「アイツはアイツで全方位針飛ばしとかしてきたし、お互い様だろ。回避できねー奴が悪いんだよ」


「実際、お前は針攻撃を(しの)いだワケだしな。説得力があるな」


 能力はそこまで強力ではなかったとはいえ、仮にも相手は目付きのレッドラムだったのに、ジャックたちのおかげで楽に終わったな、と日影は思った。


 やり取りを終えて、二人は次の標的を求めて、この場を去ろうとする。

 しかしその時、不意にジャックの足元がふらついた。


「おっと……」


「おいどうした? なんか調子悪そうだったぞ。何か大爪型(コイツ)の攻撃を喰らったのか?」


「たぶん、さっきばら撒いてきた針だな。恐らく神経系の麻痺毒か何かだろ」


「なんだ、さっきの針は当たってたのかよ」


「針が小さかったんで俺自身もよく分からねーが、何本か喰らっちまったみたいだな。あれだけ針を叩き落として被弾を少なくしたのに、それでもこれだけ動きが悪くなるんだから、マトモに喰らってたらやばかったなー。ゾッとするぜ」


「それより、毒は大丈夫なのか?」


「ああ。今の俺は”生命(ライフメイカー)”の再生能力で、毒の治療成分も自分の身体で生成できる。ちょっと休めばすぐ動けるようになるぜ。たぶん」


「だったら良いけどよ」


 やり取りを終えると、いったんジャックの回復を待つために、日影はジャックを連れて、この場から移動した。



 そして一方で、こちらは戦闘機部隊、そのうちの一機。

 ビルより少し高い高度から、道路上のレッドラムの群れをミサイルで蹴散らす。


「へへ、やったぜ。ストライクだ。それにしても楽な仕事だな。安全な空を飛び回りながら、地上にいる化け物どもで的当てゲーム。地上部隊の連中に申し訳ないぜ、ははっ。あー、今この時ほどパイロットで良かったと思ったことは――」


 だが、その時。


 この戦闘機の正面下方の高層ビル。

 その屋上から、一体のレッドラムが飛び掛かってきた。


 このレッドラムは身体ごと大きく回転しながら、両手に持っていた二本の光剣で、戦闘機の左翼を両断してしまった。


「は!? おい嘘――」


 驚愕するパイロット。

 戦闘機はコントロールを失い、きりもみ回転。


 そして、パイロットがコックピットから脱出する暇もなく、戦闘機は目の前の高層ビルに正面から激突し、爆発した。

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