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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第23章 合衆国本土奪還作戦
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第1312話 二つのルート

『星殺し』グラウンド・ゼロからアメリカ本土を奪還するため、日向たち六人とアメリカのマモノ討伐チームの協同作戦が始まった。


 まず最初のミッションは、予定通り敵の超長距離砲を始末すること。これで空を取り戻すことができれば、アメリカチームの航空戦力を本格投入できるようになる。


 超長距離砲は、ニューヨークからおよそ三百キロ先にあるピッツバーグという都市に設置されているらしい。地上の標的に対する索敵能力は低いが、空中を飛ぶ標的に対しては非常に敏感という特性を持つ。


 ピッツバーグへ向かうために、主に二つのルートが提示された。


 一つは、地上から向かうルート。

 装甲車などに人員を乗せて、ピッツバーグまで向かう。


 先述の通り、超長距離砲は地上の標的に対しては、無関心かと思うほどに攻撃をしてこない。地上からのルートであれば、道中は超長距離砲の狙撃をほとんど気にすることなくピッツバーグまで向かえるだろう。


 しかし、ニューヨークからピッツバーグまでは、およそ三百キロ。

 頑張れば車でも一日で行ける距離だが、時間がかかることは間違いない。


 もう一つのルートは、空から向かうルートだ。

 日向たちが乗ってきた飛空艇を使って、ピッツバーグへ直接乗り込む。


 空を飛ぶ標的に対しては、超長距離砲も本気を出す。

 三百キロ先からでも戦闘機を墜とすという砲撃が、飛空艇を襲うだろう。


 しかし、飛空艇にはバリアー機能がある。

 多少の被弾であれば、耐えきって正面突破することも不可能ではないはずだ。


 そして、空から向かうのであれば、地上から行くのと比べて移動時間も大幅に短縮できる。飛空艇はそれなりの大きさなので、かなりの数の兵士を現地に運ぶことができるだろう。


 この二つのルートに対して、日向とマードックは同意見だった。


「空から行きましょう。移動時間の短縮だけじゃなく、超長距離砲の懐まで潜り込めれば、飛空艇は火力も装甲車とは段違いですから。超長距離砲を直接破壊できる」


「同感だな。それに超長距離砲も、目視できる位置まで敵が近づいて来たら、地上の敵に対しても攻撃を行なってくる……という可能性もある。それを考慮すると、やはりバリアーが使えるというそちらの飛空艇の方が、狙われても安全だ」


 こうして日向たちと、アメリカのマモノ討伐チームの兵士たちは、さっそく飛空艇に乗り込んでピッツバーグの街へ向かい始めた。


 日向たちのメンバーからは、日向、北園、本堂、シャオラン、日影、エヴァ、スピカ、ミオンの八人、フルメンバーを連れてきている。


 さらに、操縦補佐は引き続きオネスト・フューチャーズ・スクールの子供たちが担当。『星殺し』ドゥームズデイとの戦闘も経験した彼らは、もう完全に一人前の飛空艇搭乗員である。


 雷の能力を持つ大鷲のマモノ、ユピテルは連れてきていない。

 飛行はできるが飛空艇のようにバリアーは張れないユピテルは、超長距離砲に対しては絶好の(まと)にされる可能性が高い。


 アメリカチームの人員は、およそ八十名ほど。

 コックピットルームに全員は入り切らず、通路で待機している兵士も大勢いる。


 今日の飛空艇の操縦は、北園が担当。

 少し荒っぽかったミオンの操縦と比べると、彼女の操縦は丁寧で安定している。


 ちなみにピッツバーグに到着したら、操縦および地上攻撃はアラム少年が担当する予定だ。北園は地上での戦闘に参加する。これは「自分もこの星のために戦いたい。役に立ちたい」というアラム本人の希望である。


「キタゾノお姉ちゃん、きつくなったら言ってね。いつでも代わるから」


「ありがとう、アラムくん! その時はよろしくね!」


 一昨日の会話もあってか、北園とアラムはこれまで以上に打ち解けている様子だ。というより、今までアラムに対してすこし遠慮がちな様子だった北園が、今はもうそんな様子はない、といったところか。


 その北園の操縦を見ながら、レイカが声をかけてきた。


「超能力者の精神エネルギーで動くんですよね、この飛空艇って。私にも操縦できるのでしょうか?」


「レイカさんも超能力者だから、できるんじゃないかな?」


 北園が答える。

 しかしレイカは、北園の答えに納得がいっていないように首を傾げた。


「私の超能力って、言ってしまえばアカネと切り替わるだけじゃないですか。エネルギーを放出したりする北園さんの超能力とはだいぶ気色が違うから、本当にできるのかなぁって思っちゃって」


「なるほどー……どうなんだろ? でもアラムくんの”念読能力(サイコメトリー)”もアラムくん自身に働きかける超能力だし、『能力が働く対象』で見ればレイカさんと似てるし、そう考えればレイカさんもいけるんじゃないかなぁ?」


 レイカの質問を受けた北園は、スピカにも尋ねてみた。


「スピカさんは、どう思います? レイカさんはこの飛空艇を操縦できると思いますか?」


「うーん、たぶんいけると思うけど……。そもそも”二重人格(ダブルフェイス)”っていう超能力は、ワタシも聞いたことがないんだよねー」


「え!? アーリアの民のスピカさんでもですか!? 超能力の本家本元なのに!?」


「ミオンさんも知らないって言ってたし……。たぶん、レイカちゃんの祖先のアーリアの民の超能力の素質と、地球人の性質が混ざって生まれた、地球人オリジナルの超能力なんだと思うー」


「そういえば、前に狭山さんも言ってた気がするなぁ。『レイカさんの超能力は、最近になって確認されたもので、研究もあまり進んでない』って。あれが、アーリアの民として、つい最近になって狭山さんも”二重人格(ダブルフェイス)”の存在を知ったっていう意味だったら……」


「そういうことだろうねー。というわけでレイカちゃん、残念だけど、キミの能力の詳細については、ワタシもちょっと力になれそうにないかも。ゴメンねー」


「いえ、お気になさらず。ともあれ飛空艇の操縦については、時間ができたら一度確かめておくのも悪くないかもですね」


 そのレイカの言葉を最後に、女子三人の会話は終わる。


 それと同時に。

 飛空艇の正面から、緋色のエネルギー弾が飛んできた。


 エネルギー弾は、飛空艇の正面のバリアーに阻まれて誘爆。

 黒煙がまき散らされ、その中を飛空艇が突っ切る。


「砲撃がきた! よーし、勝負だよ!」


 北園は操縦桿を握り直し、やる気満々につぶやいた。

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