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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第22章 その艇は嵐を往く
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第1287話 最後の抵抗

 ドゥームズデイが放とうとしていたビームが破裂し、稲妻が(ほとばし)る青い雷電の大爆発が巻き起こった。


 日向とユピテルは共に吹っ飛ばされ、日向はユピテルの背中から離れてしまっていた。そしてユピテルは爆風の衝撃で脳震盪(のうしんとう)を起こしているらしく、日向と一緒に力無く落下していた。


「うわぁぁぁ……」


「クァァァ……」


 ……が、しかし。

 ここでユピテルの意識が戻った。

 どうやら脳震盪は軽度だったようである。


「クァ!? ケェェンッ!」


 すぐさまユピテルは体勢を立て直し、落下していく日向の背後へ回り込む。そして彼を背中でキャッチ。落下を阻止した。


「っとぉ……!? ありがとうユピテル。もう本当、今日はお前に助けられ過ぎだな俺……」


「クァァ!」


「うん、腐ってる場合じゃないよな。飛空艇はどうなった!?」


 頭上を見上げる日向。どうやらかなり落下してしまったようで、飛空艇もドゥームズデイもはるか遠くである。


「急いで戻らないとな。ユピテル、悪いけど全速力で頼む!」


「クァァァ!!」


 日向の言葉に威勢よく返事をして、ユピテルは飛行を開始した。



◆     ◆     ◆



 そしてこちらは飛空艇の様子。


 飛空艇はかなり後方へと吹っ飛ばされており、機体もかなりのダメージを受けたように見える、しかし、まだメインブースターは死んでおらず、機体のバランスを立て直して飛行を再開した。


 甲板の上では、本堂がエヴァとミオンを守るために大の字で立っていた。彼もまた全身が焼け焦げる大ダメージを受けているようだが、生きている。意識も保っており、爆風が晴れると同時に息を吐いた。


「はっ……、はぁっ……、く……超帯電体質の俺でもこれほどのダメージか……。吸収しきれなかった電流が身体の表面を焼いたな……。いや、俺の事より、他の皆はどうなった……!?」


 本堂は、まず背後にいるはずの二人、エヴァとミオンの安否を確かめる。


 二人も生きていた。

 本堂と同じく電流による火傷を負っているが、健在である。


「私たちも無事です……。きっと、あなたが守ってくれたおかげですね、仁」


「一流の武術家でも、こればっかりは無傷では済まないわねさすがに……。それより、シャオランくんは!?」


「そうだ、シャオラン……!」


 三人はすぐさま前方を……シャオランが立っている艇頭へ視線を向けた。


 爆発が起こった際、シャオランは最もドゥームズデイの近くにいた。爆風にも何の備えもなく巻き込まれたはずだ。はたしてシャオランは無事なのだろうか。


 シャオランは艇頭に立ったままだった。

 しかし、その全身は、見るも無残な黒焦げだった。


「か……はっ……、……」


「シャオランくん……!?」


「シャオラン!」


 慌ててシャオランに駆け寄る三人。

 それと同時に、シャオランも背中から甲板へ倒れ始める。


 その倒れそうになった背中を、ミオンが支えた。

 ゆっくりとシャオランを甲板の上に横たえる。


「ひ、ひどい怪我だわ……! 呼吸も止まりかけている! エヴァちゃん、シャオランくんの手当てを!」


「わ、分かりました! すぐに……」


「む、待て! ドゥームズデイが……!」


 本堂がエヴァとミオンに声をかけた。


 ドゥームズデイは右腕右脚を失い、バランスを崩しながらも後ろへ飛ぶ。そして飛空艇に向かって左の手甲からミサイルを次々と発射。さらに左の手のひらから強烈な稲妻を撃ち出し、飛空艇を攻撃してきた。


「まだ余力があるか……最後の抵抗だな……!」


「エヴァちゃん! ミサイルは私が墜とすわ! あなたは稲妻の対処を!」


「分かりました、電磁結界再生成です……!」


 ミオンの”如来神掌”がミサイルの弾幕を一掃し、エヴァが展開した電磁場がドゥームズデイの稲妻を押し返す。ミサイルはともかく稲妻は非常に強力で、エヴァも電磁結界の維持に必死のようだ。


「くぅぅ……! なんとか耐えきれますが、これではとてもシャオランの回復が……!」


「じゃあ北園ちゃんの”治癒能力(ヒーリング)”を頼るしかないわね……。さっき、この飛空艇の主砲が発射されたのが見えた。操縦してたのはアラムくんよね? 無理はできないって言ってたのに、あの主砲を動かした……ということは、今の彼はひどく消耗しているはず」


「つまり、そのアラムと交代して、今この飛空艇を操縦しているのは北園ということですか。それでは、北園にここまで駆けつけてもらうわけにはいかない……」


「私がシャオランくんをコックピットまで運ぶわ。そして北園ちゃんと操縦を交代する」


「それしかないでしょうね…………む、あれは……!?」


 本堂が飛空艇の左側面に視線を向ける。

 雨雲の向こうから、異能の戦闘機の雨天が二機、飛んできていた。


 雨天は甲板の上の本堂たちを狙って酸性雨の機銃を発射。

 高濃度、高圧縮された酸の粒が弾丸となって襲い掛かる。


「これはいかん……!」


 本堂は、酸の弾丸からシャオランを庇う体勢に。

 これ以上の負傷は、本当にシャオランの命に係わる。


「ぐぅぅ……!」


 本堂が盾となり、シャオランには一発も酸の弾丸は命中しなかった。代わりに本堂は大量の酸を浴びせられることになってしまったが、今の彼の耐久力ならばまだ耐えられる。


 だが、それ以上に問題がある。本堂だけでなく、ドゥームズデイの稲妻を受け止めていたエヴァにも酸の弾丸が当たってしまったのだ。


「うああ……!? くっ、負けません……!」


 その身を酸で(えぐ)られ、皮膚から煙が上がりながらも、エヴァは電磁結界を維持してくれていた。引き続きドゥームズデイの稲妻を受け止めてくれている。


 ともあれ、これで雨天を無視するわけにもいかなくなった。またエヴァやシャオランに酸を浴びせに来られてはたまらない。ミオンはシャオランを運ぶ前に、雨天を撃墜することに。


「手間かけさせないでちょうだい! ”如来神掌”!!」


 ミオンが右の手のひらから衝撃波を放つ。

 しかし、墜とせた雨天は一機だけ。もう一機はギリギリ回避されてしまった。


 おまけに今度は、飛空艇の右側面から風天と雷天が一機ずつ姿を現した。攻撃は仕掛けず、様子を(うかが)うように飛空艇の周辺を飛び回っている。さらにドゥームズデイが再びミサイルを発射。


「ドゥームズデイめ、もはや形振(なりふ)り構わず一人でも道連れにするつもりか……! 次から次へと……!」


「これじゃあ、シャオランくんを運ぶ暇さえ……!」


 そんな時だった。

 飛空艇のアナウンスから、スピカの声が発せられた。


『みんなー! もう少しそのまま(こら)えていて! もうすぐそっちに……』

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