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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第22章 その艇は嵐を往く
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第1286話 接射

 シャオランの空の練気法”無間”で繰り出した拳が、ドゥームズデイが突き出してきた左手を止めた。


 飛空艇の目の前で静止するドゥームズデイの左手。しかしまだシャオランの”無間”と飛空艇のバリアーを突破しようとしており、力を(ゆる)めない。シャオランも拳を突き出したまま、ドゥームズデイの左手を食い止めている。


 だがその時。

 ドゥームズデイの左の手のひらの中心に、急速にエネルギーが集中し始めた。


「え!? これって、まさか……!?」


 シャオランの表情が変わる。

 これは恐らく、ドゥームズデイが雷電のビームを放とうとしている。


 街一つを丸ごと消し飛ばすほどの威力を有するドゥームズデイのビーム、これをシャオランの”無間”に押し当てたまま接射するつもりなのだ。そんな凶悪なエネルギーを放たれたら、甲板のシャオランたちはもちろん、飛空艇だって消し飛ぶだろう。


 他の仲間たちも、ドゥームズデイがやろうとしていることに気づいた。それぞれ、ドゥームズデイの攻撃に対処するために動こうとするが、残された猶予は余りにも少ない。


「ドゥームズデイの奴、まさか主砲をぶっ放すつもりか!? クソッ、今からドゥームズデイの左手甲を破壊しに行くしかねぇ! 間に合うか!?」


 そう言って、日影は飛空艇から飛び立とうとしている。

 一方、エヴァは杖を甲板の上に突き立てた。


「全力の電磁結界で飛空艇を防護! 敵の攻撃に備えます!」


 そして本堂は、反射的にエヴァとミオンの前に立ち、二人を庇う体勢に。


「超帯電体質の俺は、ここにいる面子(めんつ)の中では最も電撃に対する耐性が高い。せめて俺が盾になり、彼女らの生存率を少しでも高める……!」


 それから本堂は、シャオランにも声をかけた。

 自分を盾として使ってもらうために。


「シャオラン! 此方(こちら)へ来い!」


 ……しかし、本堂の呼びかけに対して、シャオランは何の反応も見せない。エヴァの方を振り向くことさえせず、右拳でドゥームズデイの左手と押し合っていた。”無間”により、何もない空間を挟んで。


「シャオラン、何をしている!? ……いや、そうか、動けないのか……!」


 本堂の言う通りである。

 シャオランは、ここを動くわけにはいかないのだ。


「ボクがドゥームズデイの左手を抑えるのを止めたら、ドゥームズデイはこのエネルギーを放出までもなく、そのまま左手でこの飛空艇を叩き落としてしまう……」


 かと言って、このまま何もせず耐え続けていても、まもなく発射されるドゥームズデイのビームがシャオランたちを消し飛ばすだろう。


「だから、ドゥームズデイがビームを放つ、その直前。ボクはもう一度ドゥームズデイの左手に全力の一撃を叩き込んで、少しでもビームの勢いを殺す。分が悪すぎる賭けだけど、それしかできることがない……!」


 そしてこちらはコックピット内。


 北園、スピカ、アラム、そして他の子供たち。

 全員が、緊迫した表情で正面のモニターを注視していた。

 ドゥームズデイの雷電の左手が目の前に迫る光景を。


「シャオランくんが耐えてくれている今のうちに逃げないと!」


 北園がそう叫ぶが、スピカが首を横に振る。


「ダメだよ! シャオランくんとドゥームズデイは今、正面からぶつかり合って膠着(こうちゃく)を保っている状態だ! ここで飛空艇が勝手に動けば、二人の拳が滑る! 最悪、その滑ってきたドゥームズデイの左手がそのまま飛空艇に直撃するかも……」


「そ、そんな……!」


「逃げられないなら……立ち向かうしかない!」


 操縦桿を握るアラムがそう叫んだ。

 そして彼は、操縦桿により多くの精神エネルギーを流し込み始める。


「アラムくん、何をするつもり!?」


「この飛空艇の主砲ってやつをぶっ放して、アイツのビームにぶつけるんだ!」


「む、無茶だよ! それにアラムくん、あの主砲が撃てるだけのエネルギーは残ってないんじゃ……!」


「でも、正念場だもん! これくらいの無茶、喜んでするよっ!」


 アラムのその言葉と共に、飛空艇が主砲機構を展開。

 主砲の発射口にエネルギーがチャージされていく。


 最後は日向。


 ドゥームズデイの右脚を付け根から斬り飛ばした後、ユピテルの背中に着地した日向。しかし彼は、その位置関係もあって、飛空艇の危機に気づくのが皆より遅れた。


「ドゥームズデイの奴、まさか飛空艇にビームを直接ぶち込むつもりなのか!? こうなったら、今から”星殺閃光(バスタードノヴァ)”をぶっ放して、ドゥームズデイがビームを撃つより早く終わらせるしか……!」


 そう考え、日向は再びユピテルの背中からジャンプする準備。このユピテルの背中の上で”星殺閃光(バスタードノヴァ)”を撃ち出そうとしたら、ユピテルまで熱波で巻き込んでしまう。


 だがしかし、間に合わない。

 ドゥームズデイのビームが、発射される。


 それと同時にシャオランは、ドゥームズデイの左手に押し当てていた拳をよりいっそう強く握りしめ、右足で踏み込み、全力の寸勁を繰り出した。


「やぁぁぁぁッ!!!」


 それと同時に、飛空艇の主砲も発射される。

 光の剣のような、薄く鋭い光線が。


「僕の全身全霊を注ぎ込む!! 主砲……発射っ!!」


 ドゥームズデイのビームは、凝縮された雷電の奔流となって発射され、飛空艇を容赦なく押し流して消し炭にする……はずだった。


 しかし、偶然にも全くの同時に放たれたシャオランの寸勁と、アラムが作動させた飛空艇の主砲、さらにこの飛空艇を守るバリアーと、エヴァが発生させた電磁結界。


 これらがいっぺんにドゥームズデイのビームとぶつかり合い、その結果、ドゥームズデイのビームは押し留められ、その場で大爆発を巻き起こした。


「RUA……!?」


 巨大なドゥームズデイさえも怯むほどの、超特大の大爆発だった。


 当然ながらこの大爆発は、飛空艇も呑み込んでいる。さらには、左手甲を攻撃しようと飛び立っていた日影や、爆発中心部よりはるかに低高度にいる日向とユピテルまで。


「うおッ……!?」


「うわっ!? 吹っ飛ばされ……!?」


「キュオオッ……!?」


 はたして、皆の安否や如何に。

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