第1281話 ドゥームズデイ討滅戦
戦艦と一体化し、巨大化したドゥームズデイとの最後の激突が始まった。
ドゥームズデイが飛空艇に接近してくる。どうやら背中だけでなく膝裏と足裏にもブースターが搭載されているようだ。その速度は飛空艇を優に超えており、あっという間に距離を詰めてくる。
距離を詰めてきたドゥームズデイが、右の拳を振りかぶった。飛空艇を直接殴りつけて叩き落とすつもりだ。
「ちょちょちょ、いきなりやばいな!? どうするんだこれ! コックピット速度上げて!」
『もう限界まで上げてるよー! これ以上は無理ー! 逃げられないー!』
「じゃあエヴァ! 磁力で跳ね返して! 敵の拳は雷で作られているから不可能じゃないはず!」
「無理です! 敵の攻撃の規模と威力が大き過ぎます……! あなたが”星殺閃光”で迎え撃てばいいじゃないですか! もうそろそろ再使用できるようになったでしょう!」
「じゃあここにいる皆さんと飛空艇まで余波で一緒に焼いちゃうけどよろしいか!?」
「ああもう、火力が高すぎるというのも考え物ですね……!」
先ほどドゥームズデイに啖呵を切ったばかりだというのに、何とも締まらない面々である。
そんな中、シャオランが構えを取った。
「ボクに任せて! たぶんあれくらいならいけると思う!」
そう言ってシャオランは”空の気質”を自身の周囲に展開。拳の間合いを無視する攻撃”無間”の用意である。
シャオランが展開した”空の気質”のフィールドの中に、ドゥームズデイが突き出した右拳が侵入してきた。それに合わせて、シャオランは鉄山靠を放つ。
「せやぁッ!!」
シャオランとドゥームズデイの拳は、まだ十メートル近く間合いが開いていた。にもかかわらずドゥームズデイの拳にシャオランの鉄山靠の衝撃が叩きつけられ、拳は止められた。
「ほ、本当に止めた……あんなデカい拳を……。初めて会った時から言ってる気がするけど、もうシャオランいよいよ人間辞めたな……」
「シャオランくんの”空の気質”は、四種の練気法の特性全部乗せだもの~。火の練気法の”爆砕”の効果も入ってるから、純粋なパワーだけじゃなくて技の破壊力の爆発的向上も合わさって、ドゥームズデイの拳を止めることができたのでしょうね」
ともあれ、飛空艇はドゥームズデイの拳から逃れることに成功。しかしここでドゥームズデイから距離を取ることはせず、逆に距離を詰めてドゥームズデイの周囲を飛び回る。
この判断を下したのは、コックピットにいるスピカだ。
彼女は、操縦桿を握るアラムに声をかけていた。
「離れたところで、また追いつかれてさっきみたいに叩き落としてくるのは目に見えている。だったら逆にドゥームズデイの周囲を飛び回って攪乱しよう! ハエは人間のすぐ近くを飛び回った方が、逆に見失いやすくなるからねー!」
「わかった! いくよ!」
「アラムー! ミサイルうつよー!」
「いいよ! やっちゃって! あと少しで勝てるんだ、僕の全てを注ぎ込む!」
アラムの指示を受けて、他の子供たちがコントロールパネルを操作。飛空艇の両側面から金色のエネルギー弾が次々と撃ち出される。
エネルギー弾はドゥームズデイにほぼ全弾命中した……が、いくつかはドゥームズデイの左手甲に当たったためダメージを与えられずに終わる。残るエネルギー弾は全てドゥームズデイの雷電の左腕に命中したが、逆にその雷電の腕の中に呑み込まれてしまった。
「ミサイルのエネルギーより、ドゥームズデイ本体を構成する雷電エネルギーの方が強力なんだ……。ミサイルじゃドゥームズデイにダメージを与えられない!」
今の攻撃の結果を分析し、スピカがコックピット内の皆にそう伝えた。コックピット内の子供たちも動揺している。
さらにスピカは、アラムの様子を見てみた。
呼吸が荒い。どこか顔色も悪く、疲れ果てている様子だ。
「はっ……! はぁっ……!」
「早くもアラムくんに精神エネルギーの限界が来てるね……。無理もない。いくら北園ちゃんの操舵技術を再現しているとはいえ、もともと超能力者としての地力が違う。エネルギー量はアラムくんより北園ちゃんの方がずっと上だもん……」
おまけに、アラムは北園の操舵技術を再現するため、常に”念読能力”を行使しなければならない。つまり、飛空艇に送り込む分と超能力の発動に使う分で、二重に精神エネルギーを消費しているということだ。仕方ないことだが、アラムは燃費も北園よりずっと悪い。
休んでいた北園も、アラムの限界を感じ取ったようだ。立ち上がってアラムのもとまで歩み寄り、操縦手交代を促した。
「アラムくん、代わって! 私も、おかげでもう十分に休めたから! アラムくんもゆっくり休んで!」
「わ、わかった……」
「『もしも』の時は、着陸だけでもお願いね! そのためにもしっかり体力を回復させてね!」
「うん……!」
この戦いにおいては、休息もまた大事な戦闘行動の一つ。それを理解し、アラムは力強く北園に返事をした。お言葉に甘えてしっかり休ませてもらうという意思を表明するように。
そして飛空艇の操縦手が、アラムから北園に交代した。
その一方で、飛空艇の甲板ではミオンとエヴァが遠距離攻撃を行なっている。
「えい! ”如来神掌”! ”如来神掌”!」
「焼き尽くせ……”ラグナロクの大火”!!」
ドゥームズデイは、ミオンが放った衝撃波を雷電の二の腕で防御。建物一つを粉砕するほどの巨大な衝撃波のはずだが、ドゥームズデイの大きさと比較すると、さながら赤子の手だ。逆に雷電の腕に呑まれてしまう。
エヴァが撃ち出した火炎放射は、ドゥームズデイのサイズに負けず劣らずの凄まじいスケールだった。ドゥームズデイもこれを受け止めるのは流石に危ないと判断したか、飛空艇から距離を取って火炎放射から逃れてしまう。
「大きいくせにすばしっこいですね……」
「おまけにヤツ自身が強力なエネルギーの集合体だから、オレたちの攻撃手段も限られると来たもんだ。必殺の火力じゃねぇと、ヤツにはダメージ一つすら与えられねぇ」
「同じ電撃の異能者として、ドゥームズデイのエネルギーは俺より遥かに上だ。俺の電撃ではドゥームズデイに一切の傷を付けることさえ叶わない。難儀なものだ」
悩ましい表情を浮かべる日影たち。まだこの最終戦は始まったばかりだが、いずれドゥームズデイは飛空艇の飛行軌道を見切るであろう。そうなればドゥームズデイが攻めの姿勢を強めてくる。攻撃が激しくない今のうちに、ドゥームズデイへの対抗策を見つけなければ勝ち目は限りなくゼロである。
そんな中、日向はドゥームズデイの「ある行動」と「ある部位」に注目していた。
「さっきの動作……いったい何のために……?」