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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第22章 その艇は嵐を往く
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第1266話 四次元の挟撃

 日向たちがドゥームズデイ本体と戦っているその一方で、こちらは北園が操縦する飛空艇の様子。


 飛空艇は現在、異能の戦闘機と嵐の戦艦、さらには巨大戦艦からも攻撃を受けている。巨大戦艦の右舷と左舷の一列に並んだハッチが開き、そこから大量のミサイルが射出される。


 真っ直ぐ打ち上げられたミサイルは、巨大戦艦の上空を飛んでいる飛空艇を下から狙う。それをモニターで確認していたオネスト・フューチャーズ・スクールの子供たちが、北園にミサイル攻撃を知らせる。


「おねえちゃん! したからミサイルきてる!」


「りょーかい! 右にずれて避けるよ! しっかり掴まっててね!」


 北園はそう返事をして、操縦桿を右に切る。

 飛空艇の機体も時計回りに傾き、飛空艇が右へと移動する。


 先ほどまで飛空艇が飛んでいた位置を、下から無数のミサイルが突き上げる。すでに何もいない空間をミサイルが通過し、今度は飛空艇の頭上を取って降り注いできた。


 北園は飛空艇の速度を上げながら左へと移動し、上から戻ってきたミサイルも回避。これが今日初めて飛空艇を操縦しているというのだから、彼女の呑み込みの早さもオネスト・フューチャーズ・スクールの子供たちに負けず劣らずだ。


「私、意外と飛行機のパイロットとか向いてるのかな?」


「お姉ちゃん! 今度は左から飛行機が二機来てる! 金色の奴だよ!」


「雷天だね! あれのミサイルは三種類の戦闘機の中で一番やばいから、優先的にやっつけなきゃ!」


「迎え撃つよ! ミサイル発射!」


 飛空艇の左側面から金色のエネルギー弾が発射され、雷天が撃ってきたミサイルと空中で激突。それぞれ誘爆して消滅した。しかし飛空艇のエネルギー弾は全て消滅したわけではなく、残った弾が二機の雷天に命中、撃墜した。


「おねえちゃん! こんどはふーてん! みっつ!」


 生徒の女の子がそう叫んだ。彼女の言う通り、飛空艇の右方向から風天が三機、突撃してくる。風の異能を用いた透明化能力を使用しているようだが、飛空艇のセンサーは風天の異能のエネルギーを感知して、モニターにはっきりと風天の姿を表示している。


「ちょっと多いね……! ミサイル撃ちまくって! 近づかれる前にできるだけ倒して!」


「分かった! 撃て撃てー!」


 生徒の男の子たちの操作で、飛空艇が両サイドからエネルギー弾を次々と発射。弾幕を張り、向かってくる三機の風天を迎え撃つ。


 風天は、展開されるエネルギー弾の弾幕に臆することなく、そのまま風のミサイルを発射しながら突っ込んでくる。


 その結果、三機の風天は全て飛空艇のエネルギー弾に被弾し、大破。発射した風のミサイルはいくつかがエネルギー弾の弾幕を()(くぐ)って飛空艇に命中。しかし展開していたバリアーのお陰で直撃は(まぬが)れた。


 先ほどの三機の風天のうち、一機が速度と軌道を変えることなく飛空艇へと突進してきた。飛空艇は高度を下げて風天の回避を試みる。幸い、風天の特攻はバリアーの上部を少しかすっただけに終わった。まともにぶつけられていたら、バリアーの耐久力を大きく減らされていただろう。


 今度は二機の雨天が飛空艇の頭上から仕掛けようとしているようだ。まっすぐ降下しながらミサイル発射の用意をしている。


 しかしそこへロックフォールの息子のユピテルが飛来。雷光のような速度で一機の雨天を下から貫き、そのまま帰ってきて二機目の雨天を上からぶち抜いた。雨天は大破し、水となって空中で弾けた。


 そのユピテルを風天が狙う。

 風のミサイルを多数発射して、ユピテルを撃墜しようとしてきた。


 ユピテルはミサイルに負けない速度で飛びまわり、追跡してくるミサイル群から逃げる。やがて見事にミサイルを振り切り、そのまま風天に突撃して左翼を破壊、撃墜。逆襲に成功した。


 息子のユピテルに負けず、ロックフォールも奮闘している。岩の羽根を飛ばして、正面から突撃してきた二機の雷天に命中させる。自身の加速度も手伝って、二機の雷天はロックフォールの岩の羽根によってズタズタに破壊された。


 だが、雷天も負けじとミサイルを撃ち返していた。数発はロックフォールが飛ばした岩の羽根とぶつかり合って誘爆したが、二発ほどがロックフォールのわき腹に命中してしまう。


「ぐぅぅぅっ!?」


 急所にダメージを負ってしまったロックフォール。たまらず飛空艇の上へと移動し、着地した。


「すまない、大きな傷を受けた……。いったん休ませてもらいたい……」


『りょーかいだよ! ゆっくり休んで! 本当なら私が”治癒能力(ヒーリング)”をかけてあげたいけど、飛空艇の操縦を止めるわけにはいかないから……ごめん!』


 飛空艇のアナウンスでロックフォールに返事をする北園。すると、北園と同じくコックピットにいるアラムもアナウンスでロックフォールに声をかけた。


『ロックフォール! 大丈夫!?』


「アラムか。ああ、問題ない。少し休めば気にならなくなる傷だ」


『嘘でしょ! すごくひどい怪我に見えるよ! お願いだから無理はしないで! あの酸の雨で、僕は家族も帰る場所も()くしちゃったんだ! これ以上は何も失いたくないんだよ! ロックフォールもその中に入ってるんだからね!』


「アラム……」


 アラムの言葉を受けて、ロックフォールは静かに、そして優しく目を細めた。


 ……と、そこへ、今度は二隻の嵐の戦艦が攻撃を仕掛けてきた。左右から飛空艇を挟み、艦体に取り付けられた雷砲を一斉射撃。


「みぎとひだりからいっしょにこうげきしてきたよ!?」


「北園ちゃん、上か下に逃げてー!」


「りょーかいです!」


 スピカの指示を受けて、コックピットの北園が操縦桿を上へと倒す。すると飛空艇の機体が前へと傾き、飛空艇は高度を下げ始める。北園は下に逃げることを選択したようだ。


 ……だが、下にいる巨大戦艦がハッチから大量のミサイルを発射。


「や、やばいー!? 北園ちゃん、やっぱり取り消し! 前と後ろに動いて、うまく雷砲とミサイルを回避するしかないよー!」


「り、りょーかい! うまくできるかな……!?」


 左右からの雷の砲弾と、下から襲い来るミサイルに晒される飛空艇。北園も頑張って飛空艇を操縦しているが、かなりの数の砲弾とミサイルが飛空艇に命中してしまった。バリアーが保ってくれたので機体そのものにダメージは無いが、バリアーは破壊される寸前まで削られてしまった。


 その時、スピカは操縦桿を握る北園をチラリと見た。

 北園は額が汗ばんでおり、呼吸も乱れている。ひどく疲れているような様子だ。


「はぁっ……はぁ……」


「北園ちゃん、大丈夫!?」


「スピカさん……。はいっ、これくらい、まだまだです……!」


 北園は元気に返事をしたが、その元気も無理やり振り絞ったもののように見える。


 スピカが抱いていたという懸念点はこれだ。

 北園の精神エネルギーの残量の問題である。


 最初のフライトで必要以上にエネルギーを消耗してしまった北園は、その経験を活かしてエネルギー消費のペース配分のコツを掴み、この二度目のフライトはここまで危なげなく続けてみせた。だというのに、ここに来て突然の消耗。


 この戦いが一回目のフライトの時より長引いているというのもある。しかし一番の理由はオネスト・フューチャーズ・スクールの子供たちが飛空艇の操縦に加わったことだ。


 彼らが担当するミサイルの発射も、北園の精神エネルギーを消費して行なわれるものだ。北園が一人で操縦していた時は、このミサイルの発射もペース配分を考えて行なっていた。だが北園のペース配分が分からない子供たちがミサイルを担当することで、そのペース配分が乱れ始めてしまっている。


「あらかじめ子供たちにも、その仕組みを前もって教えてはいた。北園ちゃんのためにも無駄撃ちは控えてほしいっていうことも伝えておいた。この子たちが北園ちゃんに配慮してくれているのは見て取れるけど、それでもやっぱり他人が他人のエネルギーを使う以上、完璧なペース管理は不可能だ……」


 北園の身に起こっていることを分析しながら、スピカがそうつぶやいた。


 こちらを手伝ってくれている子供たちが、逆に北園を追い込んでしまっている。何とも皮肉な状況だが、彼らの手助けがあったからこそ途中の戦闘機の襲撃を無事に乗り切ることができたのも忘れてはならない。


「なかなかどうしてこう、何ごとも全部うまくいくってワケにはいかないよねー……!」


 そう言って、スピカは悔しそうに微笑んだ。

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