第1265話 嵐の王
ドゥームズデイの巨大戦艦に乗り込んだ日向たち。
いよいよドゥームズデイ本体との直接戦闘が始まった。
まずは本堂が攻撃を仕掛けた。
右腕に大振りの刃を生やし、大きく振りかぶって斬りかかる。
「はっ……!」
「ruuuuu...!!」
ドゥームズデイは本堂の斬撃を難なく受け止める。本堂は左腕にも刃を生やし、続けて八回、十三回と連続でドゥームズデイを斬りつける。その斬撃の速度が凄まじく、あっという間に三十回の斬撃を放ってみせた。
しかしドゥームズデイはその全てを雷電の大剣で防ぎ切った。長大な剣なので非常に取り回しが悪そうだが、防御の動きを必要最小限に抑えることで無駄なく本堂の斬撃を凌いだ。
「今のを完璧に防御するか……!」
「ruuuoooo!!」
ドゥームズデイが大剣を振り払い、本堂が後退。
後ろに下がった本堂に向かって、ドゥームズデイが大剣を振り下ろす。
振り下ろされた大剣から雷電エネルギーの刃が射出される。甲板の床を削りながら猛スピードで本堂に迫る。
「くっ……!」
本堂は両腕の刃を交差させて、ドゥームズデイが放った雷電の刃をガード。強烈な衝撃と共に本堂がさらに後ろへと押し下げられた。幸い、本堂のダメージは軽い。彼は電気を吸収できるので、受けたのは純粋に雷電の刃を受け止めた際の衝撃のみだ。
「エヴァの電磁のヴェールにより、斥力で奴の攻撃の勢いは削がれていたはずだ。その上で、この威力……。厄介だな」
ガードの衝撃で痺れた両腕を軽く振るいながら、本堂がそうつぶやく。
次に攻撃を仕掛けるのはシャオランだ。
まずは”衝波”を放ち、その撃ち出した”衝波”と共に攻め込む。
「やッ! やッ!」
放たれた二発の蒼い衝撃波がドゥームズデイへと迫る。
シャオランもその衝撃波の後を追う。単独による波状攻撃だ。
対するドゥームズデイは、左手の平から稲妻を発射。シャオランが放った二発の”衝波”をあっけなくぶち抜き、その先にいるシャオランに電撃が迫る。
しかしドゥームズデイが放った稲妻は、シャオランの目の前でエヴァの電磁のヴェールに阻まれた。シャオランは稲妻を突っ切りながらドゥームズデイへと迫る。
そしてシャオランが震脚を踏み、右拳をまっすぐ突き出した。
「せやぁぁッ!!」
強烈な打撃音が響き渡る。
だが、ドゥームズデイは左手の平でシャオランの打撃を受け止めていた。
受け止められたシャオランの拳が、強烈な熱さと痛みを感じた。
「痛っ……!?」
今のは、超高圧の電流が流されたような痛みだった。雷電で肉体が構築されているドゥームズデイに直接触れてしまったためだろう。シャオランは思わずドゥームズデイから右拳を引く。
ドゥームズデイは大剣を右から左に大きく一薙ぎしてシャオランを追撃。シャオランは後方へ飛んでドゥームズデイの攻撃を回避した。そして先ほど焼かれた右拳の調子を確かめる。ミオンも声をかけてきた。
「シャオランくん、大丈夫!?」
「う、うん……。けど、灰にまではされなかったけど、ちょっと触っただけですごい酷いことになってる……。たしかに素手で触ったら危なそうな見た目だとは思ってたけど、こんなにどうしようもないなんて……」
エネルギー体のような見た目に反して、ドゥームズデイには実体がある。そうでなくともシャオランは”空の練気法”により、エネルギー体を素手で殴ることも可能だ。このままドゥームズデイに打撃を仕掛けることは可能だが、先にシャオランの拳が駄目にされてしまうだろう。
「拳を使うのは最終手段。ボクと師匠は遠距離攻撃に徹するしかないかな……。せめて一発、強烈なのを叩き込んでやりたいけど……!」
「気持ちは分かるけど、今は私たちにできることをしましょう。私たちが活躍できずとも、最終的に勝利すれば、それで町の皆は浮かばれるのだから」
「う、うん……」
ミオンの言葉にシャオランは納得したようだが、それでもまだ歯がゆい気持ちは捨てきれていないようであった。
その一方で、今度は日影がドゥームズデイに攻撃を仕掛けていた。彼の最大火力である”オーバーヒート”を使用し、赤白い炎を纏いながら恐るべき勢いでドゥームズデイに斬撃を仕掛けまくっている。
「おるぁぁぁぁッ!!」
「ruuuuuu...!!」
ドゥームズデイは、この日影の斬撃も全て凌ぐ。さすがにこの日影の音速一歩手前の斬撃には余裕を見せられないか、左手も使って大剣の腹を盾にしている。
その構えた大剣の腹を一気に振るい、ドゥームズデイは日影を押し返した。
押し返された日影だが、すぐに距離は詰めない。
その代わり、今度はエヴァがドゥームズデイに灼熱の炎を放った。
「焼き尽くせ……”ラグナロクの大火”!!」
この艦橋の右端から左端まで逃げ場なく広がるエヴァの炎が、ドゥームズデイに襲い掛かる。ドゥームズデイはやはりと言うか、玉座から動かない。
ドゥームズデイが左の手のひらを突き出した。するとドゥームズデイを中心に雷電の結界が生成される。高エネルギーの雷電が灼熱の炎を相殺し、ドゥームズデイに炎を届かせない。
やがてエヴァの炎は止まり、ドゥームズデイも結界を解除。
それと同時に日影が”オーバーヒート”の推進力で突撃し、ドゥームズデイにマッハの斬撃を叩き込んだ。
「らぁぁぁぁッ!!」
「ruuuooo!!」
ドゥームズデイも右手に持った大剣を振りかぶり、日影めがけて振り下ろす。二人の斬撃の威力は互角。鍔迫り合いとなり、互いに互いを相手の斬撃ごと押し返そうとする。
……と、そこへ、日影の陰から日向が現れる。うまく日影の背後に隠れていたようだ。日影と鍔迫り合いしている隙を突いて、ドゥームズデイのわき腹に『太陽の牙』を突き立てにかかる。
「鉄砲玉スタイル! ぶっ刺してやる……!」
……が、ドゥームズデイはすぐさま左の手のひらを日向に向けて、そこから雷の光線を発射。電気が圧縮され過ぎて、中心部分が青黒く見えるほどのビーム攻撃だ。
「どわぁぁ!?」
間一髪で日向は上体を反らし、今の光線を回避。
しかし、日向の攻撃は完全に中断されてしまった。
それからドゥームズデイは大剣を左から右に薙ぎ払い、日向と日影を同時攻撃。二人はそれぞれの『太陽の牙』でガードするも、吹っ飛ばされてしまう。
「うおおおっ!?」
「ちぃッ!?」
日向は吹っ飛ばされると、背中から甲板に転がった。
一方、日影は足でブレーキをかけながらうまく着地。
ここでいったん日向たちの攻撃の手が止まる。
ドゥームズデイも攻撃は仕掛けて来ず、膠着状態となった。
日向は目の前のドゥームズデイを注視しながら、自分たちのはるか上を飛んでいる飛空艇をチラリと見る。
「異能の戦闘機が飛び交っている……。嵐の戦艦も飛空艇を砲撃してるみたいだ。北園さんたち、無事でいてくれよ……!」
六人がかりで挑んでいるのに、いまだにドゥームズデイは玉座から動かない。そんな自分たちの勝利の事も心配しないといけないが、それでも日向は北園たちのことを気にかけずにはいられなかった。