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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第22章 その艇は嵐を往く
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第1252話 溶解した難民キャンプ

 日影たちが雨の戦闘機を倒したからか、それとも単に時間の経過によるものか。難民キャンプに酸性雨を降らせていた雨空が薄くなり、やがてかき消えた。


 雨雲は消えたものの、相変わらず空は(くも)り模様だ。やはり狭山を倒し、アーリアの民と決着をつけない限り、この星に晴れ空は戻らないのだろう。


 飛空艇は難民キャンプ内に着陸する。これだけ大きな飛空艇が難民キャンプのど真ん中に着陸したら周囲にたいそうな迷惑がかかりそうなものだ。しかしもう、この飛空艇の着陸を咎める現地住民はこの場に一人もいない。一人も残ってはいない。


「全滅ね……。生きている人の気配がまったく感じられないわ……」


 ミオンがつぶやく。難民キャンプはテントも物資も、そして人間も、何もかもが溶解させられていた。あらゆるものが溶かされて気化したためか、難民キャンプ内は異臭が立ち込めている。


 北園とスピカも飛空艇から出てきている。飛空艇の留守はロックフォールに任せることにした。街の惨状を眺めながらスピカがつぶやく。


「街一つ消し飛ばす嵐の戦艦、そして広範囲に無差別攻撃を仕掛けることができる戦闘機……。ドゥームズデイ一体だけでも、広範囲に、迅速に、圧倒的火力で破壊活動ができるってワケだねー……。こりゃいよいよ放っておくワケにはいかなくなってきたね。なんとしてもこのあたりで倒しておかないと」


 そのスピカの言葉に、北園が反応する。


「ドゥームズデイ一体だけでも……ってことは、やっぱりこれまでの嵐の戦艦も戦闘機も、ドゥームズデイの能力の一部ってことですよね? スピカさんはドゥームズデイの能力について何か分かったの?」


「まぁねー。ミオンさんもだいたい察しは付いたんじゃないかな?」


「ええ。さっきの雨の戦闘機の爆散の仕方を見て確信したわ」


「ドゥームズデイの能力はいったいどういうものなのスピカさん? 兵器を作り出すような超能力?」


「そのあたりについては、日向くんたちと合流してからまとめて解説するよー。まぁ一つ言っておくと、たぶん嵐の戦艦や戦闘機の撃墜に役立つような情報ではない、ただの豆知識程度の情報だから、あまり気にしないでねー。今は日向くんたちとの合流を優先しようー」


 スピカの言葉にうなずき、北園たちはオネスト・フューチャーズ・スクールへ移動。この難民キャンプの中では唯一と言ってもいいレンガ造りの頑丈な建物も、今は天井や壁が崩れて無残な姿に成り果てていた。


「来てはみたが、アイツら本当にここにいるのか? 誰もいねぇように見えるが。学舎の下敷きになって死ぬようなタマでもねぇだろ」


「でもロックフォールさんは、日向くんたちはここにいるって言ってたよ?」


「とりあえず、瓦礫をどかしてみましょうか~。もしかしたら本当に下敷きになってるかもしれないし、日向くんたちでなくとも誰かが生き埋めになってる可能性もあるわ」


「ミオンの言う通りだな。よっしゃ、手分けして瓦礫を片付けるぜ。オレはそっちをやるから、ミオンはそっちを頼んだ」


「いいえ、日影くんは後ろで見てるだけでいいわよ~」


「は?」


 日影にそう言うと、ミオンは”地の練気法”を発動。彼女の身体から砂色のオーラが湧き上がる。そして瓦礫の一つをコツンと殴りつけた。


 ミオンに殴られた瓦礫は、その一発だけで粉々になった。ただ粉砕されたのではなく、自らの重みに耐えきれずに自壊したような崩れ方だった。恐らくはミオンの打撃の技術により内部から破壊されたのだろう。


 そのままミオンは手当たり次第に瓦礫を殴りつけていく。

 山のようだった瓦礫が、どんどん砂のように細かく砕かれていく。


「いやムチャクチャしやがるなオイ……。ここの瓦礫、全部殴って撤去するつもりかよ」


「力任せに殴ったら下敷きになっているかもしれない生存者にまで衝撃を与えてしまう。だから内部破壊に重点を置いているっていうおまけ付きだねー……」


「こればっかりは”オーバードライヴ”を使ったとしてもオレには真似できねぇな。力任せに殴るしか能がねぇからな」


 一分もしないうちに、ミオンは学舎内の教室の一室と思われる場所の瓦礫をほぼ全て破壊した。すると、その下の床に大きな穴が開いているのを見つけた。酸や崩落した天井で床が崩れた、というよりはもっと人為的に開けられた穴のように見える。


「もしかして、日向くんたちはこの穴の中に隠れたのかな?」


「パッと見た感じ、中はけっこう深そうだぞ。エヴァの能力で掘ったのか?」


「風の流れを感じるわね~……。これたぶん、どこかに通じるトンネルになってると思うわ~」


「それじゃあ、日向くんたちはこのトンネルを通ってどこかに移動したってこと?」


「恐らくはね~。人間の足で通り抜けられるトンネルなら、そう遠い場所には通じていないはず。急いで飛空艇で周囲を捜索しましょう」


 ミオンの言葉に三人はうなずく。

 そのすぐ後で、スピカが何か思いついたようにミオンに声をかけた。


「ミオンさんー。あなただけでもこのトンネルを通って、日向くんたちを直接追いかけてみてくれいないかなー?」


「なるほどね。四人との合流を確実なものにできるのはもちろん、トンネルの先に彼らがいなかった場合でも、このトンネルがどこに通じているかを正確に知ることができる。トンネルの先を起点にまた彼らを捜索すれば、発見できる確率はグッと上がる……ということね?」


「そゆことー。それにミオンさんは一応”精神感応(テレパシー)”も使えるわけだし、こっちと連絡できるからねー」


 一見、完璧な作戦に思えるスピカの提案。

 しかしミオンは、少し悩ましげな表情をしていた。


「ん~……悪くはないのだけれどね~……」


「何か問題があったー?」


「心配し過ぎかもしれないけどね、もしもこのトンネルを掘ったのが日向くんたちじゃなくて、敵だったとしたら?」


「あー……。ワタシたちを分断するための罠かもしれないね」


「そういうこと。レッドラム……彼らは、わりとどんな手でも使ってくるもの。超能力も合わせれば、けっこうえげつないトラップも洞窟の中に仕掛けることができるはずよ。私でも手を焼くレベルのね。迂闊に飛び込むのは危険だと思うわ」


「お二人さんよ、そろそろ時間がもったいねぇぜ。このトンネルに入らねぇなら入らねぇで良いから、さっさと動いた方がいいんじゃねぇか?」


「それもそうだねー。それじゃあミオンさんトンネル投入作戦は中断して、皆で空から探そっか」


 スピカの言葉に三人はうなずき、急いで飛空艇へと戻り始める。

 はたして彼らは、今度こそ無事に合流できるのだろうか。

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