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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第22章 その艇は嵐を往く
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第1239話 巨鳥との再会

 日向たちの頭上に、いつの間にか大きな鳥が飛来していた。太陽の光を(さえぎ)りながら、日向たちのもとへ降りてくる。


「大きな鳥だね……マモノかな? 下手な家よりずっと大きい……」


「ん? ちょい待ち。俺、あの鳥、見たことある。ロックフォールじゃないか?」


「え? あ……ホントだ! ボクたち五人でアフリカに行ったとき、最終的に味方になってくれた、あの時の!」


 ロックフォール。

 日向たちが狭山の依頼でアフリカに向かい、そこで一度は敵対した岩石の巨鳥だ。羽毛という羽毛が岩石のように硬く頑丈で、自分よりも大きな体格のマモノの攻撃も受け止めてみせていた。


 ロックフォールは自分の住処に侵攻してきたマモノたちに、亡き妻の忘れ形見である卵を奪われてしまっていた。その卵を人質に取られ、マモノたちの代わりに人間をさらって彼らのエサにしようとしていた。


 しかし、その時にさらった少年アラムと心を通わせ、彼に協力。卵を人質に取られている以上マモノたちに逆らうことはできなかったため、表向きは日向たちと敵対しつつ、裏ではアラム少年を救出できるように日向たちを手引きした。


 日向がアラム少年を救出し、ロックフォールの卵をマモノたちから解放すると、ロックフォールも完全にマモノたちに反旗を翻し、共に戦ってくれたのだ。


 そんなロックフォールが、日向たちの頭上を飛んでいる。しかしまだ分からない。あの時とは同種なだけの、別の個体かもしれない。日向たちは少し緊張した面持ちで、様子を窺うようにロックフォールを見上げている。


「もしも別の個体なら……腹を空かせて俺たちを襲うつもりなのかもしれない……」


 そうなれば、戦闘は避けられない。

 日向たちも、嫌でも緊張するというものだ。


 やがて、鳴き声でも上げるつもりなのか、ロックフォールがゆっくりと(くちばし)を開いた。


「お前たちは……あの時の人間か? 名はたしか日下部日向だったな?」


(しゃべ)った……! 人間の言葉を喋る! お前、やっぱりあの時のロックフォールか!」


 日向たちがあの時に出会ったロックフォールは、人間の言葉を話すことができていた。つまりもう疑いようがない。このロックフォールが例の、日向たちの味方になってくれたロックフォールである。


 こんなところで顔見知りに出会うとは夢にも思わず、日向とシャオランは完全に顔が(ほころ)んでいる。本堂もどこか楽しそうな様子だ。エヴァだけはあの時はいなかったので蚊帳の外である。


「久しいな。お前たち、こんな時期にいったいここへ何をしに来たのだ?」


「まぁ好きで来たわけじゃないというか、不時着したというか」


「何やら大変な様子のようだな。アラムたちが住んでいる集落へ行くか? ひとまず腰を落ち着けることくらいはできるだろう」


「それってここから遠い? あまり移動すると、俺たちを探してくれているであろう残りのメンバーが俺たちを見つけられなくなるかも……」


「そう遠くはない。一キロあるかないかの距離だ」


「なるほど……。皆どうする?」


 日向は仲間たちにも意見を求めてみる。

 皆、おおむね肯定的な反応だった。


「アラムくんたちがどうなってるかも気になるし、ちょっと寄ってみるのはアリだと思うなぁボクは」


「もしも衣類を分けてもらえるなら、エヴァの服を修繕するまでの借着を貰えるかもしれん」


「そうでした、エヴァの服もどうにかしないといけないか。それじゃあ立ち寄らせてもらおうかな」


「分かった。皆、我の背中に乗るがいい。集落までお前たちを運ぼう」


 ロックフォールに言われ、日向たちはロックフォールの背中にしがみつく。人間四人を乗せて、自分自身も非常に重い岩石の身体だというのに、ロックフォールは容易く空へと飛び上がった。



◆     ◆     ◆



 一方その頃。

 こちらは北園が操縦する飛空艇。


 あれから日影とミオンが飛空艇の守備を務めてくれていたが、あれ以上の戦闘機が襲ってくることはなかった。飛空艇はどうにか戦線離脱に成功したようだ。日影とミオンもコックピット内に戻っている。


「はぁー、あぶなかったぁー……」


「いやー、やっぱり練習ほぼ無しのぶっつけ本番で敵のボスを倒しに行くっていうのはちょっと無茶だったかなー反省。北園ちゃんも無理させちゃってゴメンねー……」


「私は大丈夫です! けど……さすがにもうヘトヘトですね……どこかに着陸して休憩したいかな……」


「その前に日向くんたちを回収しないといけないんだけど……あの子たち遅いねー? 日影くんとミオンさんが駆けつけてくれて、もうけっこう時間が経ってるのに」


「私たちがあの戦闘機から逃げすぎちゃって、私たちが今どこにいるのか分からないとか?」


「この飛空艇のシステムは、すでにあの子たちの生体反応を認識している。ある程度の範囲内なら、この飛空艇があの子たちの反応を拾ってモニターに表示してくれるはずだけど、それもない……」


 首をかしげるスピカ。

 その彼女のつぶやきを聞いて、日影とミオンが顔を見合わせる。


「こいつぁマジで、向こうで何かが起こったのかもな……」


「あの子たちもあの戦闘機に襲われたとなると、ちょっと心配だものね……。あれの速度と火力はかなりのもの。スピードにものを言わせて不意打ちされたら、いくらあの子たちでも無事では済まないかも……」


 ミオンとやり取りを交わした日影は、そのままスピカに進言した。


「スピカ。もうしばらくこの辺でアイツらを探し回って、それでも見つからなかったら地上を探してみるべきだ。アイツらもあの戦闘機と戦って、そして()とされた可能性がある」


「も、もしそうだとしたら一大事じゃんー!? 気合い入れて探さないとー!」


 飛空艇のメンバーも日向たちの異常事態を察知し、捜索に乗り出してくれた。日向のタイムリミットのことも考えると、一刻も早く合流したいところだ。

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