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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第22章 その艇は嵐を往く
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第1236話 嵐呼ぶ戦闘機

 日影とミオンが飛空艇の援護に向かい、結果として戦力が落ちた日向たちのグループ。


 その時を待っていたとばかりに襲撃してきた水色の戦闘機。キラキラと光を反射する何かを弾丸のように日向に浴びせてきた。


 これを喰らってしまいダメージを受けた日向だが、攻撃の正体は依然として不明。普通の戦闘機のように(なまり)の弾丸を撃ち出してきたわけではないらしい。


「傷は身体を貫通こそしなかったけど、深く(えぐ)られたような痛みだった。本当に何を撃ってきたんだ?」


「普通の弾丸を射出してきたならば、今ごろ日向の肉体はバラバラに破壊されていそうなものだが、そうはならなかった。弾丸よりも威力は低いということか?」


「確かにそうかもしれません。本堂さんやシャオランあたりなら無理やり耐えきれそうかもです。やってみますか?」


「良いだろう。どのみち、エヴァの力を借りて空を飛んでいるこの状態では、俺の軽業も形無しだ。今できる戦い方を実行しなければな」


 そう言って本堂は、次に水色の戦闘機が突っ込んでくるであろう進路上に移動し、どっしりと構える。水色の戦闘機が撃ち出してくる何かを正面から耐え、水色の戦闘機にカウンターを仕掛ける構えだ。


 本堂の目論見どおり、水色の戦闘機が突撃してきた。

 進路上にいる本堂を狙って、日向の時と同じく何かを撃ち出してくる。


 本堂は特に顔面を重点的にガードしながら、身体全体でこの攻撃を受ける。


「ぬ……!」


 痛みで顔をしかめる本堂。だが現在の彼はマモノと化し、肉体も非常に強靭なものに進化している。日向ほど傷は深くは(えぐ)られていない。


 結果として、本堂はかなり余裕を持って水色の戦闘機の攻撃に耐えきってみせた。そしてそのまま突っ込んでくる水色の戦闘機を、右腕の刃で叩き斬る。


「はっ……!」


 本堂の攻撃を察知して回避しようとした水色の戦闘機だったが、その回避は間に合わず右翼を切断される。こうなってしまえば当然ながら戦闘機はもう飛べず、そのまま雲海の中へ沈んでいった。


「本堂さんナイス! 本当に生身で戦闘機()としちゃったよこの人!」


「皆さん、油断しないでください。最初に言いましたが敵は二体です。まだあと一体、姿は見せずに私たちの周りを飛び回っています」


 ガッツポーズして喜んだ日向を、エヴァがそう言って落ち着かせる。その一方で本堂は特に何も言うことはなく、ただ静かにその場に(たたず)んでいる。


 ……いや、本堂の様子がおかしい。だんだんと表情が苦しげになり、水色の戦闘機に撃たれた傷を手で押さえ始めた。


「ぐ……く……!?」


「ほ、本堂さん!? どうしました!?」


「傷が熱い……火で焼かれるようだ……」


「ええ!? でも、本堂さんの身体が燃えているような感じはまったく……」


 日向は、うずくまってしまっている本堂の身体を覗き込み、彼が手で押さえていない傷を確認してみる。すると、本堂の傷が真っ赤に焼けただれていたのだ。


「う、うわ!? ひどい怪我!? 大丈夫ですか本堂さん!?」


「ああ……命に係わるようなダメージではない……。体感してようやく分かったが、あの戦闘機が撃ち出してきたのは酸だ。硫酸を高圧縮して弾丸のように撃ち出してきたのだ」


「酸……! そうか、俺が撃たれても身体に何も残らなかったのは、撃ち込んできたものが液体だったからか! 焼かれるような痛みは、感じる前に”復讐火(リベンジェンス)”で酸ごと蒸発させちゃって……。言われてみれば、なんか俺の身体からすっぱいニオイがするし……!」


「顔を重点的に防御していたのは不幸中の幸いだった……」


「目を撃たれていたら潰されていたでしょうからね……」


「いや、折角のハンサム顔が台無しになるところだったからな」


「口を撃たれて喋れなくなってしまえばよかったのに」


 冗談を交えてはいるものの、本堂が受けたダメージは大きい。彼の体力にはまだ余裕はあるだろうが、しばらくは動きに支障が出てしまうだろう。


 ……と、その時。

 エヴァとシャオランが、同時に同じ方向を振り向いた。


「二つめの気配が近づいてくる……!」


「風の練気法”風見鶏”。大気に揺らぎが生じた! こっちに来る!」


 二人は、二機目の戦闘機が接近してきたのを察知したようだ。振り向くと同時に迎撃の技を繰り出す構え。


 ……しかし。

 二人が振り向いたその先に、敵機の姿は無かった。


「あれ、いない……?」


「え、いな……いや、何かいる!」


 シャオランが叫んだ。

 無色透明の、空間の揺らぎのような何かがいる。


 だが、(とら)えた時にはもう遅い。その無色透明の何かは音速の勢いで突っ込んできて、日向たち四人を()ね飛ばしてしまった。


「ぐぁぁ!?」


「ぬぐっ……!?」


「あぐぅっ!?」


「うあっ……!?」


 あっけなく蹴散らされてしまう四人。

 そのまま真っ逆さまに雲海へと落ちていってしまう。


 落ちながら、日向は先ほど自分たちを撥ね飛ばした敵の正体を見る。


 無色透明の何かは、日向たちに衝突した衝撃によるものか、その透明度が少し落ちていた。それで確認できたのだが、日向たちを撥ね飛ばしたのは緑色の装甲を持つ戦闘機だった。


「緑色の戦闘機……! ああ、もしかして……!」


 この時、日向の頭の中で一つの考えがつながる。


 もともと星の牙”(テンペスト)”は三つの要素で構成されている。

 すなわち”暴風(トルネード)”、”サンダーボルト”、”大雨レインストーム”。


 先ほど本堂が撃墜した水色の戦闘機は、酸の機銃を撃ってきていた。あれは恐らく”大雨”の要素だ。酸性雨の特性を持っていたのだろう。


 そう仮定すると、あの緑色の戦闘機が操る異能は風だと推測される。あの透明化能力は、水蒸気を含んだ風のベールを機体に(まと)わせることで、その水蒸気で光を屈折させ、機体に光が当たらないようにしている。機体が光を反射していないから透明に見えるのだ。


「前に戦った嵐の三狐……スイゲツやライコ、それからフウビと同じだ。あの戦闘機は、それぞれ独立した”嵐”の異能を持っているんだ……!」

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