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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第22章 その艇は嵐を往く
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第1231話 派手に沈める

 襲撃してきた二隻の嵐の戦艦のうち、一隻に乗り込んだ日向たち。北園とスピカは飛空艇に残っているためここにはいない。


 さっそくエヴァが”ティアマットの鳴動”で、先ほどのようにこの嵐の戦艦も粉砕しようとする。


 だが最初に向かわせた戦艦が撃破されたことで「このメンバーの中ではエヴァが一番危険だ」と学習したのだろうか。この戦艦のほぼ全ての三連装砲がエヴァを集中して狙っており、四方八方から雷弾が撃ち込まれている。


 エヴァは電磁力のフィールドを生成し、その斥力で雷弾を()らしたり弾き返したりして防御しているので無事だ。しかし、これでは戦艦本体を攻撃するどころではない。


「攻撃が激しいですね……。皆さん、砲台の破壊をお願いします……」


 そのエヴァの声を受けて、全員がさっそく砲台の破壊に取り掛かる。本堂が右腕の刃で三連装砲の砲身を切り裂き、日影が”オーバーヒート”で砲台に激突する。シャオランとミオンは素手で砲台を破壊して回っている。


 そんな中、日向だけは何もしていない。


 彼は先ほど地上で”星殺閃光(バスタードノヴァ)”を使用したばかりだ。まだ二発目が撃てるほどエネルギーは回復していない。とはいえ、その一段下である”点火(イグニッション)”および”紅炎奔流(ヒートウェイブ)”は一回だけ使えるようだ。


 だが、日向は”点火(イグニッション)”を使わない。

 なぜなら現在、他の仲間たちに使用を止められているからだ。


「日向。お前の”星殺閃光(バスタードノヴァ)”は『星殺し』との戦いにおいて切り札になり得る。ここでわざわざ”点火(イグニッション)”にエネルギーを回して、肝心の”星殺閃光(バスタードノヴァ)”の再使用可能時間を引き延ばす必要はない」


「さっきはボクたちだけでも撃墜できたんだから、次もきっと大丈夫! ヒューガはダメージを受けないように警戒してて! 傷の回復に使うエネルギーだってもったいないからね!」


「わ、分かった。けどそれなら、俺って皆と一緒にこの戦艦に乗り込んだ意味ある……?」


 本堂とシャオランに言われて、気まずそうに尋ねる日向。せめて何かできることはないかと思い、この戦艦を観察してみることにした。もしかしたら何か判明することもあるかもしれない。


 その時、一門の三連装砲が日向に向かって砲撃。

 戦艦の観察に意識を集中させていた日向は、不意を突かれてしまう。


「あ、やば……!」


 ……が、その日向の前に本堂が立って、雷弾を受け止めてくれた。マモノ化によって超帯電体質も強化された今の彼は、雷撃級の超高電圧も難なくその身で吸収することができる。


「シャオランにああ言われたばかりだというのに、早速被弾しそうになるとは恐れ入る」


「す、すみません……」


「なに、冗談だ。あまり気を落とすな」


 日向にそう告げて、本堂は戦闘に戻る。

 先ほど日向に雷弾を発射した三連装砲めがけて飛び掛かった。


 跳躍した本堂は、その甲殻に包まれて肥大化した右腕で、三連装砲を上から殴って叩き潰した。


「はっ……!」


 その一撃で三連装砲がペシャンコになる。

 今の彼の腕力は人間の……いや、もはや生物の範疇ではない。


 本堂だけでなく、日影も暴れ回っている。彼は”オーバーヒート”を使用し、甲板の上のあちこちを高速移動。次から次へと三連装砲を焼き斬り捨てている。


「おるぁぁぁぁッ!!」


 他の三連装砲が日影の攻撃を阻止するべく砲撃しているが、日影にはまったく当たらない。偶然ではなく、日影は自分に迫ってくる雷弾をしっかりと(とら)えて回避している。砲撃の音、雷弾が飛んでくる音、それらを戦いながらも聞き逃さず、だいたいの感覚で回避行動を行なう。それがうまく噛み合い、砲撃を見ずとも回避してみせている。およそ人間業ではない。


 日影や本堂に負けず、シャオランも健闘している。”空の練気法”を使っているとはいえ、いつにも増して、その目にはやる気が満ちている。


 そんな、いつもとは少し違うシャオランの様子に気づいたミオンが声をかけた。


「シャオランくん、張り切ってるわね~」


「うん。だってドゥームズデイは父さんと母さんとハオラン、それからリンファ、町の皆の直接の仇だからね。絶対に負けられないよ……!」


「あら頼もしい~! でも油断しちゃダメよ? どんな時でも慌てない。どんな相手でも焦らない。戦いの鉄則よ~」


 そう言いながら、ミオンは”風の気質”を(まと)わせた右足を思いっきり振り上げる。すると同時に真空の刃がミオンの足から発射され、ミオンに向かって飛んできていた雷弾ごと、その先の三連装砲を真っ二つにしてみせた。


「師匠が付いてるなら、もうどんな『星殺し』が来ても負ける気しないや」


 つぶやいて、シャオランは火の練気法の”炎龍”を使用。”空の気質”によって蒼白く変色したエネルギー波が放たれ、シャオランはそれを薙ぎ払う。巻き込まれた砲台が次々と爆破された。


 皆が大暴れする中、この戦艦の観察に努めていた日向は、何かに気づいたようだ。


「いっそ内部に侵入して内側から破壊工作でもしてやろうか、なんて思ったけど……この戦艦、中に入れそうな場所がないぞ……?」


 日向の言う通り、この戦艦には出入り口の類がまったく無い。ドアなどはもちろん、どこかの床がエレベーターのようになっている、などということもない。


 それから次に、日向は仲間たちの攻撃で破壊された甲板や装甲を見てみる。内部への風穴が開いたり電気系統が剥き出しになったりということもなく、破壊された部分のその先には何もない。ただ壁が崩れたようになっているだけだ。


「最初に俺たちが乗り込んで撃墜した戦艦もそんな感じだったよな……。もしかしてこの戦艦、中に入れない……というより、そもそも内部そのものが存在しない?」


 明らかに戦艦としては異様な構造。この嵐の戦艦はいったい何なのか。どのように製造されているのか。この戦艦がドゥームズデイに関連しているのは間違いなさそうだが、ドゥームズデイにとってこの戦艦は何なのか。まだまだ謎は多い。


 そうこうしているうちに、エヴァを狙っていた三連装砲の弾幕も随分と薄くなってきた。エヴァもようやく自由に動けるようになる。


「皆さん、ありがとうございます。それでは満を持して”ティアマットの鳴動”!!」


 狙われ続けた鬱憤を晴らすかの如く、震動エネルギーを(まと)わせた杖を思いっきり甲板に叩きつけるエヴァ。一回だけでなく、二回、三回と立て続けに。


 今のエヴァの『星の力』から繰り出される”ティアマットの鳴動”、その威力は実に凄まじいもので、三回喰らわせただけでこの嵐の戦艦も大破した。あちこちから青い爆発が巻き起こり、まもなくこの戦艦が轟沈することを告げている。


 日向たちは爆発に巻き込まれる前に甲板を飛び立つ。

 その後ろで、嵐の戦艦は青い煙を複数個所から上げながら墜落していった。

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