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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第22章 その艇は嵐を往く
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第1230話 初めての操縦

 日向たちを乗せた飛空艇が離陸し、スペインを飛び去った。


 飛空艇の操縦桿が、操縦士である北園の精神エネルギーを吸い上げて動力へと変換しエンジンを稼働させている。その飛行速度はかなりのもので、一般的な旅客機よりも少し早いくらいか。


 コックピット内の内壁は立体モニターとなっており、外の景色が部屋全体に映し出されている。まるで戦闘機のキャノピーのように全方位三百六十度、真上まで見渡すことができる。


 操縦士を務める北園は現在、操縦に慣れることを心がけている。操縦しながら、隣にいるスピカにより詳しい操縦方法を教えてもらっているようだ。


「なるほど……思ったより簡単というか、分かりやすくていいですね!」


「うんうん。意外と見た目ほど複雑じゃないんだよねー。いま説明した機構をうまく扱えれば、キミたちが言ってたドゥームズデイとか嵐の戦艦と空中戦をやる時に大いに役に立つと思うよー」


「できればドゥームズデイと戦う前に少し練習したいけど、そんな時間もないよね。やりながら覚える!」


「時間がない……そういえば日向くんのタイムリミットがけっこうピンチだったんだよね。日向くん、いま残りのタイムリミットってどれくらいだっけー?」


 スピカが日向にそう尋ねてきた。

 日向は少し間をおいて、スピカの問いに答えた。


「えーと……あと18日ですね……」


「もう残り二週間ちょっとってことかー……そりゃキツいなー」


「ええ、本当にキツいです」


「ここからの18日間は、とにかく『星殺し』を狙いまくって、倒しまくって、一気に王子さまのもとまで突っ走る、ハードな日々になりそうだね」


「ですね。だから本当に、スピカさんたちがこの飛空艇を持ってきてくれて感謝してますよ。来てくれなかったら詰んでましたもん俺」


「いやー、できればもっと早く来てあげたかったけど、思いのほかミオンさんが修理作業に手間取っちゃってさー。ホント、ワケわからないくらいに武術一辺倒だよねーあの人」


「ちょっとスピカちゃん~、聞こえてるわよ~? 仕方ないじゃない、人間には向き不向きがあるのよ~! ああいう作業だってほぼ初めての体験だったし~!」


「人間に向き不向きがあるっていうのは否定しないですけど、アナタの場合はちょっと極端すぎる気もするんですけどねー」


 そう言ってスピカは肩をすくめてみせた。ちなみにシャオランは武術以外は弱点だらけな師匠に対して何とも言えない表情を向けていた。


 ……と、そんな調子で飛空艇が飛行を続けていると、前方の空がだんだんと黒くなってきた。ドゥームズデイとの距離が縮まっているのだろうか。


 その時、近くで控えていたエヴァが声を上げた。


「……ドゥームズデイと思われる気配から、また新たに二つの気配が分かれたのを感じました。恐らくはこれまでに戦ってきた嵐の戦艦と同種かと。こちらに向かっています」


「おっと、これは北園ちゃんのフライト戦デビュー戦かなー?」


「ええー!? こっちはまだ初心者も初心者なのにー!?」


 慌てふためく北園。

 そんな彼女の様子を見て、日向も考える。


「フライト戦で二機同時に相手するっていうのはプロでも難しかったはず。たしかに初心者の北園さんに戦艦二隻は荷が重いかもしれない。二隻のうちの一隻はさっきみたいに乗り込める人間で乗り込んで()とそう」


「ん、たしかにその方が北園ちゃんも安心かもねー。おっけー、それじゃあ一隻は任せるよー」


「この飛空艇、どこか外に出られる場所はあります?」


「あ、それは私が案内するわ~」


 ミオンがそう言ってコックピットを出ていき、北園とスピカ以外の全員もミオンについて行った。通路の転送ポータルを使いつつ、向かった先はこの飛空艇の甲板。もっと簡単に言えば、この飛空艇の屋根の上だ。


 かなりのスピードで飛んでいる飛空艇の屋外に出てきた日向たちだが、飛行の勢いで吹っ飛ばされるような様子はない。これは、この飛空艇の機能の一つである甲板引力制御によるものである。甲板上の「引き寄せる力」を操作し、甲板の上にいる者たちを振り落とさないようにすることができる。


 甲板に吹き付ける風を真っ向から受けながら、飛空艇の進行方向である正面を見つめる日向たち。白い雲が視界を(さえぎ)り、見晴らしはお世辞にも良いとは言えない。


「こういう空飛ぶ乗り物の上に乗って全身で風を浴びるの、飛空艇が出てくるファンタジーRPGのお約束みたいなところあるよな。まさか俺の人生でそんなことするとは夢にも思わなかったけど」


 日向がそうつぶやいているうちに、黒い雲の中へ突入。先ほどよりも空気がジメジメしてきたように感じる。


 ……と、その時。前方、黒い雲が特に分厚いところから、二隻の嵐の戦艦が飛び出してきた。日向たちが乗る飛空艇の左右両サイドをすれ違う。


「うおっと!? もうこんな近くまで来てたのか……!」


「来やがったな。よっしゃ、さっそく乗り込んでくるぜ」


「ぼ、ボクも行ってくる!」


「私も戦闘に参加するわよ~。北園ちゃんが抜けた穴を埋めてあげないとね~」


「エヴァ。すまんがまた俺と日向を頼むぞ」


「分かりました。あの戦艦の上までお連れします。”天女の羽衣”!」


 それぞれの異能を使い、日向たちは二隻の嵐の戦艦のうちの一隻に乗り込みに向かう。この戦艦も雷弾を放つ三連装砲で迎撃を図ってきたが、それを全て突破して無事に甲板へと乗り込んだ。


 日向たちが嵐の戦艦の甲板に乗り込むと、甲板および艦橋の三連装砲が一斉に日向たちに銃口を向ける。完全に包囲された形だが、日向たちは怯まない。


「こちとら、もう二隻も()としてやったんだ。この三隻目もサクッといっちまおうぜ」


「冷静に考えて、戦艦をサクッと感覚で()とすとか、そんな簡単に言ってのけるお前は戦闘機にでも乗ってるのかって話だよな」


「へッ、今のオレたちなら戦闘機にだって負けねぇよ!」



 一方、こちらは飛空艇のコックピット。

 北園が緊張した面持ちで操縦桿を握り直す。


 立体モニターの左側に見えるのは、こちらと並走しているもう一隻の嵐の戦艦。この戦艦は北園が操縦する飛空艇をターゲットに据えたようだ。


 横からスピカが優しく声をかけてきた。


「北園ちゃん、緊張しないでリラックス……っていうのは難しいかもね。初めてのことだもんね」


「えへへ……やっぱりちょっと緊張しちゃいますね……」


「いいさいいさ、誰だって初めてはそんなものさ。ワタシも精いっぱいサポートするから、頑張ってみよー!」


「おー!」


 これからあの嵐の戦艦をフライト戦で相手取るとは思えない気楽な掛け合いだが、その方が彼女たちらしいのかもしれない。


 嵐の戦艦に乗り込んだ日向たち。

 嵐の戦艦と飛空艇で撃ち合うことになった北園。

 二面の戦いが開幕する。

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