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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第22章 その艇は嵐を往く
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第1228話 渡りに船

 襲来してきた二隻目の嵐の戦艦を撃墜した日向たち。エネルギーの粒子となって消滅する戦艦を後にして、車を置いてある離陸地点へと戻っていく。


「それにしても、改めて考えると、生身の人間ほぼ四人だけで戦艦撃墜するとか、皆いよいよ人間辞めてきたな……」


「私たちはあの狭山さんを止めなきゃいけないんだもん、これくらい強くならなきゃね」


「うん確かに。そして、これだけの戦力を揃えてもまだ勝てるかどうか不安に感じる狭山さんも恐ろしいわ」


「あはは……そうだね」


 それから六人と六匹は無事に地上へ降り立つ。

 戦闘の疲れを癒すため、各自思うままに休息を取る。


 日向が車に腰かけて休んでいると、エヴァが声をかけてきた。


「日向。東の遠くにいる『星殺し』と思われる気配が移動を開始したようです」


「ん、了解。たしか、あの嵐の戦艦の発生源にもなってる気配だったな」


「はい。二隻目の戦艦があの気配から分かたれてこちらに向かってきたのを確かに察知しました」


「あの戦艦がドゥームズデイじゃないとすると、その遠くの気配っていうのが本物のドゥームズデイなんだろうか。戦艦を召喚する能力でも持ってるのか……?」


「気になるのはそれだけではありません。いま私が確認できる『星殺し』の数は、アメリカにいる気配とドゥームズデイと思われる気配の二つのみですが、現在『星殺し』は三体残っています。あと一体が見つかりません」


「そういえばそうだったな。最初にエヴァが察知した三つの気配のうち、一つはあの嵐の戦艦だったからな……」


「確かに今の私でも、この星の全土に気配感知を巡らせることはできません。ですが、それでもかなりの範囲を索敵できるはずなのです。これで見つからないのは少し不気味で不安ですね……」


「だな……。っと、話が少し()れたか。ドゥームズデイの気配が移動したっていうと、ここからまたさらに遠く離れたってことか?」


「はい。この方向は南の方ですね。あなたたちが言うところの『あふりか大陸』です


「アフリカ!? また遠くに逃げやがったなぁ……」


「先ほどの私の空を飛ばせる能力にはあまり期待しないでください。体感してもらった通り、まだ速度はあまり出ないのです。追いかけたとしても追いつけないかと。強力な能力なので、維持し続けるのも負担がかかりますし」


「これはいよいよヤバい話になってきたな……。そのドゥームズデイっぽい気配に追いついて戦う手段がない限り、俺が消滅するまで逃げられる。アメリカの『星殺し』を先に倒しに行っても意味がない」


 難しい表情を浮かべる日向。

 焦りが不安を生み、顔色が悪くなっているようにさえ見える。


 ……と、その時だった。

 シャオランと本堂、それから日影がなにやら声を上げた。


「あれ? ちょっと待って、あっちの空を見てよ! 何かがこっちに向かって飛んできてない!?」


「ああ、何か接近しているな……。戦艦のようにも見えるぞ。また新手ではないのか」


「さっき墜とした戦艦どもとは少し見た目が違うみてぇだぞ。それにしてもあのシルエット、どっかで見たことが……」


 どうやらここに何かが向かってきているようだ。

 皆の間に緊張が走る。


「もう一回、また皆で乗り込むことになりそうか……」


「さっきはけっこう簡単に勝てたから、次もうまくいくといいけどね……」


 疲れが見え隠れしているが、日向たちはやる気だ。

 どの道、あの超絶な破壊力を誇るあの戦艦を野放しにするわけにはいかない。


 しかしそんな中、エヴァが皆に声をかけた。


「待ってください皆さん。いま来ているという戦艦は、先ほど私たちが戦った嵐の戦艦とは違うかもしれません」


「そうなのかエヴァ?」


「はい。嵐の戦艦と違って『星の力』の気配をまったく感じません。何かのエネルギーのようなものは感知できますが、それ以外は何も」


「あの戦艦以外に空を飛べる(ふね)ってことか? それってもしかして」


 日向も前方の空に向かって目を()らし、こちらに来ているという(ふね)を確認する。彼は無駄に視力が高いので、(ふね)が遠く離れていても視認できる。


 その(ふね)は、先ほどの嵐の戦艦の真っ黒な装甲とは打って変わって、神秘的な黄金色の装甲で身を包んでいた。サイズは嵐の戦艦よりはるかに小さいが、それでも大型の建造物くらいの大きさはある。


「あれは……やっぱり飛空艇だ! スピカさんとミオンさんにお願いしていた、アーリアの外殻調査船だ!」


 日向が叫んだ。

 彼の言う通り、空からやって来たのは、インドの自然公園で埋まっていた飛空艇だった。


 その飛空艇がこうして空を飛び、ここまでやって来たということは、つまりスピカとミオンはこの(ふね)の確保に成功したということなのだろう。


 飛空艇はゆっくりと高度を下げていき、やがて日向たちの目前でヘリコプターのように垂直に着陸。それから飛空艇の出入り口である転送ポータルが起動し、日向たちの前にスピカとミオンが現れた。


「やっほーみんなー、久しぶりー。元気にしてたー? スピカお姉さんだよー。うぃずミオンさん」


「ご注文の外殻調査船、お届けにあがったわよ~!」


 懐かしい顔が二つ。

 思わず日向たちの表情がほころぶ。


「スピカさんとミオンさんだー! 久しぶりー!」


「師匠! よかった、ちゃんと飛空艇持ってきてくれたんだね!」


「やぁやぁ北園ちゃん、相変わらず元気だねー。キミの”精神感応(テレパシー)”のおかげで、すぐにここに向かえたよー」


「シャオランく~ん! また少し見ない間に立派になっちゃって~! もう抱きしめちゃう!」


「ちょ、ちょっと、恥ずかしいからやめて……」


 それにしても、渡りに船とはまさにこのことか。少し移動するだけで国境をも越えてしまうドゥームズデイは、日向たちの能力だけで追いかけるのは到底不可能だった。だがしかし、この飛空艇さえあれば追いつけるかもしれない。


「これは、予定を変更するべきかな」


 日向がつぶやいた。アメリカにはジャックたちがいるし、何よりアメリカという国家そのものが強い。『星殺し』の襲撃にもまだもう少し耐えてくれるかもしれない。


 それよりも今すぐ対処するべきなのはドゥームズデイだ。あの二隻だけでなく、まだまだ戦艦を所持している可能性は十二分にある。もしもドゥームズデイがあの超火力の戦艦を複数所持していて、その戦艦で各地域に破壊活動を行なっているのならば、その被害は凄まじいものになるはず。


「乗りかかった舟じゃないけど、俺たちはもうドゥームズデイと交戦しているも同然。あっちがその気なら徹底抗戦だ」


 これで、次に狙う『星殺し』が決定した。

 次なる相手は”嵐”の星殺し、ドゥームズデイだ。

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