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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第21章 闇は昏く、海は深く、灯は儚く
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第1216話 ジ・アビス討滅戦

 光る魚たちに照らされ、青く透き通るような深海で。

 日向たちとジ・アビスの本格的な激突が幕を開ける。


 まず日向、日影、本堂、シャオランの四人がジ・アビスに攻撃を仕掛けるべく接近を試みる。今度は今までと違い、ジ・アビスとの間合いが縮まっているのがしっかりと分かる。


 対するジ・アビスは、日向たちに距離を詰められないように少し後ろへ下がる。ジ・アビスは少しだけ下がったつもりなのだろうが、彼女の巨体における「少し」は日向たちにとっては相当な距離。あっという間に間合いを開けられてしまった。


 それを見た本堂が、右腕をジ・アビスに向かって突き出す。


「ここまで来たからには、出し惜しみはせん。距離を取るなら容赦なく遠距離攻撃を叩き込む。”轟雷砲”……!!」


 宣言と共に、本堂が右拳から稲妻を発射。さらにジ・アビスの右側から北園が、本堂に合わせて”雷光一条(サンダーステラ)”をぶっ放す。おまけにジ・アビスの左側からは大きな電気クラゲの『星の牙』のスペクターが、長い二本の触手から電撃を撃ち出した。


「いっけぇーっ!!」


「ビビビビビ」


 三者が放った電撃がそれぞれジ・アビスに命中。

 着弾と同時に泡を立てて爆発を起こした。


「aaaaaaaa...!?」


 攻撃を受けたジ・アビスが悲鳴を上げる。しっかりとダメージを与えることができているようだが、なにせジ・アビスはあの図体だ。打ち倒すにはまだまだダメージを蓄積させる必要があるだろう。


 ジ・アビスが怯んだ隙に、無数の魚のマモノたちがジ・アビスに(まと)わりつく。そしてそれぞれ牙で噛みついたりエネルギー弾を撃ち出したりして、ジ・アビスに攻撃を仕掛ける。


 超巨大なジ・アビスにとって、彼ら魚のマモノたちの攻撃は大して効いてはいないだろう。しかしジ・アビスは魚たちの攻撃が(わずら)わしく感じているようで、その場で頭部の触手を振るって魚たちを追い払おうとしている。


 ジ・アビスは今、魚たちに気を取られている。

 今なら日向たちが接近しても、距離を取られることはない。


 瞬時にそれを理解した日影、本堂、シャオランの三人が、一気にジ・アビスとの距離を詰める。日影は”オーバーヒート”を使用して。本堂は水中に特化させた肉体を駆使して。シャオランは”空の気質”を使った”飛脚”で水を蹴るように。


 まずは日影がジ・アビスの顔面に燃え盛る一太刀。


「やっとテメェに一発喰らわせてやれるな! おるぁぁッ!!」


「aaaa...!?」


 次に本堂がジ・アビスの首筋に”雷刃一閃”。


「首を斬り落とす。はっ……!!」


「aaaaaa...!?」


 そしてシャオランがジ・アビスの首元に火の練気法”爆砕”と”地震(アースクエイク)”の震動エネルギーを合わせた強打を叩き込んだ。


「やぁぁぁッ!!」


「naaaaaa...!!!」


 大陸をも粉砕してしまうようなシャオランの一撃でジ・アビスがわずかに後退したが、負けじと威圧するように甲高い叫び声を発した。”催眠能力(ヒプノシス)”の超能力こそ使用していないようだが、凄まじい音量が深海を揺るがす。


 ジ・アビスは両腕で勢いをつけ、その場で回転。すると彼女を中心に”怨気”が入り混じった渦が発生し、周囲の魚たちも日影たちも巻き込もうとする。


「や、やべぇ、引きずり込まれる……!」


「凄まじい勢いで渦が回転しているな……。アレに巻き込まれたらそう簡単には脱出できんぞ。巻き込まれたら”怨気”によって徐々にダメージを受けるおまけ付きだ」


「で、でもとんでもない吸引力だよぉぉ!? ちょっと人間のパワーで逃げ切るのはムリ……!」


 日影たちはこのまま成すすべなくジ・アビスの渦巻に巻き込まれる……かと思いきや、急に渦巻の勢いが弱くなったので吸引力が落ちた。日影たちはその隙に、一気に渦巻から逃れる。


「危なかったぜ……。だが、どうしていきなり渦巻の勢いが弱まった?」


「あ! アレ見て!」


 シャオランが指をさす方向を見ると、そこにはネプチューンがいた。『星の力』による能力を行使している様子だ。恐らくはネプチューンが能力で海水に働きかけ、ジ・アビスの渦巻の勢いを弱めてくれたのだ。


 しかし、ジ・アビスもまたネプチューンが妨害を仕掛けていることに気づいたようだ。頭の触手のうちの一本を振るい、それをネプチューンの背中に叩きつける。


「aaaaaaa!!!」


「ウオォォン!?」


 強烈な一撃を受けてしまい、ネプチューンが悲鳴を上げた。クジラのマモノとして大きな身体を持つネプチューンだが、ジ・アビスはそれ以上の巨体。触手一本さえもネプチューンよりはるかに大きい。


 ネプチューンを叩き伏せたジ・アビスは、そのまま触手でネプチューンを捕らえにかかる。ネプチューンを絞め殺すつもりだ。


 だが、そのネプチューンを捕らえようとする触手の腹に日向が接近。周囲に他の仲間や魚たちがいないことを確認して”最大火力(ギガイグニート)”を発動。『太陽の牙』から伸びる緋色の光剣でジ・アビスの触手を切断した。


「おりゃあああっ!!」


「aaaaaaaaaaa...!?」


 日向の斬撃を受けて、ジ・アビスが今日一番の悲鳴を上げた。『星殺し』にも通用する日向の炎は、さすがのジ・アビスも(こた)えたようだ。


「よし、間髪入れず一気に決める! 太陽の牙……」


 日向は”星殺閃光(バスタードノヴァ)”の発動準備を開始。ジ・アビスを熱線で貫こうとする。


 しかしジ・アビスの方が先に動いた。攻撃を仕掛けようとしていた日向に向かって”催眠能力(ヒプノシス)”の音波攻撃を放ったのだ。


「naaaaaaaa!!!」


「うっ……!?」


 完全に不意を突かれてしまった日向。ジ・アビスの音波をモロに喰らってしまう。そして同時に日向の意識がブラックアウトする。『太陽の牙』に込められていた熱も急速に失われてしまった。


「ひ、日向くんがまた寝ちゃった!」


 少し離れたところで一連の出来事を見ていた北園が声を上げる。その北園の隣にいるエヴァも苦い表情を浮かべていた。


「参りましたね……。ジ・アビスを倒すには、恐らく日向の”星殺閃光(バスタードノヴァ)”の威力が必要不可欠……彼には一刻も早く目覚めてもらわなければ」


「いざとなったら、今度は私が日向くんを抱きしめるしか……! いや、これは日向くんが寝ているのを良いことに色々できちゃうチャンスかも……!」


「まぁ……日向が起きるなら何でもいいですが、ほどほどにしてください」


 ともあれ、またしてもジ・アビスの夢の世界に落とされてしまった日向。はたして彼は二度目の催眠も無事に脱することができるのだろうか。

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