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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第5章 人の心 マモノの心
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第110話 白い翼を地に堕とせ

 フォゴールは本堂を掴み、森の上を飛んでいる。

 本堂を握り潰さんとする勢いで鷲掴みにしている。

 身体がミシミシと軋む本堂だが、それでも彼は冷静さを失わない。


「ホーゥ!!」


「ぐ……こいつ、俺を捕まえて随分と上機嫌だな。だが、良かったのか俺で? ……おおおお!!」


 そう言うと本堂は、全身から電撃を放ち始めた。

 当然、足で本堂を掴んでいるフォゴールにもビリビリと電撃が流れる。


「ピィィィィ!?」


 突然の電撃に度肝を抜かれ、本堂を放り捨てようとするフォゴール。

 しかし……。


「おい待て」


 今度は、逆に本堂がフォゴールの足にしがみついた。

 しがみつきながら電撃を流し続ける。


「お前、自分から俺をお持ち帰りしておいて、いきなり捨てようとするとは何事だ。俺とは遊びだったのか」


「ピィィィィ!?(ちょっと何言ってるか分からないです)」


 突拍子も無いいちゃもんをつけられながら電撃を流され、困惑とも悲鳴ともつかない叫び声を上げるフォゴール。


 やがて翼は浮力を失い、フォゴールは本堂ともども地面に落下した。


「っと……!」


 本堂は地面に叩きつけられる前に、フォゴールから飛び降りて受け身を取る。下は柔らかい腐葉土であるため、飛び降りてもダメージは少ない。


 日向の狙いは、まさにこれだった。


 本堂は放電能力を持っているため、鷲掴みにされてもフォゴールに反撃できる。そして、素の身体能力もシャオランに次ぐ高さだ。運動神経で言えば日影よりも間違いなく上だろう。だからフォゴールに振り落されそうになっても、自力で耐えると日向は予測していた。


 やがてフォゴールのみがズシンと地面に落下し、そこへ日向たちが一気に突撃する。


「ほら来た! 本堂さんに続けぇーっ!!」

「グラちゃんのカタキーっ!!」

「野郎、さっきの仕返しだ!!」

「当たって砕けろぉー!!」


 倒れたフォゴールに群がり、猛攻撃を仕掛ける四人。

 日向と日影が燃え盛る『太陽の牙』で斬りかかる。

 北園が至近距離から電撃を浴びせる。

 シャオランがフォゴールの胸に飛び乗り、その上で何度も震脚を踏んだ。


「ピィィィィ!?」


 これにはフォゴールもたまらない。

 必死の抵抗で日向たちを振り払い、再び上空へと飛んだ。


「あ、くそ! 逃がした……!」


「もう一度下りてきたところを狙うぞ! 北園と本堂は電撃で撃ち落とせ!」


「りょーかいだよ、日影くん!」


「分かった。だが北園と比べて威力は期待するなよ」


 日影が指示を飛ばし、北園と本堂がフォゴールに向かって電撃を放ち始める。

 北園は両腕から稲妻を放出する。

 本堂は『指電』を連射する。


 しかし、今度のフォゴールはとにかく地上に下りてこなかった。

 二人の電撃を避けながら、真っ白な空を飛び回る。

 真っ白な羽を利用して霧に紛れるのも、二人の命中率の低下に拍車をかけていた。


「ちっ……! 全然当たらん……!」

「ちょっと、疲れてきたかも……」


 逃げに徹するフォゴールに、二人は疲弊していた。

 その時、シャオランが霧の向こうを指差し、叫ぶ。


「うわああああああ!? マンハンターがきたあああああ!?」


「なにぃ!? このタイミングでか!?」


「しかもめっちゃ多いよおおおおおお!? もうダメだああああああ!!」


「ええい落ち着け!」


 日影がシャオランを大人しくさせる。

 皆が霧の向こうを見ると、確かに大きなイタチのような影が見える。

 そしてシャオランの言うとおり、かなり数が多い。二十頭はいるのではないだろうか。


「シャーッ!!」

「ホーゥ!!」


「まさかフォゴールのヤツ、マンハンターの増援が来るまで時間稼ぎしてたのか……!?」


 マンハンターたちの群れが一斉に襲い掛かってくる。

 そんな中、日向が北園に声をかける。


「ここで火炎放射なんか使ったら大火事になる……。やむを得ない、電撃能力ボルテージだ、北園さん! 殲滅力は落ちるけど仕方ない!」


「りょーかいだよ!」


 言われて北園は両手から電撃を放ち、マンハンターたちに浴びせる。

 数体のマンハンターが電撃を喰らい、痙攣して動かなくなる。

 撃ち漏らしたマンハンターは、日向と本堂とシャオランが仕留める。


「ホーゥ!!」


 そのさなか、フォゴールが五人の背後から突撃してくる。

 巨体を活かして体当たりを仕掛けてくる気だ。


「させるか……!」


 突撃してくるフォゴール目掛けて、日影が『太陽の牙』を投げつける。

 しかし、フォゴールは再び上空へ飛び上がり、それをかわした。


「クソが! ちょこまかしやがって!!」


 日影は『太陽の牙』を呼び戻し、再び構える。

 フォゴールは、まるで五人の隙をじっくりと窺うように空中に留まっている。


「このッ! この野郎ッ! 喰らいやがれ!」


 フォゴールに向かって『太陽の牙』を投げつけ続ける日影。

 それをフォゴールはヒョイヒョイと避ける。


 闇雲に投げても当たらないのは日影も重々承知だ。しかしこうでもしないと、少しでも隙を見せたら、このマモノは即座に不意打ちを仕掛けてくるだろう。誰かが足止めする必要がある。

 

(クソ……! せめてもう一つ人手が欲しい。誰かがヤツに攻撃を仕掛け、その攻撃に気を取られたところに『太陽の牙』を投げつけることができれば……)


 だが他の四人はマンハンターの処理で手一杯だ。

 北園の火力は、このマンハンターの群れを蹴散らすうえで欠かせない。


 日向もダメだ。重い『太陽の牙』を投げつけるには筋力が足りない。

 シャオランは論外だ。遠距離攻撃の手段が無い。


 本堂の『指電』は、フォゴール相手には火力不足の可能性がある。耐久力にモノを言わせて突っ込まれたら後が無くなる。


 仲間たちの手は借りれない。

 日影がそう思ったその時。


「日影っ!!」


 日向の声がした。


 日向が、剣でマンハンターたちを牽制しながら、左手で何かをフォゴールに向けて射出した。

 それは赤い光を放ち、煙の軌跡を描きながら、フォゴール目掛けて飛んでいった。


「ホゥ!?」


 フォゴールは驚いてそれを避ける。

 ……だが、それに本来、殺傷力は無い。

 日向が飛ばしたのは、森に入る前に支給された信号弾だ。


 だが信号弾が何なのか知らないフォゴールは、危険な攻撃と判断してそれを避けた。瞬間、日影から注意が逸れ、隙が生まれる。


「よくやった!!」


 日影がフォゴールに『太陽の牙』を投げつける。

 剣は、深々とフォゴールの胸に刺さった。


「ピィィィィ!?」


 空中でバランスを崩しそうになるが、それでもフォゴールは体勢を立て直し、最後の力を振り絞って逃亡を図る。



 しかし、地面から伸びた無数の木の根がフォゴールを捕えてしまった。


「ピィィィィ!? ピィィィィ!!」

「キィィィィ!!」


 グラスホーンの植物操作だ。

 グラスホーンが、身体を震わせながらも能力チカラを発揮している。

 死力を尽くして、日向たちを援護してくれている。


 フォゴールが、木の根によって空中から引きずり降ろされる。

 そこへ日影が猛スピードで駆け寄り……。


「もらったぁッ!!」

「ピィィィィ…………ッ!!」


 胸に突き刺さった『太陽の牙』の柄頭に強烈な前蹴りを入れた。

 刃はさらにフォゴールの胸に食い込み、ついに彼の息の根を止めた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] お久しぶりです((* ´ ` )* . .))” ここまで音読アプリで読ませていただきました! 目で見て読むのと音声として聴くのでは違う部分も多いですが、違和感なく読み進められました! や…
2023/05/18 10:58 退会済み
管理
[良い点] グラちゃん! ナイス~!
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