表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第21章 闇は昏く、海は深く、灯は儚く
1230/1700

第1199話 ここに残し、先を急ぐ

 日向たちは正気を失って暴れ出したネプチューンと戦い、これを制圧した。


 ネプチューンの頭上へ向かっていた日影が、ダメージの回復を終えて日向たちのもとへ戻ってくる。シャオランと本堂が日影を迎えた。


「クソ、オレとしたことがヘマ打っちまうとはな……油断したぜ」


「お疲れヒカゲ。ダメージはまだ大丈夫? ”再生の炎”は?」


「だいぶ消費しちまった。しばらく待てば、また少しずつ回復するとは思うが」


「まだジ・アビスも控えているというのに、厳しい話だな」


「ああ。だが仕方ねぇ。必要経費と割り切るしかねぇだろ」


 日影たちが会話を交わすその一方で、ネプチューンは現在、身体を横にしてぐったりと動かなくなってしまっている。日向と北園がネプチューンの様子を(うかが)っている。


「ネプチューンさん、だいじょうぶかな……? もしかして、やりすぎちゃった?」


「そうかも……。でもきっと、あれだけ攻撃しないと止められなかった。それくらいネプチューンは強かった。とにかく北園さん、ネプチューンの傷を治してあげて」


「りょーかい!」


 日向の指示を受けて、北園がネプチューンの怪我を回復させる。ネプチューンの大きな身体のあちこちに付けられた傷を北園一人で治癒しなければならないため、当然ながら時間も彼女の体力も消費する。


 やがて、ネプチューンの怪我の回復が終わった。

 北園は笑顔を絶やさないが、その顔色には少し疲れが見える。


「ふー、終わったよぉ。私は日影くんに比べたら、まだ超能力が使えるだけの体力は残っていると思うけれど、でもさすがにちょっと疲れたかな」


「ありがとう北園さん。お疲れさま」


 怪我を治してもらったネプチューンだが、意識を失ったまま動かない。疲労によって意識を回復できないのだろう。傷の痛みによる消耗に加えて、日向たちがさんざん斬りつけたので血液も足りていないのだと思われる。


「どうしよう日向くん。やっぱりネプチューンさんが目を覚ますまで私たちも待つ?」


「いや……ここは俺たちだけでも先に進みたいところかな」


「え、どうして? ネプチューンさん置いていっちゃうの?」


「ここはジ・アビスが支配する海の中、常に”怨気”で満ちている。ネプチューンはとりあえず大人しくなったものの、こんな海の中で正気に戻ってくれる保証はどこにもない」


「そ、そっか。考えてみれば”怨気”に満ちた空間の中で正気に戻るって、今までそんなパターンはなかったもんね」


「もしかしたら正気に戻ってくれる可能性もあるけれど、戻ってくれなかったらきっとまたネプチューンと戦う羽目になる。ネプチューンはすごい強敵だった。それだけは避けたい」


「そうだね……すごく強かったよね」


「それに、急ぎたい理由はそれだけじゃない。たぶん北園さんも、さっきからずっとジ・アビスの幻聴を受け続けてるでしょ?」


「うん、戦闘中もずっと……。聞き続けてたら変な気持ちになりそう……」


「その感覚に間違いはないと思う。この幻聴をずっと聞き続けるのはマズい。ここまで来たからには、俺たちは少しでも早くジ・アビスを倒すべきだ。ただ……ネプチューンをここに置いていくのは、それはそれで問題がある……」


「だよね……。この水深はネプチューンでも、エヴァちゃんとラティカちゃんの能力がなければ留まり続けるのは厳しいだろうし、あのサメ型のレッドラムがまた襲い掛かってくる可能性があるよね」


「うん、まさにその通り。だから、ここにはネプチューンを深海に適応させるためにラティカを、それから二頭の護衛役にポメを置いておきたい」


 そう言って日向は、近くでネプチューンの様子を見ていたラティカとポメの方を見る。この一頭と一匹も、すでに日向の話は把握している。エヴァの通訳のもと、日向たちは会話する。


「ラティカ、ポメ。ネプチューンを頼めるか?」


『は、はい。あの……ありがとうございます……お母さんを気にかけてくれて……あなたたちに攻撃したのに……』


「気にしないで。ネプチューンはもともと優しい性格だっていうのはよく分かってるから。今回はちょっと”怨気”のせいでおかしくなってしまった。それだけのことだよ」


『ぼ、ボクもしっかり、ネプチューンとラティカを守るよ!』


「頼むぞポメ。ラティカは戦闘に関する能力は持ってないみたいだ。ネプチューンも意識を取り戻さない今、このクジラ親子を守れるのはお前しかいない」


『き、緊張してきた……』


「ネプチューンが目を覚ますまでの辛抱だ。エヴァの話だと、さっきのネプチューンは人間を強く敵視していたみたいだ。犬のお前なら、仮にネプチューンが正気を取り戻していなくても、すぐには攻撃されないと思う」


『でもボク、さっきネプチューンの体当たりで吹っ飛ばされたんだけど……』


「あれはたぶん、本来の狙いは俺たちで、その俺たちの近くにいたから巻き添えにされたんじゃないかな」


『ネプチューンが目を覚ましてボクに襲い掛かってきたら(うら)むからね……』


「ポメってなんか性格がシャオランに似てるから会話しやすいなー」


 こうしてラティカとポメがここに残ることが決定した。

 一頭と一匹との会話を終えた日向は、エヴァに声をかけられた。


「日向。あなたの決定に反対の気持ちはありませんが、一つだけ。分かっていると思いますが、ラティカが私たちから離れるということは、私たちを深海に適応させている能力が一段階弱くなるということです。覚悟はできていますね?」


「ああ。エヴァこそ、一人だけで俺たちをジ・アビスのもとまで連れて行けそうか?」


「連れて行くだけなら、おそらくどうにか」


「よし、なら大丈夫だ。ジ・アビスはなんとか頑張って倒そう。最悪、俺が開幕から”星殺閃光(バスタードノヴァ)”をぶっ放して瞬殺するっていうのも行けると思うし」


「確かに、プルガトリウムを一撃で焼き尽くしたというあの技なら、それも不可能ではないでしょうけど」


 話がまとまったところで、日向たちはネプチューンとラティカ、それからポメを置いて、さらなる海の深みへと潜っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ