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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第21章 闇は昏く、海は深く、灯は儚く
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第1156話 もふもふな仲間たち

 マドリードにて、三百体以上のレッドラムの軍勢を見事に撃破した日向たち。全員、特に目立った外傷もなく、見事なまでの完全勝利である。


「ふー……どうにか勝てたか。エヴァと北園さんの殲滅能力と、日影と本堂さんとシャオランの個人戦闘能力、そこにそっと俺を添える。全部うまく噛み合えば、あれだけの大軍が相手でもけっこう戦えるもんだな」


 汗をぬぐいながら、日向がつぶやく。

 そんな日向に向かって、北園が走り寄ってきた。


「おつかれさまー!」


「あ、北園さん」


 日向も北園を迎え入れるため、両腕を開いて北園を抱き止める準備。


 ……が、北園は日向の側を通り過ぎた。

 そして日向の背後にいた六匹の犬たちをわしゃわしゃと()でる。


「みんなー! おつかれさまー! カッコよかったよー!」


「ワン!」


「ワウ?」


「かわいいー! もふもふー!」


 もふもふなワンコたちに囲まれてご満悦な北園。

 一方、日向は両腕を開いたポーズのまま固まっている。

 そんな日向のもとに、本堂がやって来た。


「日向。そのポーズは何だ。すしざ〇まいか」


「もう、そういうことにしといてください。悲しくなってくるので。ところで何か用でしたか本堂さん?」


「ああ、今後のことで少し提案があった」


「提案?」


「ああ。あの六匹の犬達を、俺達の旅に連れて行くというのはどうだ」


「あのワンコたちをですか?」


 本堂の言葉を、思わず聞き返してしまう日向。

 彼のことだ。単なる愛玩犬として連れて行くつもりではないだろう。

 日向は、もっと詳しく本堂の話を聞いてみることに。


「お前も既に薄々感じているとは思うが、エヴァを除いた俺達五人だけで毎晩毎晩、敵襲を警戒しながら休むというのは、かなり厳しいものがある」


「そ、そうですね。これまでレッドラムがあまり積極的に襲撃を仕掛けてこなかったから何とかなってきましたけど、昨日のジ・アビスはまんまとやられましたからね……」


「特に、気で敵の位置を察知できるシャオランなどは、しょっちゅう見張り役にされて少々可哀想だったからな」


「なんというか、改めて考えてみると、けっこうブラックなお仕事でしたね、ワンオペ見張り」


「その点、彼ら六匹の犬達に協力してもらえれば、此方(こちら)の人数が増えて余裕が出る。彼ら犬達一匹と人間一人の二人組制度が現実的になるぞ」


「たしかに、その通りですね……」


「単純に戦力アップとして見ることもできる。彼らの戦闘力は先程のレッドラムとの戦いで証明された。今回が初戦闘だというのに、みな文句無しの即戦力だ」


「良いことばっかりですね」


「そうでもない。彼らの餌や体調等、車とはまた別のデメリットや不確定要素も出てくる。それを踏まえた上で、どうするかだが……」


「俺は賛成しますよ。特に、夜の見張りが増えるメリットは大きいです。見張りが増えるってことは、夜中に車を破壊される確率も低くなる。そして今のレッドラムやジ・アビスは俺たちの足止めに力を入れている。これ以上いちいち車を破壊されたら、間に合うタイムリミットも間に合わなくなっちゃいますから」


「承知した。他の皆にも聞いてみよう」


 本堂は自身の提案を他の仲間たちにも話してみる。

 皆、おおむね良好な反応だった。


「この子たち、連れて行っていいの!? やったー!」


「戦力が増えるのはいいことだよね! ボクも賛成!」


「ただ可愛がるだけで連れて行くのはどうかと思ったが、そういう理由ならオレも反対する気はねぇな」


「彼ら六匹も『助けられた恩を返すためなら喜んでついて行く』と言っています」


「ワン!」


 肝心の犬たちの同意まで得られた。

 これで、彼ら六匹を日向たちの旅に連れて行くことが確定した。


 すると、北園がエヴァに声をかけた。


「ねぇエヴァちゃん。この子たちに名前ってあるのかな?」


「聞いてみます。……どうやら特に決まった名前は持っていないようです」


「それじゃあ私たちで付けてあげようよ! これから一緒に旅をする仲間なわけだし!」


 北園が皆にそう提案する。

 日向たちもうなずくが、いきなり言われても、良い名前など簡単には思いつかない。


「んー、ワンコたちに名前かー。あまり複雑で難しい名前にしても六匹もいたら覚えにくいだろうし、ちょっとした法則を決めて名付けたいかな」


「右から順に一郎、二郎、三郎、四郎、五郎、六郎とかで良いんじゃねぇか?」


「そういう安直なのも、それはそれでどうかと思うなぁ俺は。考えてみると、お前の名前も『日向の影だから日影』って、けっこう安直だよな。お前のネーミングセンスって安直だったんだな」


「うっせぇしばくぞ。ところで北園は何かこう、コイツらに付けたい名前とかはねぇのか?」


 日向とのやり取りを終えた日影が、北園に尋ねた。

 北園も少し考えこみながら返事をする。


「んー、言い出しっぺだけど、私自身も『こういう名前がいい!』っていうのは考えてなかったかなぁ。それに、日向くんが言う『分かりやすい名前』っていうのも一理あると思うし」


「オレたちは特にこだわりはねぇ。好きに付けていいぞ」


「よーし……それじゃあ、この子たちの犬種の名前の頭文字を二つ取るっていうのはどうかな!」


 ……というわけで、六匹の犬たちの名前が決まった。


 赤茶色の毛を持つ筋肉質な大型犬、イビザンハウンドの名前はイビ。六匹の中で最も気真面目な性格のようで、いつもキリッとした立ち姿勢を崩さない。


 灰色の背中と白いお腹、くしゃくしゃの毛並みが特徴の大型犬、ピレニアンマスティフの名前はピレ。おっとりのんびりとしているが、真面目な性格のようだ。


 明るい茶色の毛並みが特徴で、先ほど紹介したピレに少しそっくりな容姿を持つスパニッシュマスティフの名前はスパ。六匹の中で一番のんびり屋な性格で、しょっちゅうあくびをしている。


 少し青っぽくも見える灰色の背中と白い身体を特徴とするシベリアンハスキーの名前はシベ。イビに次ぐ真面目な性格で、六匹の中で唯一のメスのようだ。


 茶色と白と黒のカラーリングの、長くてフサフサの毛を持つラフコリーの名前はラフ。どうにも気まぐれな性格らしく、六匹の中で最もマイペースである。


 そして六匹の中でただ一匹の小型犬、ポメラニアンの名前はポメ。少し甘えん坊な性格のようで、常に日向たちのうちの誰かの側に寄ろうとしている。


「なんか聞いたことあるネーミングだと思ったら、シカの『星の牙』のグラキエスのグラちゃんと同じだった」


「どうかな日向くん? 変じゃないかな?」


「北園さんらしい可愛さがあって、良い名前だと思うよ」


「えへへ~。褒められた!」


(いや、オレに負けず劣らず安直な名前って気がするが……まぁ、言わぬが花って奴か)


 思わぬところで新たな仲間を得た日向たち。

 彼ら六匹の協力で、はたしてジ・アビスのもとまで辿り着けるのだろうか。

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