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太陽の勇者は沈まない ~マモノ災害と星の牙~  作者: 翔という者
第21章 闇は昏く、海は深く、灯は儚く
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第1155話 三百体

 引き続き、スペインのマドリードにて。


 ペットショップを包囲してきた三十体ほどのレッドラムを一掃した日向たち。だがしかし、まだ三百体ほどのレッドラムがこちらに向かってきているのだという。先ほど倒したのが先発隊で、これから来るのが本隊といったところか。


 数だけ聞くと恐ろしいが、今の日向たちの戦力なら、対処できない相手ではない。日向たちは冷静に、レッドラムを迎え撃つ算段を立てる。


「とりあえずエヴァの能力で数を減らすか。エヴァ、できるだけ街を破壊しない方向で頼む」


「そんな都合の良い能力が……」


「ないの?」


「あるんですね、これが」


「さっすが」


「降り注げ……”バアルの慈雨”!!」


 エヴァが『星の力』を充填し、杖を天に向けてかざす。

 すると、曇り空がよりいっそう薄暗く、やがて黒くなった。雨雲だ。


 黒い雨雲から、銃弾のような雨が次々と降り注ぐ。見た目からは想像もつかないほどに高圧縮された雨粒だ。エヴァの気配感知能力と合わせて、こちらに向かってくるレッドラムたちを空から狙撃するように各個撃破していく。


 建物の中を通って、空から降り注ぐ雨水の弾丸をやり過ごそうとしているレッドラムもいる。だが、雨は地面に向かってまっすぐ降るだけでなく、斜め方向からも飛んでくる。窓際にいるレッドラムは窓越しにこめかみを撃ち抜かれた。


「撃破数、六十、七十、八十……まだいけます。半分は削りたいですね」


「張り切り過ぎだぜエヴァ。オレたちの分がいなくなっちまう」


「ボクとしては、そうなってくれれば万々歳だけどね……」


 能力行使中のエヴァとやり取りを交わす日影とシャオランだが、二人ものんびりと街を眺めているわけではない。エヴァに超遠距離攻撃で反撃してくるレッドラムがいないかをしっかり見張っている。


 ……と、ここで本堂が口を開く。


「敵の軍勢が見えてきたな。どうやら此処(ここ)まで来た連中は”地の練気法”の肉体硬化能力や、超能力のバリアー等を使用してエヴァの雨を突破したようだ。防御に自信がある個体が多いと予測される」


 本堂の言う通り、前方のオフィス街にちらほらとレッドラムの姿が見え始める。ビルの屋上や窓から飛び降りてきた。種類も標準型やクロー型、刃型にメタボ型に長槍型、筋肉型や触手型や巨人型とよりどりみどりだ。


 レッドラムの姿が見えると、一緒に外に出てきていた六匹の犬たちがレッドラムの群れに向かって威嚇し始める。


「ウウー……!」


「グルルル……!」


「ワン! ワン!」


「日向くん、この子たちもやる気みたい! どうしよっか? 戦わせる?」


「戦力は多いほど良いって言うし、手伝ってもらおうかな。今なら回復役の北園さんがいるから、ちょっとした負傷ならこのワンコたちも治してもらえる。これから強く生きてもらうための戦闘訓練にはちょうどいいかも」


「私たちがしっかりカバーしてあげないとね!」


 六匹の犬たちが戦闘態勢を取り、日向たち六人もまたそれぞれ構える。レッドラムとの接敵は間近だ。


「エヴァ、レッドラムは最終的にどれくらい減らせた?」


「恐らく、百六十は仕留めたかと」


「半分以上か。いや本当すごいなお前」


「えへん。です」


「お前ら、お喋りはそこまでにしとけ。来るぜ……!」


 日影の言葉の通り、レッドラムの群れが怒涛の勢いでこちらに走り寄ってきている。それを見た日向も攻撃準備。


「太陽の牙……”紅炎一薙(ヒートスラッシュ)”っ!!」


 日向が燃え盛る『太陽の牙』を横一文字に振り抜いた。すると炎の奔流が横に目いっぱい広がってレッドラムの群れへと飛んで行く。


 鉄さえバターのように軽々と溶かしてしまう超熱の炎。たとえエネルギーによる攻撃に強い”念動力(サイコキネシス)”のバリアーといえど、まともに受け止めたらひとたまりもない。


 だが、”紅炎一薙(ヒートスラッシュ)”は予備動作が分かりやすいうえに、日向とレッドラムたちとの距離はまだ少し開いていた。最前列のレッドラムたちは日向の動作を見てからジャンプし、炎の奔流を飛び越えた。


「KAKA! 分カリヤススギルンダヨ!」


 ……が、レッドラムたちが飛んだのを見た日向は、ニヤリと笑う。


「分かりやすすぎるのはそっちの方だよ。エヴァ、重力!」


「堕ちよ……”アバドンの奈落”!!」


「A、AAAAA!?」


 エヴァの詠唱と共に、飛び上がったレッドラムたちの周囲に重力場が発生。そのまま道路へ落とされる。レッドラムが叩きつけられた衝撃で綺麗に舗装された道路がひび割れ、叩きつけられたレッドラムも砕け散るように潰れて血だまりとなるほどの、猛烈な重力だ。


「これでニ十体は減らせたか。もうちょっと巻き込みたかったな!」


「それだけ巻き込めれば十分でしょう。もうレッドラムとの間合いも詰まってきたので、ここからは私も近接戦闘に切り替えます。大火力重視だとあなたたちや私自身も巻き込んでしまう可能性がある」


「了解。それじゃあ、切り込むぞ!」


 日向の掛け声に合わせて、皆が一斉にレッドラムへ打って出る。先ほどの日向の”紅炎一薙(ヒートスラッシュ)”の炎に邪魔されて足止めを喰らっていた後続のレッドラムたちは、出鼻をくじかれて日向たちの先制攻撃を許してしまう結果に。


 日影が”オーバーヒート”でレッドラムたちを()ね飛ばしつつ攪乱(かくらん)。シャオランが得意の八極拳と”地震(アースクエイク)”の破壊力で暴れ回り、その隙に本堂が自慢のスピードで孤立したレッドラムを狩っていく。


 北園が超能力を利用した大火力でレッドラムたちを吹き飛ばし、怒って北園を狙おうとしたレッドラムは日向とエヴァが迎え撃つ。エヴァはレッドラムを迎え撃つ合間にちょっとした遠距離攻撃を織り交ぜ、北園と共にレッドラムの数減らしにも貢献してくれている。


 レッドラムの数が減り、隊列も崩れてきたところで、満を持して六匹の犬たちも出撃。いまや人間ほどの背丈がある五匹の大型犬と、相変わらず小さくてモフモフな一匹のポメラニアンだ。


 まずは筋肉質な赤茶色の大型犬、イビザンハウンドの攻撃だ。その赤い毛を、本当に炎のように赤々と燃え上がらせて、筋肉型レッドラムのどてっ腹に体当たり。


「ワオンッ!!」


「GYAAAA!?」


 次は灰色の背中とおでこ、そして真っ白なお腹の大型犬、ピレニアンマスティフの出番だ。毛の一本一本を鋼のように硬化して、斬りかかってきた刃型レッドラムに真正面から体当たりを喰らわせて撃破。


「ウォンッ!!」


「GEEE!? オ、俺様ノ刃ガ弾カレタ、ダトォ……!?」


 さらにこちらはシベリアンハスキーとラフコリー。それぞれシベリアンハスキーは”吹雪(ブリザード)”、ラフコリーは”暴風(トルネード)”の異能に目覚めたらしく、協力して猛吹雪を作り出し、複数のレッドラムを一気に攻撃している。


「「ワオオオン!!」」


「GAAAAA……身体ガ、凍ル……」


「OOOAAAA……」


 一方こちらは、明るい茶色の毛が特徴的な大型犬、スパニッシュマスティフ。彼は砂の山の上で横になってゆっくりくつろいでいる。


「ハッハッハッ……」


 それを見逃すレッドラムではない。

 標準型や刃型、長槍型が一斉にスパニッシュマスティフに襲い掛かる。


「コイツ、戦ウ気ゼロダゼ!」


「ソンナニ死ニタイナラ、望ミ通リニシテヤラァァ!!」


 ……が、その瞬間。

 スパニッシュマスティフの下の砂が、レッドラムたちに襲い掛かる。

 練り固められた砂は刃のようになって、レッドラムたちを切り裂いた。


「GYAAAAA!? コ、コイツ、砂ヲ操ル異能ノ使イ手……!?」


「ハッハッハッ……」


 そして最後はポメラニアン。彼はその小さな身体で、北園の”雷光一条(サンダーステラ)”ばりの極太の電撃のレーザーを撃ち出していた。


「アオオーン!!」


「GUAAAAA!? コノチビ犬ガ一番ヤベェゾォォ!?」


 六匹の犬たちは、今回が初戦闘とは思えないくらいの健闘ぶりで次々とレッドラムを撃破。最初は百体を優に超えていたレッドラムの群れも、みるみるうちに数が減っていく。


 やがて日向が、飛び上がって巨人型レッドラムを頭から尻にかけて一刀両断。これにて、この場のレッドラムは全滅した。

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