表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1137/1700

第1107話 弔い合戦

 視点は基地の外から、ミサイル管制施設へ。


 オリガがジナイーダの投槍によって、致命的なダメージを受けた。槍は”怨気”の炎を纏っていたため、北園の”治癒能力(ヒーリング)”による回復も受け付けない。オリガはもう戦闘不能だ。


 日向、北園、日影の三人は、オリガがやられてしまったことで、ジナイーダへの敵意を剥き出しにして波状攻撃を仕掛ける。普段は温厚な日向も北園も、今はその表情を憤怒の色に染めている。


 日向がジナイーダの正面から斬りかかる。手に持つ『太陽の牙』は、彼の怒りを表すかのようなイグニッション状態。


 そのジナイーダの背後から、日影も攻撃を仕掛ける。今の彼は”再生の炎”のエネルギーが底を尽き、”オーバードライヴ”も”オーバーヒート”も使えず、受けているダメージもすでに相当な大きさだが、それでもその動きは速く、鋭い。


「はぁぁぁぁっ!!」


「るぁぁぁぁッ!!」


 現在のジナイーダは右足首を破壊され、重機関銃の弾丸で顔の右半分が削られ、すでに満身創痍の状態。しかしそれでも、ジナイーダの動きはあまり(にぶ)っていない。レッドラムとなったことで、生命力も人を超えているのだろう。


「ふん。まだまだ」


 日向と日影の同時攻撃に対して、ジナイーダは冷静に対処。日向の攻撃は、槍で防御すると槍ごと焼き切られる恐れがあるので、全て回避する。日影の攻撃は防御しても問題ないので、槍で受け止める。



 日向の攻撃は避けつつ、日影の攻撃は防御。

 二人を同時に相手取っても、まるで動じない。

 やはりジナイーダの基礎的な戦闘能力は相当なものだ。


 そしてジナイーダは、日向と日影が同時に横斬りを繰り出したタイミングで、見上げるほど高く垂直ジャンプ。そのまま燃え盛る槍を下向きに構え、真下にいる日向と日影を狙って急降下しながら槍で突き刺しにかかる。


「この攻撃は、やばそうだ……!」


「いったん下がるしかねぇか……!」


 日向と日影は、同時にその場から飛び退いた。

 直後、先ほどまで二人がいた場所に、ジナイーダの槍が突き立てられる。


 突き立てられた槍が、大爆炎を巻き起こす。

 日向と日影は爆炎にあおられ、吹っ飛ばされる。


「ぐぅ……っ!」


「ちッ……!」


 爆炎が晴れ、ジナイーダが姿を現す。吹き飛ばした日向たちを追撃することはなく、その場で荒い呼吸を繰り返している。


「はぁっ……。ふ……。消耗具合も馬鹿にならなくなってきたが、その消耗のおかげで、我が”憎怨火(アベンジェンス)”の火力は極限まで高まっている。難しい話だ」


 ……と、そこへ、ジナイーダの頭上から北園が吹雪で攻撃を仕掛けた。自身の”凍結能力(フリージング)の超能力に『星の力』を加えた、非常に強烈な猛吹雪だ。


「やぁぁぁぁっ!!」


 吹雪を放つ北園の表情もまた、いつになく本気。

 ジナイーダにやられてしまったオリガの仇を討とうとしている表情(かお)だ。


 これに対して、ジナイーダは北園に向かって左の手のひらを向ける。そして、その手のひらから赤黒い火炎放射を発射。火炎放射の勢いは強烈極まりなく、北園の吹雪と真正面からぶつかり合って拮抗(きっこう)する。


 北園の吹雪とジナイーダの火炎がぶつかり合った結果、大爆発が発生。黒煙が北園とジナイーダの視界から、それぞれの相手の姿を覆い隠してしまう。


 すると、北園の目の前で広がる黒煙の向こうから、炎の槍が赤黒い炎を(まと)いながら飛んできた。煙の向こうでジナイーダが槍を投げつけてきたのだ。


「きゃっ……!」


 北園は空中で後退し、ジナイーダの投槍を回避。

 彼女の目の前を通過した炎の槍は、そのまま天井に激突して大爆発。


「が、ガレキが落ちてくる……!」


 北園の言う通り、今の爆発で天井の一部が崩落。北園は素早くその場から移動して、落ちてくる瓦礫(がれき)を回避。しかしそのせいで、ジナイーダへの攻撃をいったん中断しなければならなくなった。


 北園の下では日向もまた、落ちてくる天井に巻き込まれないように頭上を注視している。彼の周囲も天井の崩落がひどく、気を抜いたら瓦礫に押し潰されてしまいそうだ。


 そしてその間に、ジナイーダは日影を狙っていた。

 両手に一本ずつ、計二本の赤黒い槍を持って日影を攻撃している。


「ふん! はっ! はぁぁっ!!」


「ちぃッ! おるぁッ! だるぁぁッ!!」


 日影はジナイーダを相手によく戦っている。負傷し、”オーバードライヴ”なども使えず、相手は剣に対して有利に戦える槍だというのに、突き出される槍を剣でうまく打ち払い、果敢にジナイーダとの間合いを詰めて斬りかかっている。


 だが、しかし。

 一瞬の隙を突いて、ジナイーダが日影の剣を、左手の槍で払った。


 それからすぐにジナイーダは右の槍を突き出し、日影の腹部を貫いた。


「貰った!!」


「がはッ……!?」


 腹から背中まで槍を通されて、日影は串刺しにされたまま前へ倒れそうになる。ここまでよく戦っていたが、もう彼の体力も限界だ。


 しかし、日影はまだ息絶えていなかった。

 前に倒れそうになった彼は、そのままジナイーダの顔を両手で挟むように捕まえた。


「ぐっ……!?」


 突如として日影に掴まれ、困惑するジナイーダ。

 そのジナイーダの顔面に、日影は思いっきり頭突きを叩きつけた。


「らぁぁぁッ!!」


「くぁ……!?」


 日影の頭突きは一回だけではない。三回、四回、五回と、休む間もなく叩き込み続ける。ジナイーダの槍で身体を串刺しにされたまま。


 ジナイーダは、今はレッドラムの身。人間より強靭な肉体を持っているので、この程度の頭突きで命を落とすことなど有り得ない。しかし最低限の痛みは感じるし、それはそれとして、いい加減に日影のしつこさに辟易(へきえき)していた。


 ジナイーダは日影の腹部に右足を当て、そのまま彼を蹴り飛ばすように槍を引き抜いた。


「ええい! 離れろっ!」


「がはッ……!?」


 ジナイーダに蹴り飛ばされ、日影は背中から床に倒れてしまった。苦しそうに床の上でのたうち回っており、これ以上はとても戦えるようには見えない。


 そして、日影を撃退したジナイーダに、今度は日向が攻撃を仕掛ける。灼熱の炎を宿す『太陽の牙』を振り上げて。


「よくもオリガさんを……! うおおおおおっ!!」


 しかしジナイーダは、日向の攻撃を回避しつつ、彼のボディを右の槍で一突き。


「ふんっ!」


「ぐっ!?」


 ダメージを受けて、思わず怯んでしまう日向。

 ジナイーダはその隙を逃さない。それから両手の槍で次々と刺突を繰り出し、日向を刺しまくる。


「はぁぁぁぁぁっ!!」


「ぐぁぁっ!?」


 日向の身体もまた、血飛沫(ちしぶき)と共に刺し傷だらけにされていく。そしてジナイーダがトドメの薙ぎ払いを繰り出し、日向が吹っ飛ばされてしまった。


 しかし日向は、受け身を取って着地。そのまま、いま刺された傷を”復讐火(リベンジェンス)”で治しつつ、ジナイーダめがけて恐るべきスピードで突撃した。


「ジナイーダぁぁぁぁぁっ!!」


 ブレーキを考えない猛スピードで突っ込みながら、日向はジナイーダに『太陽の牙』をフルスイング。もうすでに灼熱の刃が、ジナイーダの腹部に迫っている。


 ジナイーダもまた、日向の攻撃は速すぎて回避し切れないと判断した。そのため、まずは両手に持っていた二本の槍を後方へ投げ捨て、空いた両手でバリアーを展開させた。バリアーに彼女の全神経を注ぎ込み、防御を固める。


 日向のイグニッション状態の剣が、ジナイーダのバリアーに叩きつけられる。そして一瞬のうちにバリアーを両断して破壊した。


 バリアーが破壊された衝撃で、ジナイーダは、一瞬で吹っ飛ばされた。

 吹っ飛ばされ、その後ろの電子機器群に背中から激突した。


「くっ……! やってくれる……!」


 忌々しそうに日向を見ながら立ち上がるジナイーダ。日向の斬撃もわずかにジナイーダの身体に届いており、緋色の斬撃痕がジナイーダの左肩から右腰にかけて刻まれている。


 そんな彼女の両脇には、先ほど日向の一撃を受け止めるために投げ捨てた、二本の赤黒い槍。


 その槍の一本を右手で拾い、ジナイーダは投槍の体勢に。

 槍から赤黒い炎が激しく噴き出し、巨大な炎の槍のようになる。

 ジナイーダの、最大火力の用意だ。


「燃え尽きろ! ”ツァーリ・プラムヤ”!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ