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第1101話 火事場のミーティング

 コルト重機関銃を発見したオリガ。これを使えば、ジナイーダがパワーアップする間もなく彼女を倒し切ることができるだろう。


 ……と、その時だった。

 このオリガがいる方向に、日向が吹っ飛ばされてきた。

 ジナイーダの爆炎を受けたらしい。そのままコンテナ群に叩き込まれる。


「ぐぇぇ!? 熱つつつ……。くそ、さらに火力が上がってきてる。このままだと手が付けられなくなるな……」


「ねぇ日下部日向。見て、こんなもの見つけたわ」


「何ですかオリガさん……って、それはコルト重機関銃……。俺が以前、ここでオリガさんと戦った時、オリガさんが俺に向けてぶっ放してきた奴ですよね。まだここにあったんですか?」


「流石に違うでしょ。今回の騒動で、またここに持ち込まれたものでしょうね」


 日向とオリガがやり取りを交わしている間に、日影と北園がジナイーダと交戦している。日影が前に出て、北園がその後ろから援護をする陣形だ。


 しかし今の日影は”オーバードライヴ”さえ使えず、援護する人間も北園一人だけでは手数不足だ。徐々にジナイーダが日影を追い詰め始めている。


「っと、雑談してる場合じゃないな。俺たちも急いで復帰しましょう」


「待って日下部日向。ここはひとつ、(あわ)てずに作戦を立てておかない?」


「さ、作戦ですか?」


 一刻も早く日影と北園の手助けに戻らないといけないのは間違いないが、やはりジナイーダは強い。このまま日向たち四人がバラバラに攻撃を仕掛けるよりも、オリガの言う通り、日向とオリガだけでも完璧な連携を取ってジナイーダに仕掛けた方が、勝算は高いかもしれない。


 少し迷って、日向はオリガの提案を飲むことにした。

 もう少しだけジナイーダを日影たちに任せて、日向とオリガは話を続ける。


「日下部日向。あなたはジナイーダの”憎怨火(アベンジェンス)”について、どう見てる?」


「そうですね……。まず基本として、何度もジナイーダ少将にパワーアップの機会を与えるのは得策じゃありません。強力な攻撃で、ジナイーダ少将がパワーアップする余裕もないくらいに、一気に勝負を決めるのが理想です」


「そうね。そこは私もまったくの同意見だわ」


「でも……ここから一気にジナイーダ少将を倒せるかと言うと、難しいと思います。オリガさんも言っていた通り、ジナイーダ少将は本当に強いです。もう少し弱らせて動きを鈍らせないと、こっちの大技を当てるのは難しいかと」


「ジナイーダがパワーアップするのを覚悟して、もう少しダメージを与える方針で行くのね」


「はい。そして、ダメージの与え方も重要です。こちらがジナイーダ少将にダメージを与えることができる回数は限られている。その中で、どこに、どうやって攻撃すれば効率が良いか……」


 しばし考える日向。

 数秒ほどしてから、日向は再びオリガに声をかけた。


「俺がジナイーダ少将の動きを鈍らせます。オリガさんはしばらく隠れて様子を(うかが)い、チャンスが来たら、その重機関銃でジナイーダ少将を攻撃してください」


「あなたが行くの? 大丈夫?」


「大丈夫じゃないかもしれないですけど……考えがないわけじゃないです。それに、きっとジナイーダ少将も、俺の”紅炎奔流(ヒートウェイブ)”や北園さんの大火力は前もって警戒してる。それなら、ここで重機関銃という思わぬ火力が手に入ったオリガさんの方が、最終的にジナイーダ少将の不意を突けると思うんです」


「たしかに、あれほどの相手を仕留めるというのなら、賭けの一つや二つは必要になるでしょうね。いいわ、あなたを信じてあげる。しくじるんじゃないわよ」


「善処します……!」


 オリガに返事をして、ジナイーダに向かって走る日向。

 一方その頃、ジナイーダが北園に向かって黒炎の槍を投げつけていた。


「はぁっ!!」


「きゃあっ!?」


 ちょうど北園も攻撃しようとした瞬間を狙われた。

 バリアーを張る間もなく、北園の左肩が黒炎の槍に(えぐ)られてしまった。


「北園ッ! んの野郎ッ!!」


 日影が北園を助けるべく、彼女に追撃を仕掛けようとしていたジナイーダに斬りかかる。


 しかしジナイーダは、冷静に日影を一瞥(いちべつ)

 それから素早く槍を二回振るい、日影の胸部を×の字に切り裂いた。


「ぐぁッ……!」


「ふん。ご自慢の火力を失った以上、貴様と私の戦力差は歴然だ。痛い思いをしたくないなら、もう立ち上がるな」


 仰向けに倒れる日影に向かって、ジナイーダはそう言い放つ。

 しかし日影は不敵な笑みを浮かべ、震えながらも上体を起こす。


「へへ……モノの頼み方がなってねぇな。『もう立ち上がらないでください』だろ?」


「減らず口を」


「たしかにオレは消耗して、最初にテメェと戦った時より弱くなっちまった。だがそれでも、多少はテメェの邪魔になれる。テメェが嫌がるなら、いくらでも立ち上がって邪魔してやるぜ……!」


「ならばもう二度と立てぬよう、徹底的に殺し尽くすのみ。その粗末な頭にこの槍を突き立て、脳髄をかき回してやろう……!」


 そう宣言して、槍を構えるジナイーダ。

 そこへ日向が、ジナイーダの背後から走り寄る。


「待て待て待てー!」


「次から次へと。命拾いしたな」


 トドメを刺し損ねた日影にそう言って、ジナイーダは日向を迎え撃つ体勢に。


 日向が走り寄ってきたのに合わせて、ジナイーダは右手で槍を縦一文字に振り下ろす。それから身体ごと時計回りに回転(ターン)して、槍を左から右へ大きく薙ぎ払った。


「はぁぁっ!!」


「くっ!?」


 二撃とも『太陽の牙』の腹でガードした日向。衝撃を()らすことはできたが、槍が振るわれると同時に巻き起こった黒炎が日向を焼く。


「うわっつつ!?」


「そこだ……!」


 日向が怯んだ隙を突いて、ジナイーダは体勢を低くしながら日向に接近。日向を下から突き上げるように、黒炎の槍で心臓を狙う。


「させるか!」


 ジナイーダの狙いを素早く察知した日向は、イグニッション状態の剣で斬り払いを繰り出しながら後退。


 ジナイーダもまた日向の動きを見て、攻撃を中断。

 このままジナイーダが踏み込んでいたら、首を焼き斬られていただろう。


 いったん両者の間合いが開き、にらみ合いの形に。

 その間、日向は思考する。


「ジナイーダ少将の一回ごとのパワーアップの上昇幅は、けっこう高い。けれど一方で、俺たちの攻撃は毎回、律儀に回避している。わざと俺たちの攻撃を受けてパワーアップ、なんて真似は一切してこない……」


 つまりジナイーダは、耐久力は大して高くないと考えることができる。恐らくは普通の人間より多少高い程度。日向たちは下手にジナイーダを攻撃することができないが、ジナイーダもまた下手に日向たちの攻撃を受けるわけにはいかないのだ。


「そして恐らく”治癒能力(ヒーリング)”みたいな、回復系の超能力も持っていない。隙さえ作ることができれば、倒し切れる……!」


 そして日向は、再びジナイーダに向かって踏み込む。

 ジナイーダもまた槍を構えなおし、攻め込んでくる日向を待ち構えた。


「無駄だ。貴様の武力では、私には決して届かない!」

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