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第1098話 因縁

 日向、北園、オリガの三人は、核ミサイルの管理施設に到着。出入り口の自動ドアが開くと同時に、三人はホール状の管理施設に一斉に突入した。


「日影ー! 手助けに来たぞー!」


 呼びかけながら、管理施設の中を駆ける日向。

 しばらく走ると、日影の姿を見つけた。


 だが彼は、血まみれになって床に倒れている。まだ意識はあるようだが、意識があるのが不思議なくらいの重傷だ。”再生の炎”もエネルギー切れを起こしかけている。


 そしてそこには、二体のライフル型のレッドラムとジナイーダの姿もある。ジナイーダは黒炎の槍を振りかぶり、人間の女の子を始末しようとしている直前だ。


「うわ、日影!? 大丈夫か!?」


「ぐ……日向か……。北園と、オリガも来たんだな……」


「日影くん、だいじょうぶ!?」


 日向と北園が心配そうに声をかける一方で、オリガはジナイーダの方を見ていた。ジナイーダは女の子を始末しようとしていた手を止めて、乱入してきた三人の方を見ている。


「貴様らがここに来たということは……他の目付きのレッドラムたちを倒したのか。いささか想定外だったが、まぁ誤差の範囲だ」


「なるほどね……。日影がそう簡単にアンタに後れを取るかと思ったけれど、その女の子を人質に使ったってワケ? 意外と汚い性格なのね、あなた」


「勝利のためならいかなる手段も利用しろ。躊躇するな。『あの計画』でそう教え込まれただろう? 私も、きっと貴様も」


「ええそうね。でも、おあいにくさま。私はそんな手を使わなくても強いのよ。そういう戦い方をするのは、自分に自信が無い弱虫だけで十分よ」


 冷たい微笑を浮かべながら、ジナイーダにそう言い放つオリガ。

 その一方で、日向はオリガにジト目を向けていた。


(きっとジナイーダ少将を挑発するのが目的なんだろうけど……オリガさんだってこの基地でテロを起こしたときには兵士の皆さんを捕虜にしたり北園さんを人質に取ったりしたくせに、よくもまぁ素知らぬ顔で……)


 そして日向のジト目に気づいたオリガは、当然のごとく知らんぷり。


 だが、悠長にしている場合ではない。

 ジナイーダが女の子の首筋に、槍の穂先をひたりと当てた。


この男(日影)が反抗してきたので、もうこの少女も用済みとして始末しようと思っていたところだったが、幸運はこちらに味方してくれているようだ。この少女は貴様らが相手でも、人質として使いまわせるだろう」


「くそ、やっぱりそう来るのか……」


「ど、どうしよう、日向くん……」


「貴様ら、この少女の命が惜しくば、下手な真似はしないことを推奨する。もう二度目のチャンスは無いぞ?」


「た、たすけて……」


 おびえた様子で、日向たちに助けを懇願する女の子。その声を聞くと、日向も北園も、とても女の子を見捨てる気にはなれなかった。


 しかしそんな中、表情を全く変えないで冷静さを保っている人物が一人。オリガである。


「……ふん。まったく馬鹿馬鹿しいわね」


「オリガ。聞こえなかったか? この少女の命が惜しくば、抵抗するな」


「惜しいわけないでしょ、そんな子の命なんか」


「何だと?」


「なんなら、こっちで始末してあげましょうか」


 そう言って、オリガは。

 なんと、女の子の眉間に向かって拳銃を発砲した。


「あ……」


 短い声を発して、女の子は倒れた。


 これを見た二体のライフル型のレッドラムが、オリガに向かって発砲しようとする。


「SHAAAA!!」


「SHIIII!!」


 しかしオリガは左手で氷のナイフを生成。指の間に挟み込むように、計四本を左手に持つ。そしてその場で回転して、左右のライフル型に二本ずつ氷のナイフを投げつけた。


「はっ!」


「GYA!?」


「GUAA!?」


 ライフル型たちの顔面や胸板に氷のナイフが二本ずつ突き刺さる。そしてオリガが指を鳴らすと、氷のナイフが強烈な冷気を放出。ライフル型たちは氷像に成り果てて、一拍置いてから砕けて絶命した。


「これで後はあなただけね」


 ジナイーダに向かってそう言い放つオリガ。

 しかしそんなオリガに、日向と北園が詰めかかる。


「ちょっ、オリガさん! なんであの女の子を撃ったんですか!?」


「そ、そうですよ! いくらなんでも女の子がかわいそうです!」


「だって(くさ)かったのよ、あの女の子」


「く、臭かったって……!」


「はぁ、もう馬鹿ね、まだ気づかないの? さっきの女の子をよく御覧なさい」


「え……?」


 オリガに言われて、日向と北園は先ほどオリガに撃たれた女の子を見てみる。


 先ほどまで、この女の子は普通の人間だった。だがしかし、今は全身がどんどんぬめりのある赤色に変化している。まるで鮮血のような赤色だ。女の子の身体そのものも液状化し始めている。


 そして女の子は完全に形が崩れて、人間の原型など何処にもない血だまりと成り果てた。


「こ、この女の子、まさかレッドラムだった……!?」


「そういうこと。その女の子、やたら小綺麗(こぎれい)だった割には、妙に血の匂いが鼻についたのよ。強力なレッドラムたちが大勢いるこの基地で、今までたった一人で隠れていたというのも信じられなかったし、こんなことだろうと思ったわ。最初からジナイーダとグルだったのよ」


「あの女の子が臭かったって、レッドラムを構成する血の匂いのことだったんですね……」


「もー……オリガさんビックリさせないでー……」


 とりあえず、オリガが無力な女の子を撃ち殺したわけではないと分かって、胸をなでおろす日向と北園。


 日影もまたよろよろと立ち上がり、口を開く。


「クソが……そういうことだったのかよ……。ジナイーダを攻撃する直前、後ろから電撃みてぇな攻撃を仕掛けてきたのも、その女の子の仕業だったんだろうな……」


「あなたはもうちょっと敵の計略や策略を疑う努力をしなさいな日影。素直すぎるのも考え物よ?」


「うっせぇ……。オレとジナイーダの戦闘の途中で、さも偶然っぽく出てきやがったモンだから、レッドラムだとはこれっぽっちも思わなかったんだよ……」


「そこも作戦のうちでしょうね。最初から人質を用意するより、偶然を装う流れで人質に取る方が、その人質が向こう側だと怪しまれずに済むもの」


 それから日向たちは改めて、ジナイーダに向かって戦闘態勢を取った。日影もまた、かなりボロボロの状態だが、日向たちと共に『太陽の牙』を構えた。


「ジナイーダ少将! もうこれで人質もレッドラムも『目付き』もいない! 追い詰めましたよ!」


「でも、投降を聞き入れるつもりは全くないから。決着を付けましょう、ジナイーダ」


 日向とオリガに、そう言葉をかけられたジナイーダ。

 彼女もまた黒炎の槍を構え、日向たちを迎え撃つ姿勢を見せた。


「いいだろう。元よりこの程度の策、大して当てにしてはいなかった。我が誅罰(ちゅうばつ)の炎に焼かれたいというのなら、かかってくるがいい、愚かな人間ども……!」

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