表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1118/1700

第1088話 各々の持ち場

 本堂、エヴァ、ズィークフリドの三人がサイボーグ型のレッドラムと戦う中、グスタフ大佐は生存者たちのグループを指揮して他のレッドラムたちと交戦している。自らも”溶岩(ボルケーノ)”の能力で火球を発射し、レッドラムと戦っている。


「目の前の戦いも大事だが、背後のサイボーグ型にも注意せよ! 奴の攻撃力および攻撃規模は、並みのレッドラムとは桁違いだ! 巻き込まれないよう気を付けろ!」


「了解!」


「分かりました!」


 グスタフの声を受けて、彼の指揮下にいる人間たちの表情がさらに引き締まる。多くの者たちは軍人ではないので、戦いの経験など今日が初めてのはずだが、プロの軍人たちにも決して劣らない戦いぶりを見せている。


 この生存者たちの奮闘ぶりは、グスタフ大佐の指揮能力によるところが大きいだろう。娘を助けるために軍の要職に就く必要があった彼は、これまでひたすら自身の能力を高めることに注力してきた。そのため、彼の軍人としての能力の高さは本物だ。


 近くでは人型の岩の巨人のようなものが、レッドラムのグループの一つに突撃して暴れ回っている。これはロシア兵の一人であるシチェクだ。大柄な体格と豪快な性格が特徴の男だ。


「ふはははは! 化け物どもめ、蹴散らしてくれるわ!」


「SHAAAAAA!!」


「GYAAAAA!?」


 岩で全身を、そして顔まで覆っているシチェクは、防御力は高いが視界が悪い。そのため、大人しい性格の戦車兵イーゴリがシチェクに随伴し、電磁スキャンの能力を駆使して敵の位置をシチェクに教えている。


「シチェク! 九時の方向から新手!」


「任せろぉ! 片付けてやるぅ!」


「一時の方向から敵のエネルギー弾が飛んでくる! 対衝撃体勢用意!」


「よぉし! この岩の剛腕で受け止めてくれるわ!」


「遠距離攻撃してきた奴は、いま他の人たちが攻撃してくれてる! シチェクはさっきの九時の方向からの敵に集中して!」


「了解だぁ!」


 なかなかに絶妙なコンビネーションを見せるシチェクとイーゴリ。イーゴリがうまくシチェクに指示を送り、シチェクが襲い来るレッドラムたちを次々と葬り去る。


 健闘している二人の兵士を見て、グスタフ大佐がシチェクに声をかけた。


「シチェクくん! 君のパワーとディフェンスはこちらの陣営にとって、なくてはならない存在、頼みの綱だ! どうかそれを念頭に置いてほしい! 大々的な活躍を期待しているが、君が倒れたら我々が一気に崩れてしまうだろう!」


「うむ、責任重大というワケだな! 了解した!」


 シチェクは決して悪い人間ではないのだが、調子が乗ってくると少々突撃しすぎてしまう傾向がある。そんな彼の性質をいち早く見抜いたグスタフ大佐は、彼がミスを犯さないうちに釘を刺した。


 グスタフの指示を受けて、シチェクは少し慎重な姿勢を見せつつ、引き続きレッドラムたちを巨岩の身体で叩き潰していく。彼をはじめとした皆の奮闘で、このあたりのレッドラムの数はだいぶ少なくなった。


「ふははは! 無敵ではないかこの能力は! 今ならあのズィークフリドにも勝てるかもしれんな! かつてクーデターの時に戦った時は手も足も出なかったが、リベンジとしゃれこむのも一興か!」


「もー! シチェク、さっきグスタフ大佐に『調子に乗り過ぎないように』って言われたばっかりでしょ!」


「分かっておるわい! これでも俺様は常に細心の警戒を……」


 ……と、シチェクがイーゴリと話している、その時だった。


 突如として、空が光る。

 それとほぼ同時に、空から轟音が鳴り響く。


 さらに同時に、一条の稲妻が天から降ってきて、岩人間となっているシチェクの脳天を撃ち抜いた。


「ぬおおおおおお!?」


「し、シチェク!?」


 降ってきた稲妻は、岩人間の頭部を粉々に粉砕してしまった。

 その衝撃で、岩人間が倒れてしまう。


 イーゴリは急いで岩人間の頭部側に回り込み、中にいるシチェクの安否を確認しに行く。


「シチェク、大丈夫!?」


 幸いにも、シチェクは無事だった。落雷の衝撃によるものか、頭から軽く血を流しているが、元気そうではある。落雷を受けてくれた岩人間の頭部が、シチェクを守ってくれたのだろう。


「うむ……! ちと頭が痛いが、大丈夫だ。それよりも何が起こったのだ!? 雷が降ってきたか!?」


「うん、その通りだよ! 雷が降ってきてシチェクの岩人間の頭に当たったんだ!」


 シチェクとイーゴリの二人がやり取りをしている間にも、天が光って轟音が鳴り響き、雷は降り続けている。この戦場にいる人間たちを狙っているかのように、やたらめったらと降り注いでくる。


「うわぁぁぁ!? 雷がぁぁぁ!?」


「誰か、回復の能力が使える奴はこっちに来てくれ! 一人、雷に被弾した!」


「くぅ……! 鼓膜が割れそうだ……。当たらなくても、この大音量を聞かされ続けているだけでひどく苦痛だ……!」


 降り注ぐ雷は、次々と人間たちに被害を出しているようだ。

 これまで保ってきた守りの堅さが、少しずつ崩されていく。

 それを機に、レッドラムたちが少しずつ盛り返してきてしまう。


「ぬぅぅ……! 雷がこちらの被害をどんどん拡大していっているようだな。この雷、間違いなくレッドラムの能力だろう! どこだ! この雷の能力者は!」


 シチェクが叫びながら周囲を見回している。

 一方で、イーゴリは苦い表情を浮かべていた。


「これほどの規模で、そして雷を司る能力……。この雷を降らせているのは、サイボーグ型のレッドラムじゃないかな……」


「そうか! ならば、俺様もサイボーグ型を倒すために参戦を……!」


「ダメだよ! 僕たちが……というか君がここを離れたら、他のチームがレッドラムに押し込まれてしまう!」


「ううむ……しかし、多少の危険を冒してでも一気にサイボーグ型を仕留める方が、結果として被害は小さくならないか? 雷だってすぐ止められるのだから……」


「でも、一気に仕留められないかもしれないじゃないか! あのサイボーグ型は強い! 仕留めるのに手間取って、その間にレッドラムたちが押し寄せてきたら、完全に挟み撃ちにされて皆そろってなぶり殺しだよ!」


「やはり、あの三人が集中して戦えるよう、俺様たちはここで守りに徹するのが最善ということか……。ぬぅぅもどかしい! あの三人には一刻でも早く、サイボーグ型を倒してもらわねば!」


 降り注いでくる雷を忌々しく思いながら、シチェクはサイボーグ型と戦っている三人の方を見た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ