表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1103/1700

第1073話 悪の華

 下水道にてゴスロリ型のレッドラムと遭遇したオリガたち三人。


「『いつまで正義の味方を気取っているか』ですって? 何を言っているのかしら」


 ゴスロリ型が自分に投げかけてきた言葉に対して、オリガは首をかしげる。ゴスロリ型は皮肉めいた微笑(ほほえ)みを浮かべながら、続けてオリガに言葉を投げかける。


「だってあなた、この場所でたくさんの人間を殺したでしょう? 言ってしまえばアタシたちと同じじゃない。自分を苦しめた人たち、自分が苦しんでいる(かたわ)らでのうのうと幸せそうに生きている人たちが憎くて、関係ある人もない人も見境なしに殺したんでしょ?」


 ゴスロリ型にそう言われ、オリガは目を細めながら返答した。


「……否定はしないわ。確かにあの時の私は、この国のあらゆる物、あらゆる財産を破壊してやろうと思っていた。町も、人間も、文化も、何もかも。でも今は違う。私の罪の重さを受け止め、私が奪ってしまった物に少しでも見合う(つぐな)いができるよう戦っている」


「そんなのムダよ。今さらどれだけ善人ぶったところで、罪の(よご)れは水では流せないの。ぜーんぶあなたの自己満足!」


「そんなことは分かってるわ。私がこんなことをしたところで、私のことを一生許せない人間がいるってことくらい。でも今の私には、この生き方しかないの」


「この生き方しかない? そんなことないわ。あなたには別の生き方があるの」


「なんですって?」


 ゴスロリ型の予想外の言葉に、オリガは思わず話を聞く姿勢になってしまう。それを見たゴスロリ型は、皮肉めいた微笑みを蠱惑的なものに変えて、オリガに言葉をかけた。


「ねぇオリガちゃん。アタシたちとお友だちになりましょうよ。みんなで力を合わせて、この憎い国も、この星も、みーんな滅ぼすの! アナタが来てくれたら、ジナイーダちゃんもきっと喜ぶわ!」


 それを聞いたオリガは、無言で懐から拳銃を取り出し、ゴスロリ型の眉間めがけて発砲した。ゴスロリ型は咄嗟(とっさ)に頭を抱えてしゃがみ、銃弾を回避。


「きゃっ!? もー! あぶなーい!」


「何を言い出すかと思えば、馬鹿じゃないの? 私がそんな誘いに乗ると思った?」


「ふん。いいもん。いきなりこんなこと言っても断られるとは思ってたし。それなら、オリガちゃんの方から『お友達になってください』って言いたくなるまで、わからせてやるんだから!」


 言い終わると同時に、ゴスロリ型が攻撃を仕掛けてきた。振りかぶった右手から大量の鮮血のイバラを伸ばしてきて、オリガたち三人をまとめて拘束しにかかる。この下水道の通路の床から天井、右端から左端まで埋め尽くすほどの量のイバラだ。


 これに対して、北園が半円状のバリアーを展開。

 自分と一緒にオリガとシャオランの二人も防護する。


「”球状展開(スフィアウォール)”っ!!」


 北園のバリアーは、ゴスロリ型の血のイバラを受け止めた。

 しかしその次に、ゴスロリ型のイバラは北園のバリアーを覆うように巻き付き始める。


「うふふ、おバカさん。バリアーが壊れるまで締め付けちゃうんだから」


 イバラの締め付けるパワーはかなりのものらしく、北園のバリアーがミシミシと音を立て始める。このままでは本当にバリアーを破壊されかねない。しかしここでバリアーを解除して逃げようとしても、すでにイバラに取り囲まれているため逃げられない。


 するとここで、シャオランが床を殴りつけた。

 その右拳に”地震(アースクエイク)”の振動エネルギーを込めながら。


「バリアーの中じゃ攻撃できないと思った? せりゃあッ!!」


 シャオランが床を殴りつけると、その拳に込めていた振動エネルギーがゴスロリ型の足元まで伝達。彼女の足元をピンポイントで爆砕した。


「きゃあっ!?」


 不意を突かれて、シャオランの攻撃はゴスロリ型に直撃。

 ゴスロリ型は吹っ飛ばされ、血のイバラもただの血に戻るように解除された。


 ゴスロリ型に初めてのダメージを与えることに成功したが、まだまだゴスロリ型は健在のようだ。


「もー! むかつくー! そんな攻撃ができるなんて聞いてないー!」


 地団駄を踏むゴスロリ型。

 それと同時に、床や天井の血痕から大量のレッドラムが飛び出してきた。


「SYAAAAAAA!!」


「また無駄にたくさん出てきたわね。良乃、お願い」


「りょーかいです! 吹雪くらえー!」


 オリガの声を受けて、北園が両手のひらから吹雪を発射。

 下水道を丸ごと凍らせるほどの強烈な吹雪だ。


「こ、これもやばいかも……! 隠れなきゃ!」


 ゴスロリ型は血のイバラで(まゆ)を作り、その中に隠れた。

 残されたレッドラムたちは、成すすべなく吹雪に巻き込まれて凍結。


「GYAAAAA……」


 ゴスロリ型の繭も吹雪に巻き込まれて、カチコチに凍り付く。

 凍った繭が少しずつ割れて、再びゴスロリ型の姿が現れる。


 その繭ごと粉砕するように、シャオランがゴスロリ型に殴りかかった。纏う気質は”空の気質”。


「せやぁッ!!」


「やんっ! もー、危ないんだからー!」


 シャオランの拳は、ゴスロリ型の血のイバラの繭を一撃で粉々にした。ゴスロリ型はそのシャオランの拳の衝撃に身を任せるように、後方へと飛び退く。


 シャオランの拳は、あまりゴスロリ型にダメージを与えられなかった。だが、シャオランに殴り飛ばされたゴスロリ型を追うように、今度はオリガが前へ。シャオランのすぐ側を矢のように追い抜いた。


 オリガはゴスロリ型に追撃を仕掛けるつもりだ。

 しかし、シャオランがそのオリガを呼び止めようとする。


「待ってオリガ! あまり前に出たら、ボクの”空の練気法”でキミを守れなくなる! もしもソイツが”怨気”を使えるなら危ないよ!」


 オリガは、そのシャオランの言葉はちゃんと聞いていた。シャオランが言及した危険性についても最初から覚悟の上だ。その上で、返事をせずにそのままゴスロリ型への接近を続行。


「あなたの言うことも分かるけど、ここは攻め時だって私の勘が言ってるのよ。次の攻撃は間違いなく命中する……!」


 ゴスロリ型は、先ほどシャオランから殴り飛ばされて着地したばかり。

 オリガは鋭い踏み込みで、ゴスロリ型を拳の射程範囲に捉えた。

 彼女が言った通り、次のオリガの攻撃は確実に命中するはずだ。


「わ、はやい……!?」


「もらったわよ、小娘!」


 オリガが、自身の右拳に氷のナックルダスターを作り出す。

 そして、その氷の拳を、ゴスロリ型のみぞおちど真ん中に突き刺した。


「はぁぁっ!!」


 オリガの拳は、彼女が見上げるほどの大男だろうと悶絶するほどの破壊力がある。加えて能力を使って生成した氷のナックルダスターが拳の威力を底上げする。これは大きなダメージになったはずだ。



 ……と、思いきや。

 ゴスロリ型は、その場に平然と突っ立ったまま、オリガの拳をみぞおちで受け止めていた。


「なっ……!? 私の拳が、効かなかった……!?」


「うふふ。アナタのへなちょこパンチがアタシに通用すると思った? 残念でしたー!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ