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第1071話 血染めの地下道

 それぞれの陣営が、それぞれが担当する目付きのレッドラムと遭遇している頃。


 こちらは下水道を担当する三人、オリガと北園とシャオランのグループ。三人は現在、下水道に向かうため、その上階の薄暗い地下通路を通っている。


 三人の行く先には丁字路。

 そして、左右の角にはレッドラムが待ち構えていた。

 右側に二体、左側に三体、合わせて五体。


 レッドラムたちは、三人が近づいてくるのを見計らって不意打ちを仕掛けるつもりだ。しかも、この五体のうちの二体がメタボ型のレッドラム。この個体は自爆能力を持っており、三人を十分に引き付けてから自爆に巻き込むつもりである。


 もう少しで三人が十分な距離まで近づいてくる。

 飛び出す瞬間を今か今かと待ちわびるレッドラムたち。


 だが、もう少しのところで三人は足を止めた。

 オリガが丁字路の先に向かって耳を澄ませる。


「……五体くらい角の向こうに隠れてるわね。良乃、お願い」


「りょーかいです! ”発火能力(パイロキネシス)”+”溶岩(ボルケーノ)”っ!!」


 北園の両手から、恐るべき勢いの火炎放射が放たれた。火炎放射は丁字路にぶつかり、なおも勢いは止まらず左右の通路に流れ込む。当然、左右の角に隠れていたレッドラムたちは焼死した。


「GYAAAAAA……」


「GUAAAAAA……」


「ふん、やっぱりいたわね。私の耳の良さをなめるんじゃないわよ。屋内だから音もよく響くし、潜伏なんて無意味と知りなさい」


 オリガの聴力は極めて鋭敏に発達している。これによって敵の位置を事前に察知し、北園に敵の位置を教え、襲い掛かってくる前に大火力で吹き飛ばす。この方法で楽にここまで進んできた。


「我ながらとんでもない戦法を開発しちゃったわね。良乃がこっちに来てくれてよかったわ」


「えへへ~、ほめられた」


「それよりも先を急ごう二人とも。ゴスロリ型はボクたちの予想以上のペースでレッドラムを生み出しているみたいだ。ここに来るまでに何体やっつけたことやら」


 オリガと北園のやり取りの途中で、シャオランがそう告げた。

 女子二人もシャオランの言葉にうなずく。


「そうだね。わたしたちが早くゴスロリ型を倒せれば、増援が止まるだけじゃなくて、他のグループを手助けにいけるんだしね」


「下水道へ続くマンホールは、たしかこっちだったわよね。もう近いはずよ」


 三人は下水道へと続くマンホールへ向かう。

 しばらく進むと、目的のマンホールを見つけた。


 マンホールはなぜか取り外されており、自由に下へ出入りすることができるようになっているようだ。


「誰が開けてくれたのかな?」


「そりゃあ決まってるでしょ」


 首をかしげる北園に、オリガがそう答える。

 それから一拍置いて、穴の中から通常型レッドラムが飛び出してきた。


「KIEEEEE!!」


 ……が、飛び出してきたと同時にオリガが氷柱(つらら)を生成。通常型レッドラムを串刺しにした。


「GUEEEE……」


「こいつらが開けたんでしょうよ」


「やっぱりこの下にゴスロリ型がいるんだろうね。そしてゴスロリ型が生み出したレッドラムが、この地下通路を通って地上へ……ってところかな」


「そういうことでしょうね。それじゃあシャオラン、先行よろしく」


「う、うん、分かった。少し怖いけど行ってくるよ」


「なんというか……あなた、”空の練気法”で勇敢になったのはおめでたいことなんだけれど、それはそれでイジり甲斐が無くなったわね……」


「ひ、ひどい」


 困ったように返事をして、シャオランはマンホールの中へと降りていった。下水道は電気が通っていないのか真っ暗なので、基地の中で拾った懐中電灯で足元を照らしながら。


「どう、シャオランくん? 安全そう?」


「とりあえず、大丈夫そう……。この周囲には敵の姿も気配もないよ。でも……」


「でも?」


「雰囲気はかなり不気味というか……。とりあえず、降りてきてもらえればボクが言いたいことも分かってもらえると思う……」


 シャオランの言葉を受けて、顔を見合わせる北園とオリガ。

 このままシャオランを孤立させるわけにもいかないので、とりあえず下水道へ降りてみることにした。


 下水道はそこそこ古い造りのようで、壁や天井はコンクリートではなく石材で造られているようだ。石材の色は薄い茶色。


 その薄い茶色の石材で造られた壁や天井、あちこちに大量の血が付着しているのだ。


「うひゃあ……これはなんというか……」


「ほ、ホラーね、随分と」


「だよね……。ボクも降りてきてビックリしたよ……」


「どうしてこんなに血が付いてるんだろう……? 雰囲気づくり?」


 北園がそう言って首をかしげた、その時だった。

 壁や天井に付着している血が、ぶくぶくと赤い泡を立て始めた。


 それを見て、オリガが苦いながらも合点のいったような表情。


「なるほどね……! この血を付けたのがゴスロリ型だとしたら、()()ができてもおかしくないわよね! 良乃、血痕からレッドラムが出てくる前に凍らせなさい! シャオランは跳び出してきたレッドラムの迎撃!」


「り、りょーかいです!」


「わかった!」


「SYAAAAAAA!!」


「来た……!」


 壁にぶちまけられていた血痕から、通常型のレッドラムが飛び出してきた。オリガの指示通りシャオランが迎え撃つ。一直線に向かってきたところを、震脚を踏んでの右発勁で頭を吹き飛ばした。


 オリガと北園は氷の異能を使って、壁や天井の血痕を凍らせていく。恐らくこれでレッドラムが生み出されることは防げるはずだ。


 しかし、レッドラムを生み出す血痕があるのはここだけではなかったのだろう。通路の左右から大量のレッドラムが襲来してきた。


「SYAAAAAA!!」


「KEKEKEKEKE!!」


「きっと、この下水道全体がレッドラムの製造工場みたいになっているのでしょうね。厄介な事してくれるわホント……!」


 殺すべき人間を見て、一心不乱に突撃してくるレッドラムたち。

 そんな鮮血の異形の群れに対して、三人は静かに迎撃態勢に入った。




 そして、その頃。

 同じ下水道内の別エリア。


 赤いイバラで作られた玉座のような椅子に、赤と黒を基調としたゴスロリ衣装の少女が座っていた。オリガたちが標的とするゴスロリ型のレッドラムである。


「うふふ! 来たわね、来たわね、あの子が来た! かわいいかわいいオリガちゃん! うちのジナイーダちゃんとお友達にしてあげるからね!」


 椅子に座りながら、一人微笑むゴスロリ型。

 その様は、不思議の国の少女か、あるいは悪の女王か。

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