第1話 運命の朝
どうも皆様、初めまして。翔という者という者です。(誤字にあらず)
毎日投稿を目指して頑張っていきますよ。
稚拙な文章でしょうが、少しでも楽しんでもらえたら幸いです。
十年前。
オーストラリア東部の沖合にて急な嵐が発生。
これにより、一隻のクルーザーが南太平洋まで流され、転覆。
乗っていた一組の夫婦と、三歳になる彼らの娘が行方不明になる。
救助隊の捜索から三日後。
夫婦は近くの無人島に流れ着いていたところを無事保護された。
しかし娘はいくら捜しても見つからず、とうとう捜索は打ち切られた。
この悲痛なニュースは、しばらくの間、世界中で報道されていた。
しかし、しばらく経つと、やがて忘れ去られてしまった。
この海難事故が。
後に地球の命運を左右する、世紀の大災害を引き起こすなど。
この星の人間たちは、誰ひとりとして予想できなかっただろう。
◆ ◆ ◆
一か月前。202X年。11月24日。平日。
―――その日、夢を見た。
五人の人影が、何者かと戦っている。
かの者は、太古よりこの星に潜伏してきた悪意。
五人のうちの一人が、剣を手に、物凄いスピードで何者かに向かっていく。
対する何者かが手を振りかざすと、嵐が起こり、大地が割れた。
剣を持つ者は、裂けた大地を飛び越え、嵐を潜り抜け、斬りかかる。
およそ人間同士の戦闘ではない。
それこそ、まるで神話のような攻防。
―――これは、星を守るための戦いである。
「はっ!?」
声と共に、黒いふんわりボブヘアーの少女がベッドから飛び起きる。
時計は8時を指している。朝だ。
「今のは……夢? でも、これはもしかして、予知夢?」
―――ここだけの話、私には予知夢を見る能力がある。
他にも色々と特別な能力があるが、ここでは割愛。
今見た夢は、何らかの形で現実になると思う。
けど………。
「あんな夢、一体どうなったら現実になるっていうの……?」
少女の顔は、青ざめていた。
夢の映像は、まるでなにかの超人バトルアニメでも見ていたのかと思ってしまうほど、現実離れしたものだった。あのような戦いが現実に起きれば、大災害どころではない。
そして、目が覚める刹那に感じた、『星を守るための戦い』というワード。これが意味するものとは、一体。
「……もう一回寝たら、またさっきの夢を見れるかな?」
そう言って少女は二度寝に突入する。
繰り返すが、時計は朝の8時を指している。そして平日。
その日、少女が学校に遅刻したことは言うまでもない。
◆ ◆ ◆
そして現在。12月24日。日本。
九州北部、十字市、十字町にて。
「日向ー。朝よー。下りてらっしゃーい」
「起きてるよー。いま行くー」
彼の名前は日下部日向。
この十字町に住む、高校1年生の男子である。
やや黒みがかった茶色の髪をバサバサとかき上げている。
趣味はテレビゲーム。
ジャンルは問わないが、強いて言えばアクションゲームを好む。
最近は格闘ゲームがマイブームなのだとか。
一見するとやや変わった名前だが、これは彼の父が旧日本帝国海軍の戦艦を好んでおり、彼の名前も伊勢型二番艦「日向」から取ったためである。そこに名字がくっついた結果、「日」が二つも入る名前になった。とはいえ日向自身は、戦艦には大して興味は無い。
日向は自室から一階に下りて、寝ぼけ眼を持ち上げながら食卓につく。
「おはよ、母さん」
「おはよう、日向。眠そうね。また遅くまでゲームしてたの?」
「あー、まぁ。ちょっと白熱しちゃって」
「夜更かしし過ぎると、身長伸びないわよ」
「その助言は二年くらい前に欲しかった。なんで成長期過ぎてから言ったよ……」
日向の身長は165センチほど。せめて170センチ以上は伸びてほしいと常々思っているだけに、先ほどの母の言葉は胸に刺さった。
「今日の学校は早く終わるのよね?」
「うん、そうだよ」
「お母さん、今日はパートの遅出だから。お昼と晩御飯は昨日の残りを適当に組み合わせて食べておいてね」
「ん、分かった」
「この間みたいに、ゲームに夢中になり過ぎてご飯を食べ忘れたとかは、ナシよ?」
「……善処シマス」
日向は食事を終え、席を立つ。
部屋に戻って学ランに着替え、バッグを持って玄関へ。
「じゃあ、行ってきます」
そう言って日向は家を出発した。
今日は12月24日。学校は終業式。
今日を乗り越えれば、明日は待望の冬休みである。
日向は自転車に乗って坂を駆け下りる。
彼の自宅は山の傍の住宅街にある。
自宅のすぐ裏が山になっており、日向が小さい頃はこの裏山でよく遊んでいた。
本日は晴天。清廉とした冬空が広がっている。
その空の下を、日向は自転車で颯爽と駆け抜ける。
彼は自宅から自転車で四十分ほどかけて高校に通っている。
公立十字高等学校。それが彼の通う高校の名前だ。
変わらない毎日。変わらない日常。
退屈だが、しかし尊い、変化のない日々。
そんな日々がもうすぐ終わることを、今の日向は知る由もない。
災厄の種は、とうの昔に蒔かれている。
そして誰に知られることも無く、時間をかけてその芽を育ててきた。
災厄は今、その花が開く時を待っている。