第7話 契約と武器ガチャ
よろしくお願い致します。
空中を舞っていた大量の紙吹雪も止んだ干渉領域の中、結び目を解いた紙には三日月の印があった。
三日月か。これってもしかして……。
「おめでとうございます。これで貴女は月属性の魔術が使えるようになります」
おー、やっぱりー。月属性かー。
「では、実際に精霊との契約に移りましょうか」
よし、いよいよ契約だ。紙に宿っている精霊を呼び出し、契約をするらしい。
「では、私の後に続き復唱してくださいね」
女神様が精霊との契約の呪文を唱える。それに続いて私も唱えた。
我が血をもって、虚無に問おう。
我が魂を寄る辺とし、その身を満たす。
我が言霊を借りて武器となる。
それは命、それは祈り、それは世界。
我が真名をもって理を刻み、刹那の命脈をもって汝を縛ろう。
我が祈りは真理となりて、かの扉は開かれん。
今こそ、真の姿を解き放ち、虚構なき神秘のその名を我に示せ。
呪文が唱え終わると、急に紙が動き出した。
紙は掴んでいる私の手をするりと通り抜けると、宙に浮かんで燃えだした。
「えーっ、え!? えぇー?」
え、しか言っていないが、とっさのことに語彙力を期待する方が間違っていると思うの。
紙は幻想的な青白い炎を出しながら、燃えている。
大丈夫なのかな。私、別に黒焦げの精霊とか欲しくないよ。
ちらりと女神様の方を一瞥すると、女神様はにこやかに笑っていた。
「大丈夫ですよ。演出の一つなのでもうじき終わります」
紙の方に視線を戻す。
燃え方が激しくなり、魔法陣らしきものが紙のすぐ下に現れた。
パーンという音と共に、紙が爆ぜた。ぎにゃー。
「うん、不意打ちはやばい」
急に爆発するから、めっちゃ心臓ドキドキしてるんだけど。
ビックリしすぎてリアクション取れなかったー。
恥ずかしいから、全然驚いてません風を装う。
「メフ、キュイ、メフ、キュイ」
可愛らしい声に唐突に現実に引き戻される。
あ、精霊ー。なにこれかわいい(語彙力)。
これってどう見てもプリティーでキュアキュアな妖精じゃん。
……まあ、形容すると、白い体躯と顔は共通。おなかに白色の三日月模様がある。
…………これ以上の形容は私の語彙力では無理ね。
得手不得手があってもいいじゃない、人間だもの。ひいろ。
「メフキュイ」
精霊が手を伸ばしてきた。
「おー、よろしくお願いしまーす」
私も人差し指を伸ばして、指と指?が接する。
とーもーだーちー。
すると友達になれたのか、指先がピカッと光った。
「はい、これで契約終了です。お疲れ様でした」
とは女神様のお言葉。案外簡単でしたな。
「一応ですが、精霊は魔獣に攻撃されないので安心してくださいね」
そうだよね、せっかく契約して友達になれたのに、某コロン様の様に死んだら悲しすぎるよ。
絶対トラウマになるって。
「では、引き続いて精霊のグレードアップを行います。とぉりゃー」
女神様の勇ましい掛け声とともに精霊がまばゆい光に包まれる。
「おぉー、幻想的ー」
しばらくすると、光が急速に収束していく。
ポンッと音を立ててそこに現れたのは、先ほどの精霊の面影を残す精霊の姿だった。
「おぉー」
大きく変わった点を挙げるなら、おなかの三日月マークの中に星型のマークが増え、マークの色が白から薄い紫になっていること。
「これってつまり……星属性?」
「はい、その通りでございます。これで貴女は月属性と星属性の魔術が使えるようになりました」
「なるほど、月属性と星属性か……」
……あ、というか、各属性でどんな魔術が使えるか聞いてなかったね、そういえば。
「あの、各属性でどんな魔術が使えるようになるのか簡単に教えて頂けますか?」
「はい、承知いたしました。では、まず最初に、これからお話しすることを覚える必要は全くありません。ゲームを進めていけば、嫌でもそのうち覚えるでしょうし、ヘルプ画面で確認することもできますから」
なるほど。まあ、いきなりで全部覚えるなんて到底無理だとは思っていましたが。
「では、まず、精霊には火・水・土・風・光・闇・星・月の8つの属性があり、契約した精霊の属性によって使える魔術が異なるということは、認識して頂いていると思います。この世界の魔術は大別すると元素魔術(エレメントゥム)・祓魔術(エクソシズム)・降魔術(ネクロマンシー)・招喚術(サモニング)・陰陽術(ソルス)の5つに分類されます。また、これからご説明致します火・水・土・風の4つの属性の魔術をまとめて元素魔術と呼びます。この世界では一般的には魔術というとこの元素魔術のことを差し示し、元素魔術を使う人たちを魔術師(マグス)と呼びます……それから……」
***
「……です。説明は以上となりますが、質問等はございますか?」
割と長かった。でも丁寧に説明してくれたから、結構覚えている。
同じ説明がヘルプでも見られるそうなので、忘れてしまっても安心だ。
「いえ、大丈夫です。取りあえず、私は月属性と星属性の魔術、つまり、陰陽術と招喚術の2つが使えて、さらに月と星の複合魔術である神宿り(ポゼッション)も使える。そしてこの世界では一般的に、私みたいに星属性と月属性の両方の魔術が使える人は戦巫女(メディウム)や神主(ドルイド)と呼ばれる、という理解で合ってますか?」
自分に関係することは全力で覚えたから、間違ってはいないはずだ。
「はい、その通りでございます」
女神様がうなずきながら微笑む。
えーと、残すはガチャのみかな。
「そういえばガチャもあるんですよね。何回か回したいのですが?」
「はい、女神のギフトですね。一応、もう一度ご説明させて頂くと、こちらは既にご説明した通り、武器が対象となっております。希少以上のレアリティのみが出現し、排出率は伝説が10%、至高が20%、希少が70%となっております。目玉の伝説クラスの武器は合計14種類ありまして、ダブることもあるのでその点はご留意下さい。ガチャを20回行われると1個確定で伝説クラスの武器が当たります」
確率は7%かー、ソシャゲーに比べればかなり良心的かもしれない。天井(上限)があるのも良いね。
でもガチャの闇は深い。
普通に考えたら100回回せば、10個の目玉武器が出ると考えると思うけど、確率は毎回同じだからね。
確定枠以外では出ない可能性も普通にあるから怖いよね。
コンコルド効果も忘れてはならない。簡単に説明すると、途中でやめるとすべて無駄になるから、途中でやめられなくなることなのよね。怖い、怖い。
今回は目玉武器が確定になる20の倍数でなんとなく40回、それ以上は回さない。
ガチャ系は引き際が肝心。昔、爆死した時に学んだことだ。
確定枠で2個は確定したから残り何個当たりを引けるかな。
「40回ガチャします」
「はい、では合計16000テロルになりますが、よろしいですか」
確認画面が出現したので、同意を押してすぐに消した。
すると大きな画面が登場した。画面には黄金のカプセルトイのイラストが描かれている。
「レバーのところをタップして、押し下げれば回せます。現在は1回10連に設定していますが、変更もできます」
40回もいちいち回すのは疲れそうなので、そのまま10連で4回まわすことにした。
あー、ドキドキする。
まず最初の10連目。いきまーす。
レバーを下にフリックすると、カプセルトイの中がぐるぐるして、10個のカプセルが出てきた。
カプセルが開く演出と共に、サムネイルみたいな武器のイラストが、画面の下の方に出現して、整列していく。5個2列、ちょうど10個の画像が出てきて終了した。
よく見ると、画像の枠が金色に光っているのが1個、赤色に光っているのが1個あった。
「あの、画像の枠の色ってなんですか?」
「はい、レアリティが伝説クラスの武器は黄金色、至高クラスは赤色、希少クラスはフチなしとなっております」
ということは今、伝説クラスが1個当たったということか。準レアの至高クラスは2個と。
金の枠には短剣と名前が書かれていた。
10連目結果
伝説 1個
至高 1個
希少 8個
では、20連目。いきまーす。
ガラガラ、ポンッ。
画像の枠が金色に光っているのが2個、赤色に光っているのが1個あった。
金の枠には大鎌、魔法銃と書かれていた。
20連目結果
伝説 2個
至高 1個
希少 7個
では、30連目。いきまーす。
ガラガラ、ポンッ。
赤色に光っているのが2個あった。金色は0個だった。
……うん、爆死した。
30連目結果
伝説 0個
至高 2個
希少 8個
気を取り直して、ラストの40連目、いきまーす。
ガラガラ、ポンッ。
金色が1つ、赤色が3つあった。
金の枠には短剣と書かれていた。
40連目結果
伝説 1個
至高 3個
希少 6個
合計40連で得られた装備一覧
・伝説クラスの武器 合計4個
・短剣
・大鎌
・魔法銃
・短剣
・至高クラスの武器 合計7個
・希少クラスの武器 合計29個
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