第6話 衣装
ありがとうございます。遅くなりました。
「すみません、課金します」
あれ、なんか前にも言ったような気がする(すっとぼけ)。
「はい、種族のアンロックですか?」
「そうです、魔人族のアンロックをお願いします」
「分かりました。では種族:魔人族をアンロックします。アンロックに500テロルがかかりますがよろしいですか?」
確認画面が出てきた。
同意をポチっと押すと確認画面が消えた。これで大丈夫ね。
画面を見ると、一番下の種族の選択欄の魔人族の3つの名前が灰色から黒色に変わっていた。
どうやらこれで、選択できるようになったらしい。
早速、魔血人の文字をタップして選択し、決定ボタンを押すと大きな画面が消えた。
「お疲れさまでした」
女神さまがほほ笑み、労ってくれた。
「これで必要な設定は全て終了です。そろそろモデリングも終了しますが、チュートリアルを開始しますか?」
「えーと、チュートリアルって何をするんですか。あ、チュートリアル後の流れについても教えていただきたいのですが……」
うん、ちょっと不安だったことを聞いてみた。
「はい、チュートリアルは魔法や魔術の使用方法や武器の扱いなどを動かない的で練習して頂きます。その後、実際に魔物と戦闘を行って頂いて、チュートリアル終了となります。チュートリアルはスキップすることも一応可能ですが、受けられることを推奨します」
戦闘とかすごく怖いんですけど。あと、運動神経が鈍いけど、大丈夫か私。
「大丈夫ですよ。皆さんすぐ慣れますから」
心配な気持ちが伝わったのか、そう言ってくれた。
「チュートリアル終了後はゲーム本編の開始です。チュートリアル終了時に武器と防具を一種類ずつと惑星アースに存在する6カ国で共通に使用されている通貨であるタンタルをお渡し致します。その後はランダムにどこかの国の近くに転送します」
おぉ、6つも国があるのね。マンガではフランシウム王国が舞台だったこともあって、他の国は名前すら出てこなかったからね。
「一つアドバイスするなら、転送後はまずは近くの国に入国して生活基盤を整える方が無難ですね。宿屋の確保や、可能であれば、ギルドに所属してギルドカードを手に入れておくと、出入国の手間とお金が省けますよ」
あ、やっぱり出入国にはお金がかかるんだ。それにギルドカード……剣と魔法の世界の定番ですね。
ここはすぐにでもチュートリアル開始……のその前に。
「あの、そういえば課金で、ガチャと特別アイテムショップのアンロックができるって言ってましたけど、まだできますか?」
「はい、チュートリアルの開始前ですので可能ですよ」
「では、特別アイテムショップのアンロックをお願いします。」
「はい、特別アイテムショップはアンロック、つまり利用するのに300テロル、アイテム自体の購入には別途料金が発生致しますがよろしいですか?」
「はい、お願いします。」
ふふふ、人生を2次元に極振りしている私に、いまさら撤退の二文字はない。
たとえ、ゲーム会社に殆どお金が行くとしても、ファンタジアの作者である’サンタ信者’さんの糧になるのなら本望である。
もはやお馴染みの確認画面が出現したので私は迷わず同意ボタンを押した。
すると、大きな画面が出現し、その隣に等身大のマネキンのような3D映像がホログラムの様に映し出された。
現在の画面には多種多様な防具が表示されている。よく見ると、一番上に防具、衣類、アクセサリー、精霊の4つの項目があり、それぞれタップすると切り替えられるみたいだ。
右端にはネットショップでよく見かけるカートが表示されており、カートに追加すると、アイテム名と合計金額が表示される仕組みのようだ。
「念の為にご説明致しますと、一番上に表示されている項目をタップすることで、表示しているアイテムの種類を切り替えることができます。また、アイテムをタップして選択すると選択状態となり、もう一度タップするとカートに追加されます。選択状態となったアイテムは隣のホログラムに詳細が表示されますので参考になさって下さい。カートに追加されたアイテムを削除したい場合は、カートのアイテム名の横のバツ印をタップするとカートから削除されます。全ての項目のカートへの追加が終わりましたら、アイテムの確定と精算を致しますので、お声がけ下さい」
よし、まずはやっぱり衣類からだ。取りあえず防具は後回し。
画面の一番上の衣類をタップする。
うーん。色々ありすぎてよくわかんない。
「お、これは……」
ザーっと画面をスクロールしていくと、限定と書かれた衣装がたくさん出てきた。
どうやら通常商品の後に限定商品が並んでいるみたいだ。
「あ、なんかこれよさそう」
衣装をポチッと押して、選択状態にする。
マネキン型ホログラムに衣装が反映された。
「…………これ、すごくカッコいい」
最初、言葉にならなかった。それくらい良かった。
どんな服装かというと、上半身のインナーは、暗い赤色でみぞおち位までの長さのハイネックのノースリーブ。アウターはドレープ(ヒダのことね)のついた、黒色のベスト、左右のウエスト当たりに赤のリボンのワンポイント付き。腕には肘から黒色の狩衣(陰陽師が着てそうな服)の袖だけが装着されている。
下半身は暗い赤色のミニスカートで黒のニーハイソックスを履いている。足先は足袋の様になっており、下駄の様な靴を履いていた。
選択したアイテムの詳細は……。
種別(衣装):戦場の星巫女(レアリティ:至高)
価格800テロル
(付与能力:自動修繕・魔力回復速度上昇(小))
(製作者:ゲート)
(購入制限:おひとり様1つまで)
袖のせいかどちらかというと陰陽師っぽいけど。いいね、和風ファンタジー大好きです。ここ一番の場面ではこの服を着よう。
レアリティは至高。値段は800テロル。能力は自動修繕と魔力回復速度上昇(小)か。まあ、見た目優先で。
取りあえずカートに投入ー、値段はそこそこするけど、まぁ、気にしない。
はい、つぎー。
おー、これもいいなー。
それから目に付いた限定商品の衣装を何点かカートに入れた。現在、合計3200テロル。
見ていると全部が欲しくなるから、危険ですな。
「よし、次はアクセサリーかな」
アクセサリーの項目をタップすると画面が切り替わった。
「やっぱり狙い目は限定商品だね。なんか熱の入れ方が違ったもん」
腐っても限定商品。それぞれの商品にこだわりが見られるし、自動修繕がデフォルトで付いているのもなんかいい。
うーん。髪飾り、ネックレス、ブレスレット、イヤリング、指輪……。種類があって迷うー。
見た目から言うと最初は髪飾りかな。ポチッと。
私が選択状態にしたのは花の髪飾り。
鮮やかな青紫色で少し小ぶりなポインセチアのような花がメインの髪飾りで白の房紐が2本垂れている。
詳細は……。
種別(装飾類):永劫の祝福(レアリティ:至高)
価格400テロル
(付与能力:自動修繕・魔力蓄積(中))
(製作者:ゲート)
(購入制限:おひとり様2つまで)
おー。安定のゲートさんですねー。これは、きっと話が合いますね。
数を2つに変更して、カートにゴー。800テロルだけど、さっきの衣装と絶対マッチするって。
それから500テロルの髪飾りを3つと500テロルのネックレスを2つと700テロルの指輪を1つカートに移して終了。ここでの合計は3500テロルでした。
現在の合計は6700テロル、結構買ってしまった。
よし、気を取り直して、次よ、次っ。
防具の項目をタップして防具に移動した。
巫女服をメインにするから、武器はイメージ的には薙刀かな。というか武器種は詳しく調べてないんだよね。設定と種族は覚えましたけど。
もし薙刀があるなら、防具は要らないよね、たぶん。
イメージ的にもなんか合わない。巫女さんが大盾持っているとか……それはそれでありな気がしてきた。
けど、私はタンク職よりは攻撃職がいいな。回復職でもいいけど、攻撃されてばっかりは嫌かも。
……。
……うん、というかぼっちの私がなにパーティプレイを前提に話を考えているのだろうか。ちょっとへこんだ。
まあ、一つくらいは買っとくか。腐らないし。
画面をぽちり。
種別(防具:大盾):悠久の鎮魂歌(レアリティ:至高)
価格800テロル
(付与能力:自動修繕・反撃系スキルの威力上昇(小))
(製作者:ゲート)
(購入制限:おひとり様1つまで)
やっぱり、ゲートさんですね、さすがです。
どうせ買うなら、大盾ですよね、やっぱり。小さい盾は限定商品もそれ以外も大差ないし。
それに、悠久の鎮魂歌はデザインがいい。白を基調とした大きなひし形の盾に、大きくて太い黒のバツ印の刃物が付いている。これがあれば攻撃も防御もそれなりにできるよね。
カートへ投入した。合計金額7500テロル。
「残すは、精霊のみ……か」
精霊の項目をタップした。
画面にはこう書かれていた……。
精霊との契約……300テロル
精霊のグレードアップ……700テロル
※精霊の初期属性はランダムですのでご注意下さい。
(8種類の属性の中からランダムに抽選されます)。
なるほど。契約自体はお手頃価格でグレードアップがそこそこの値段と。おー、商売上手ですねー。……まぁ、両方するんですけど。
……え、みんなしないの。
まー、人それぞれだけどね。1000円で魔術が2つ使えるとか、お買い得感あるよ。まだこのゲームしたことないけど。
あ、ガチ勢とは呼ばないでください。その領域には到底及びません。今はまだゲームの為に仕事辞めないから。
まぁ、食費をガチャに費やしたりはするけどね。食べ物は食べたら無くなるけど、2次元は無くならない。
とある声優様の格言です。
ま、冗談はそこまでにして、カートへ投入、ポチっとな。
これで全部かなー。
「あのー、精算をお願いします」
「はい、では合計8500テロルになります。よろしいですか?」
もはやお馴染みとなった確認画面が……(略)(同意ボタン、ポチ)。
「ふふふ、秒速で押してやったぜ」
「では、ご購入頂いたアイテムはアイテムボックスへ収納しておきますね。チュートリアル時に装備することもできますのでご活用ください」
「はい、ありがとうございます」
別に女神さま、つまりAIにお礼を言わなくても良いのだろうけど、やっぱり普通に話してると人って感じがするのよね。
「それでは、精霊との契約に移りましょうか。そぉれ」
女神さまの穏やかな掛け声に合わせて、大きな画面とマネキンが消え、私を中心にドーム状の空間ができた。
「えっと、これは?」
「はい、それは干渉領域と呼ばれる、精霊と契約をする際にできる空間です。今からその空間内に結び目に折った契約札と呼ばれる精霊の宿った特殊な札をいっぱい降らせますので、1つ好きな契約札を選んで取って下さい。あ、色は関係ないですからね」
よくは分からないが、おみくじの様な感じですかね。
「では、行きますよー。……スタート」
女神さまの合図と共に、空からは色とりどりの結び目状に折られた紙がひらひらと落下してくる。
これはまた、幻想的な光景である。
だが、見とれている場合ではない。
「……これだっ」
巻きあがる紙の中から、淡い紫色の紙を選んだ。案外掴みにくくて、選ぶ余裕はなかったけれど。
「無事に選ばれましたね。では結び目を解いて中を見てみて下さい」
なんかドキドキしてきた。
言われた通りに、紙の結び目を丁寧に解いていく。
淡い紫色の紙には三日月のマークが描かれていた。
読んでいただき、ありがとうございます。